こんばんは。さすけです。
本日の内容は、これから家を建てる方には絶対に知っておいて欲しいことです。
内容としては、ヒラタキクイムシという住宅を食害する「害虫」のお話しですので、嫌いな方には大変申し訳ありません。ショッキングな画像、不快な昆虫の拡大写真もあります。
一条工務店の家に住んでいる方のお宅でもこのヒラタキクイムシの被害が出ています。
ヒラタキクイムシ対策として一条工務店の対応が他の大手ハウスメーカーに比べて遅れていたということは否めません。正しくは、一条工務店以外のハウスメーカーでは、早期に環境問題への対応として合板に針葉樹合板を多く採用していたことが結果としてヒラタキクイムシの被害を防いました。さらに高断熱気密等によって結果的に一条工務店がこのヒラタキクイムシについて悪目立ちしてしまった言えます。
しかし、この記事は一条工務店を批判することを目的としたものではありません。ヒラタキクイムシという木材を食害する害虫の存在を知ってもらい、万が一被害に遭った場合に適切な対応を取れるように情報提供することが目的です。
食事中は読まない方がよいかと思います。。。
ただ、このヒラタキクイムシのことを知らなかったがために、何年もの間不愉快な昆虫と共同生活を余儀なくされたり、裁判をしたりするよりは、今、画像でちょっとだけ気持ち方が遥かにマシと思います。
- 1 はいじめに:一条工務店の家でも出ているヒラタキクイムシ被害
- 2 ヒラタキクイムシのことを書くにあたって最初にご理解いただきたいこと
- 3 内容の要約
- 4 シロアリだけではないヒラタキクイムシの食害
- 5 なぜ今ヒラタキクイムシの被害が拡大しているのか?
- 6 アフリカヒラタキクイムシの被害発生とその深刻化
- 7 ヒラタキクイムシの被害が発生したときのハウスメーカー/工務店の対応~訴訟事例~
- 8 大手ハウスメーカーの対応はどうなっているの?
- 9 ヒラタキクイムシの判別方法
- 10 ヒラタキクイムシ発生の責任は誰にあるか?
- 11 ヒラタキクイムシ発生要因の特定
- 12 アフリカヒラタキクイムシの種類の簡易な判別(同定)方法
- 13 ヒラタキクイムシに食害されていることがわかったらどう対応すべきか?
- 14 ヒラタキクイムシに対する薬剤駆除の基礎知識
- 15 ヒラタキクイムシ防除・駆除の為の殺虫剤選び
- 16 一条工務店のヒラタキクイムシ対策と対応
- 17 最終手段~訴訟、そして裁判~
- 18 ヒラタキクイムシが発生したら~最後の対応:そして最初にすべきこと~
- 19 ヒラタキクイムシに関する参考資料等
はいじめに:一条工務店の家でも出ているヒラタキクイムシ被害
木材を食害する害虫としてはシロアリが広く知られており、ハウスメーカーもシロアリに対してはかなり厳重な対応をしています。
近年このヒラタキクイムシの被害に遭われるお宅が急激に増加しています。そして、このヒラタキクイムシに対してはシロアリへの防蟻対策では十分な効果を得ることができず、一条工務店や他のハウスメーカーの住宅のように十分なシロアリ対策がしてある家であっても被害を発生させてしまうのです。
さらに悪いことに日本に以前からいたヒラタキクイムシに加えて、外来種であるアフリカヒラタキクイムシという従来よりも深刻な被害をもたらすヒラタキクイムシによる被害が増えています。
一例を挙げると、一条工務店で四国に家を建てられた「しろのすけさん」が被害に遭われています。
ヒラタキクイムシが住宅の中に侵入し、繁殖してしまうと酷い場合は下の写真のように木材がボロボロになってしまうほどに住宅が浸食されます。
上記の写真はヒラタキクイムシに食害された木材の裏面ですが、表面はどうなっているかというのをご覧下さい。
下の写真は実際に一条工務店のi-smartでヒラタキクイムシが発生した事例の写真ですがパントリーの内部の写真ですが、パントリーの奥に無数の小さな穴が空いていることがわかるかと思います。これは内部に潜んでいたヒラタキクイムシの幼虫が成虫に羽化する際に開けた穴です。ここから多数の小さな虫が這い出てくるのは想像する以上に気持ちの悪いものです。
ブログも書かれているしろのすけさんは、優しい方のため一条工務店の住宅木材に最初から住んでいたと強く推察される状態にも関わらず、住宅を建築した一条工務店を批難することなく、複数回の床の張りかえなどの対応を受けています。
