こんばんは。さすけです\(^o^)/
一条工務店は大半の住設を自社で製造しています。そして、ソーラーパネルまでが自社生産となっています。
どこかのOEM品を使っていると思いきや、製造システムごと購入するターンキーシステムという方法で生産システムを丸ごと購入し、パネル自体を自社生産しているというのです。。。
実際の生産は一条工務店の関係会社である日本産業が行っており、その実態はフィリピンにあるHRD、すなわち一条工務店のフィリピン工場が担っています。
国内の大手メーカーであるシャープやパナソニックが製造したソーラーパネルに比べると信頼性という観点からは疑問が残るのは事実です。また、これまでの様々な研究等からソーラーパネルはメーカーによって劣化の程度に大きな違いがあることが知られています。
そこで、我が家の3年分(26304時間)の発電データを用いて一条工務店製のソーラーパネルの品質について検討をしてみることにしました\(^o^)/
我が家のソーラーパネル搭載状況
ソーラーパネルの最適設置条件と我が家のずれ
ソーラーパネルは太陽が出ている南向きに設置しするのが原則です。
また、最適な設置確度はお住まいの地域の緯度と等しくなります。東京、愛知、大阪あたりであれば約35度、北海道なら約43度となります。
ただ、そこまで微妙な角度を調整することはなく、一条工務店であれば1.5寸勾配か3.5寸勾配かが選択できる程度です。1.5寸勾配は角度に換算すると8.5度、3.5寸勾配だと約20度となります。
屋根の形状を30度にするとかなり切り立った屋根になってしまうので、このあたりが現実的と思います。
我が家のソーラーパネルは、真南から東に6.7度ずれて設置されており、屋根勾配は1.5寸勾配となっています。
我が家では150Wのパネルが66枚設置されて9.9kWのパネルが設置されています。
ソーラーパネルの設置方位・角度と発電電力量の関係
多くの方が気になるのは、家の方位や設置勾配が発電量に与える影響だろうと思います。
これについては、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)によるシミュレーションが最も信頼できるかと思います。
下記の例は東京都を前提としたパネル設置方位・角度と発電電力量の関係を示しています。
角度が30度で100%となり、もっとも発電電力量が大きくなっています。屋根勾配が1.5寸勾配に相当する角度10°では、真南の場合で95%、南東・南西に向いても93%の発電量が得られることがわかります。
全量買取を使って10kWのパネルを設置した場合、年間の発電電力量は約1万kWhとなりますから、2016年時点の売電単価1kWh あたり29.16円/kWhで計算すると年間約30万円の売電収益が期待できます。
よって、発電電力量がが1%変化すると年間収益が3000円程度変化するというイメージになります。
我が家の場合は、ほぼ真南で角度は10度に近いので、年間の売電収益で1.5万円程度の損失ということになります。
これは人によって感じ方が違うと思いますが、家は住むのが主でソーラーパネルの設置は副産物に過ぎないですから、南東から南西の範囲で南向きにパネルを設置し、角度は家の見た目と相談しながら決めれば十分な収益は見込めると思います。まずは家の形状や見た目をメインに考えても良いのかな?と思います。
一条工務店性ソーラーパネルの性能は?
発電電力量の推移
まずは、2013年4月1日~2016年3月31日までの3年分、26304時間の発電電力データを単純にプロットしてみたのが下記のグラフになります。
山と谷が繰り返されているのがはっきりと見てとれいます。毎年10月ごろから翌年3月はじめまでは大きく谷になり、逆に3月中旬以降から10月はじめまでは山となることを繰り返していることがはっきりと見て取れます。
この図から分かったことして、9.9kWのパネルを搭載した我が家の1時間あたり最大発電電力量は1時間あたり9.0kWhであったと言うことです。計測期間1096日の内、8.5kWを超えて発電した時間があったのは16日だけでした。
ソーラーパネルの設置量と同程度かそれ以上のパワーコンディショナーを設置されることが多いかと思いますが、実際にはソーラーパネル設置量×0.9、すなわちパネル搭載量よりも1割程度少ないパワコン設置容量でも大きな問題はないと言えそうです。
つづいて、1日の中での発電電力量の推移を確認してみます。月々の時間別発電電力量を平均した図が下のグラフです。
横軸が時間、縦軸が1ヶ月の1時間あたり平均発電電力量になっています。この図から我が家では11時頃に発電のピークを迎えていることがわかります。我が家の立地が東に6度ほど傾いて建てられていることから、ほぼ理論通りの結果となっていることがわかります。
以上が我が家の発電データのおおまかな傾向となっています。ただ、これだけでは性能の劣化については議論することができません。。
一条工務店ソーラーパネルの性能劣化の程度は?