しかし、私が把握している範囲でも、残念ながら裁判になってしまった方や現時点においても問題に苦しまれている方がいらっしゃいることも事実です。
ヒラタキクイムシの被害に遭った場合は、できるかぎり早い段階で適切な対応を採れるかが、その後の被害を防ぐための大きな鍵になります。
そこで今回は、このヒラタキクイムシとは一体なんなのか?そして、具体的に住宅に対してどのような被害を及ぼすのか、万が一発生した場合はどのように対応をすれば良いのか?といったことをヒラタキクイムシの生態も含めて詳細に書かせていただきます。
ここで、間違わないでいただきたいことは、今回の事例、そして私が把握できる範囲は一条工務店の住宅に偏ってしまいます。そのため、今回の記事をご覧になって「一条工務店で家はフィリピンで作っているから変な害虫に悩まされるのではないか?」と不安に感じられる方も出るのではないかと思っています。
これは誤った認識です。
高断熱高気密、広葉樹合板の使用といった仕様、そして建築棟数の多さから一条工務店でのヒラタキクイムシ被害が目立つことは事実です。
しかし、ヒラタキクイムシの問題は一条工務店だけの問題ではありません。ヒラタキクイムシの問題は、一条工務店の住宅に限らず発生得る問題です。
現実的には一条工務店のヒラタキクイムシ対応は他の大手ハウスメーカーと比べると遅れていたというのも事実です。具体的には、他の大手ハウスメーカーの多くが構造用合板としてヒラタキクイムシの被害を受けることがあまりない針葉樹合板を採用する中で、一条工務店は昨年までヒラタキクイムシの被害を受けやすい広葉樹合板を使用していました。
ただ、針葉樹合板を採用していても住宅の中には多くの広葉樹合板が使用されており、ヒラタキクイムシの被害を完全に防げるわけではありません。
ヒラタキクイムシのことは、これから家を建てる方であれば絶対に知っておくべき内容と思います。
ヒラタキクイムシのことを書くにあたって最初にご理解いただきたいこと
この記事は約3年間寝かせていた記事です
今回ヒラタキクイムシの記事をアップするかどうかはかなり悩みました。
私が一条工務店で家を建てた方のお宅にヒラタキクイムシの被害が発生していることを知ったのは3年近く前、2015年の後半でした。
多くの方がご存じの「ネズミ・コウモリ」の話よりももっと前にヒラタキクイムシの被害が発生していることを認知していましたが、これまで非公開にしてきました。今回の記事を書くにあたっては、実際に一条工務店の家に住まわれている方のお宅で被害が発生している写真や、さらには実際にそのお宅で発生しているヒラタキクイムシを送ってもらって自分自身で顕微鏡を使って観察し、さらには専門家の方に確認もいただき、ヒラタキクイムシについて調べてきました。
そして、複数の方のお宅で発生しているヒラタキクイムシは日本の在来種ではなく、アフリカヒラタキクイムシという極めて達の悪い外来種である事も確認しました。昨年話題になったヒアリのように人間に直接危害を加える害虫ではありませんが、その見た目や生態は、生活者に極めて不快な思いをさせるものです。
記事を公開してこなかった理由
外来種のアフリカヒラタキクイムシの被害が拡大していることを認識した状態でも、この記事の公開に踏み切ることはできませんでした。
個人的な価値観から、解決策の示せない情報を出すべきではないのではないか?という考えがありました。
一度アフリカヒラタキクイムシが発生してしまうと有効な駆除方法がないのです。駆除方法がない、というと言い過ぎですが、日本の在来種のヒラタキクイムシについても極めてやっかいではありますが、その生態から大規模な繁殖期間は数年程度に留まります。しかし、アフリカヒラタキクイムシになると駆除が極めて困難であると同時に、被害の期間も10年以上と在来種に比べて飛躍的に長期間の被害を発生させます。
適切な対応を示せない状態で、被害の大きさだけを記事にすることで結果的に不安ばかりを煽ってしまうのではないかと懸念したことが公開に踏み切れなかった第一の理由です。
しかし、知らなければ何も対策できない
そのようなことを考えて記事のアップを躊躇していたら3年近くが経過してしまいました。
しかし、昨年、外来種のヒアリが社会問題化するのを見て「知らなければ何もできない」と思い直すようになりました。
一度繁殖してしまうと駆除が極めて困難なヒラタキクイムシ・アフリカヒラタキクイムシも唯一有効な駆除方法があります。それは、繁殖してしまう前の早期に、発見し駆除をすることです。