全天日射量の利用
これまでの議論では、3年間の全てのデータを用いてデータを分析してきたため、晴れの日もあれば雨の日もあり、単純な比較はできません。
そこで、気象庁が公開している全天日射量というデータを使って検討をすることにします。簡単にダウンロードできて便利です。
全天日射量というのは、厳密には色々とありますが、とりあえず非常にざっくり言ってしまえば太陽光の強さを表す値です。全天日射量が大きければ天気も良くて発電電力量も高くなります。
実際に全天日射量のグラフを見てみると、
このようになり、太陽光発電電力量のグラフとほとんど同じ傾向を示すことが分かります。
性能劣化の検証
ここからの計算はやや面倒な計算をしているので詳細は割愛させていただきます。。。。
大まかな手順としては10時~11時までの時間に晴れていた日を特定し、1時間毎の「発電電力量÷全天日射量」を計算し、これを月々で平均を取り、発電電力量がピークとなる11時のみのデータを用いて分析を行いました。
最後に統計的な検定作業を経て、統計的に有意な結果であることを確認しています。
その結果、パネル設置から3年半の間で発電効率は2.8%劣化していることが確認できました\(^o^)/
パネルの発電能力の劣化の推移は下のグラフのようになります。
この劣化の2年目の劣化は年率0.4%程度でしたが、3年目に性能の劣化が進み2.8%程度の劣化となりました。年率換算で0.8%の劣化に相当します。
え!劣化しているの!!~今のところ想定の範囲内です。
そこで気になるのが、年率0.8%の劣化が大きいのか小さいのか、ということになります。
まず、一条工務店のシミュレーションを確認してみると、一条工務店の太陽光発電のシミュレーションはNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の研究結果に基づいたシミュレーションとなっており、
「発電量が毎年1%低下すると想定しています」と記載があります。
今回の発電量の劣化は年率0.82%でしたから、想定の範囲内と言うことが言えそうです
以前記事に書かせていただいた気密の劣化のようにそもそも想定されていない劣化は問題ですが、想定された劣化であり、それが想定の範囲内に収まっている限りは大きな問題はないように思っています^^
[kanren postid=”5430″]ソーラーパネルの発電量は劣化することは仕方ないものですから、ある程度の厳密性を持ってその劣化の程度を確認し、その劣化の程度がシミュレーションの想定と大きく乖離していないことが確認できたことは意味があると思っています^^
ただ、今のところ闇雲に不安になる必要はないかと思います^^
年率0.8%の劣化は大きいの?小さいの?
シミュレーションの想定通りとは言え、年率0.8%という性能劣化が大きいのか小さいのかは気になります。
我が家で使っている薄膜多結晶シリコン型のソーラーパネルの性能劣化の程度はNEDO等が検証を行っていますが、いずれの結果でも概ね年率1%弱の性能劣化が確認されており、劣化の程度は大きくもないけど小さくもない、言い換えると「普通」という性能劣化の程度と言えそうです。
個人的に気になった点:評価の問題かも?