まずは、ヒラタキクイムシという木材を食害する害虫の存在を知ってもらい、適切な対応を行ってもらうことを促すことを目的としてこの記事を公開させていただくことにしました。
どうしても昆虫の写真が苦手という方へ【これ以降ヒラタキクイムシの成虫・幼虫等の写真があります】
ここから先では昆虫の写真、さらにはその幼虫の写真など、相当に気持ち悪いと感じられるであろう写真を多く引用します。どうしても、昆虫類を見るのが辛いという方は、このページを営業さんに読んでもらってその内容を口頭でも良いので確認してください。
ブログの内容を営業さんに確認してもらうなんて、なんだかちょっと気が引けるという方もいらっしゃると思います。
今回の内容を書くにあたっては、私は素人ではありますがそれなりに勉強しました。ヒラタキクイムシの専門家に読んでいただいても恥ずかしくない内容に仕上がっていると思っています。また、一条工務店に対しては正式な形で被害発生について報告済です。
何よりも、この記事は顧客の側が知っておくと同時に、顧客からのヒラタキクイムシ発生の第一報を受けることになるであろう、一条工務店の営業さん達が知っておくべき内容を網羅しています。
ですから、営業さんにとって、この記事を読むことが時間の無駄になることはありません。
知らないで後悔するよりも、理解した上で迅速に対応することで被害を最小限に留めることができます。
内容の要約
一条工務店をはじめ多くのハウスメーカーの高断熱高気密化進んできました。
高断熱高気密化によって、生活の快適性は大きく向上しました。しかし、快適になったのは人間だけでなくいわゆる害虫にとっての快適性も向上してしまいました。
住宅の建築木材を食害して、建築物を崩壊させる害虫としてはシロアリが広く知られています。しかし、同じように建築木材や家具に使われた木材を食害し、時にその木材をぼろぼろにしてしまう害虫であるヒラタキクイムシという体長2-8mmの小型の甲虫については一般にはほとんど知られていません。
ヒラタキクイムシとは下の写真のような昆虫です。
(出典:山梨県衛生研究所資料より)
下の写真は私自身が被害に遭われた方からヒラタキクイムシの実物を送っていただき撮影した写真です。
(写真:さすけ撮影)
体調数ミリの非常に小さな甲虫です。毒などはないので素手で触っても全く問題ありません。
複数の一条工務店の住宅でもこのヒラタキクイムシの被害を受けられている方がいらっしゃることを確認しています。しかも、従来ヒラタキクイムシでは確認されていなかった時期に羽化が確認されています。これは、一条工務店の全館床暖房による影響と思われます。結果としてヒラタキクイムシの繁殖スピードも速まり、被害を拡大させる要因になっています。
実際に被害に遭われたお宅ではこのヒラタキクイムシが大量に発生し、例えばダウンライトの照明の中に数日で下の写真のように死骸が貯まってしまう状況にありました。
(ブログ読者の方からの提供)
ヒラタキクイムシの幼虫はシロアリなどと同様に、住宅の木材を食害します。
下の写真はヒラタキクイムシの幼虫がパントリー内の合板に住んでしまい、そこから成虫になる際に脱出する際に空いてしまった多数の穴です。
(ブログ読者の方からの提供)
上記の写真では○で囲んだ部分に多数の小さな穴が空き、写真の下のパントリーのカゴ部分に木くずが貯まっていることが確認できます。
(ヒラタキクイムシの幼虫が成虫になって外に出てくる際に開けられた穴:しろのすけさんブログより)
しろのすけさんのお宅では、床からヒラタキクイムシが発生しましたが、その際の穴や木屑がはっきりと確認できます。
ヒラタキクイムシの食害の程度はシロアリなどに比べると遅く、シロアリのように住宅そのものを倒壊させることはありません。
しかし、ヒラタキクイムシは一度室内に生息してしまうと、その駆除が非常に困難です。現時点では通常の住宅で利用可能な完全な駆除方法は確立していません。
ただ、ヒラタキクイムシの存在を知って、そして、万が一自宅でヒラタキクイムシを発見した場合は、迅速な対応によって、被害を最小化することができる可能性があります。
また、ヒラタキクイムシは外から飛んでくることはまずない害虫です。その多くが、建築材や新築時に購入した家具類に付着したヒラタキクイムシの卵や幼虫によって室内に侵入します。
さらに悪いことに、外来種であるアフリカヒラタキクイムシの被害が急速に拡大しています。これまで日本に生息していたヒラタキクイムシ類は主に新築の家を好み、築後2年ほどで被害のピークが終わり、徐々にその被害が減少していくとされていました。2年我慢すれば被害は放っておいてもいなくなったのです。
しかし、現在被害が拡大しているアフリカヒラタキクイムシは築後10年以上にわたって継続的に木材を食害することが確認されており、その被害は甚大なものとなります。何よりも、室内で害虫が大発生するわけですから、とても気持ちが悪いです。
この記事を書く目的は、そういう害虫が存在すると言うことをこれから家を建てる方に広く知ってもらうことを目的としています。
ヒラタキクイムシの生態や歴史的背景、駆除方法、一条工務店におけるヒラタキクイムシへの対策と万が一被害にあった場合の対応についても書かせていただきました。
長い文章で、しかも気持ち悪い写真が多くご不快な方もいらっしゃると思いますが、是非ご一読をいただけますようお願いします。
シロアリだけではないヒラタキクイムシの食害
ヒラタキクイムシとはどのような昆虫か?シロアリとの違い
ヒラタキクイムシというのは、カブトムシやクワガタと同じ甲虫の仲間ですが、体調約2-8mmとかなり小型の甲虫です。見た目はカミキリムシなどに似ていますが、私達が知るカミキリムシに比べるとずっと小さいです。色は概ね茶色または黒に近い濃茶です。
(出典:山梨県衛生研究所資料より)
(写真:さすけ撮影)
ヒラタキクイムシはカミキリムシなどと同様に大顎を持っています。ちょうど小クワガタの雌と同じような形状です。また、ヒラタキクイムシはその触覚の先端が丸まっているものが多いのも特徴の一つです。
このヒラタキクイムシは、シロアリと同様に木材を食害する昆虫です。
シロアリと異なるのは、食害するのが原則として広葉樹に限られるという点、そして、基本的に新築を好むという点です。また、このヒラタキクイムシは「乾燥した木材」を好んで食害する、という特徴を持っています。
広葉樹と言われてもピントこないと思いますが、スギやヒノキ、パインなどが針葉樹です。一方で、合板(いわゆるベニヤ板)によく使われる、国産材であればカバ、セン、ナラ、ブナ、外国からの輸入材に多く見られるラワン類・パプアニューギニア材・アフリカ材・ポプラ等は全て広葉樹です(日本合板連合,合板の種類より)。
古来から日本の建築用構造材には針葉樹が使われています。これは、スギやヒノキと言った針葉樹は広葉樹に比べて軽く、まっすぐに成長するため梁や柱などに使用する上で非常に便利だったからです。一方で、ツーバイフォー住宅であるi-smartやi-cubeの構造壁などには広葉樹合板が使用されています。軸組工法で建てた家であっても壁や内装材として合板を使っていない家はまずないと思います。
ヒラタキクイムシと同様に住宅の木材を食害するシロアリは、基本的に湿度が高い環境を好み(外来種であるアメリカカンザイシロアリは乾燥材を好む)、一部の木材を除いて針葉樹、広葉樹に関係なく食害します。シロアリは住宅の構造材である柱や梁に使われているスギやヒノキも食害するため、シロアリの食害にあうと家そのものが崩れ落ちるような状態になってしまうことがあります。住宅そのものを崩壊させるケースもあることから、戦後シロアリ対策は急速に進んできました。
一条工務店におけるシロアリ対策についてはこちらに詳しくまとめてあります。
[kanren postid=”5308″]一方のヒラタキクイムシは、建物の柱や梁などの構造材であるスギやヒノキと言った針葉樹を食害することは通常ありません。そのため、通常の軸組工法による住宅であれば、仮にヒラタキクイムシに食害されても住宅そのものが倒壊するようなことはありません。
また、ヒラタキクイムシは極めて特殊な生態を持っており、シロアリとは違って外から家に飛来することはありません。ヒラタキクイムシの侵入経路は「人間が持ち込む」以外にないのです。その生態から、外から飛来することもあるシロアリに比べるとヒラタキクイムシの被害件数はずっと少ないものとなっています。
そして、日本在来種(実際には江戸時代頃に来た外来種)のヒラタキクイムシはシロアリのように何十年も家を食害し続けることはなく、新築時のみ大量発生してその後は数年でいなくなります。このような背景から住宅分野におけるヒラタキクイムシの対策は進んでいません。
ヒラタキクイムシはいったいどこから侵入してくるのか?