個人的に気になったのは、2年目までは性能劣化が年率0.4%で推移してきていたのが、3年目に大きな性能の低下が見られたという点です。
2年目から3年目までの1年間に限れば年率の性能低下は約2.5%になります。これはシミュレーションの想定を大きく超えた劣化となっています。これは少し大きすぎる劣化のように思い、さらに検討をしてみました。
これは一つの仮説ですが、今回の劣化の要因はパネル自体の劣化と言うよりも気象条件の影響の可能性を否定できません。
今回の評価は気象条件のうち全天日射量のみを評価の対象としており、気温は評価の対象とはしていません。しかし。2013年度の1年間の平均気温は14.46℃、2014年度は14.47℃であったのが、2015年度は15.04℃となっており年間の平均気温が0.6℃も上昇していました。0.6℃というと非常にわずかな温度変化のように見えるかも知れませんが、去年に比べて今年は暑かったと感じる程度の平均気温の変化です。先日の地球温暖化対策のためのパリ協定はニュースでご存じかと思いますが、世界全体で平均気温の変化を2050年までに産業革命から+1.5℃の範囲に抑える努力目標を掲げたことが大きなニュースになったことは覚えている方もいらっしゃるかと思います。
一地域の気温変化と世界の平均気温の変化を同列に扱うことはできませんが、世界の平均気温を+1.5℃に抑えるためには世界の経済システムやエネルギー構造を根底から変えて行かなければ達成できない高い目標と考えられていることからも分かるとおり、平均気温というのはそれほど大きく変化するものではないのです。。。
そして、一般にソーラーパネルは気温が上昇すると効率が低下するとされています。今回の結果は性能の劣化だけではなく、気温の変化の影響も含まれていると考えるのが妥当と思われます。
これについては今後一条工務店のソーラーパネルと気温の関係を分析することで分けて考えることができるようにしたいと思っています^^
今回の結果は、性能劣化の「最大値」と考えるのが妥当と思います。
また、今回の性能劣化はあくまで我が家のソーラーパネルについてのみの結果であり、ここから一条工務店全体のソーラーパネルを議論するのは無理があります。ただ、我が家をケースとした一つの例ではありますが、ソーラーパネルの劣化の程度が大きくもなく、しかし、小さくも無さそうだということは一般化できるように思います^^
また、ソーラーパネルは劣化しないという説明をしている営業さんがいるという話も聞いていますが、これは明らかな間違いです!ソーラーパネルの発電量は必ず劣化します。
終わりに:なぜソーラーパネルは劣化するの?
最後に、なぜソーラーパネルは劣化するのか?というのを少し書いておきます。
家庭用ソーラーパネルの劣化の要因は主に2つです。
1つは汚れ、もう一つは電極の劣化です。詳しい人だとPID(Potential Induced Degradation)は?と思われる方もいらっしゃるかも知れませんがm、PIDは1000Vの電圧を掛けられるメガソーラー特有の問題で家庭用ではまず関係ありません。
汚れは雨によってある程度は流されるとは言え、ホコリなどによってどうしても経年で蓄積してしまいます。しかし、おそらくはパネルの劣化の主な要因は電極の劣化だろうと思います。
ソーラーパネルはパネルの内部で電気を流すための電極が取り付けられています。パネル自体は水が入らないように密閉されていますが、過酷な条件で設置されるためどうしても内部に水蒸気が入り込んでしまいます。
ただ、多少の水蒸気が入りこんでもそれ自体が電極を劣化させることはほとんどありません。また、紫外線が強い環境で使われますが、紫外線があたっただけでもパネルはほとんど劣化しないとされています。
問題は水分が入り込まないようソーラーパネルを封入する際に使用されている封止材と呼ばれるパッケージ材料が、エチレンに酢酸ビニルを結合させた材料となっている点です。内部にわずかに入り込んでしまった水蒸気と外部から照射される紫外線によってこの酢酸ビニルと加水分解反応し、酢酸、すなわちお酢が生成されてしまいます。この生成された酢酸が基板上の金属を腐食させてしまうという説が有力となっています。そして、この腐食をいかに防いでいるかでメーカーごとのパネルの劣化に違いが出てきているのだろうと思います。
理屈はともあれ、今回我が家の発電電力データの分析から、気温変化の影響が大きい可能性はあるものの一条工務店性のソーラーパネルは年率0.4~0.8%程度の性能劣化をしている可能性が確認できました。ただし、これは想定された範囲内の性能劣化であり、当初一条工務店から示された売電シミュレーションには大きな影響は与えないであろうことも確認できました!今後も継続的に発電能力の劣化を検証していきたいと思っています\(^o^)/