外から飛来することがないヒラタキクイムシはいったいどこから侵入してくるのでしょうか?
ヒラタキクイムシの侵入経路は大きく2つ、家具に潜んでくるケースと、住宅の建材に潜んでくるケースがその多くを占めていると推察されます。この他の事例として海外でかった木製品の土産物などからの発生も確認されています。
ここ数十年で生活様式の変化、特に、新築時に多くする家具類の生産方法に大きな変化が起こっています。外資系の大手家具メーカーや国内に多数の店舗を展開する家具メーカーなどが海外で大量に家具を生産し、それを輸入し、安い値段で販売するようになりました。
家具類の中の害虫は駆除されていると思い込んでいる方も多いかと思いますが、実際にはそうではありません。
上記の写真は、探偵ナイトスクープ(2010年12月10日放送)で放映されていた内容ですが、ソファーの中から夜な夜なガリガリという気味が悪い音がすることから、調べてみたところソファーに使用されている木材の中から出てきたカミキリムシの幼虫です。
このように、新築と同時に家具を購入し、そこに潜んでいた害虫が侵入してしまうことがあります。
新築時に家具を購入する方も多いと思います。そういった家具類にヒラタキクイムシが潜んでいた場合、現在の防疫体制では侵入を防ぐことができないのです。
ちなみにカミキリムシは成虫になって飛び立っていくので家の中で繁殖することはありません。
このように建材だけではなく、家具などに巣くった状態で家屋内に侵入してくるケースも多くあることで、ヒラタキクイムシ被害の「責任の所在」が不明確になり、被害を深刻化させる傾向があります。
古くから住宅食害害虫として認知されていたヒラタキクイムシ
大半の方にとってはヒラタキクイムシなどはじめて聞く名前の昆虫と思います。しかし、住宅関連分野では以前から広く知られていました。1990年に公開された論文でも
『木材保存の分野では,木材腐朽菌を対象とする”木材防腐”,シロアリを対象とする”木材防蟻”の他,”ラワン材等の木材防虫”があり,これはヒラタキク・キクイムシ対策を意味し,ヒラタキクイムシ科Lyctidaeはかくして本邦では家屋内の重要木材食害虫としてシロアリ類と並び称される,経済的に極めて重要な害虫の一つとなっている。』(岩田,1990)
とあるように、シロアリと並ぶ極めて重要な木材に住む害虫として多数の研究が行われてきました。
先にも述べたようにツーバイフォー工法の耐力壁に使用される合板やその他内装材、さらには無垢のフローリングには多くの広葉樹が使用されています。(一条工務店は近年構造用合板を針葉樹に変更しましたが、建材には広葉樹が多く使われています。)
ヒラタキクイムシの国内での被害報告は比較的古くからあり、1970年代、ツーバイフォー住宅が日本に輸入されはじめてすぐにヒラタキクイムシはツーバーフォー住宅の食害害虫として認識されていました(森八郎,1979)。
ツーバイフォー住宅だけが問題なわけではなく、軸組工法の住宅であっても広葉樹合板を使っていない住宅はまずありません。例えば、広葉樹の無垢材はその風合いの良さから無垢のフローリングとしても広く使用されています。
また、家具にも多くの広葉樹合板が使用されています。広葉樹が使用されているのは合板でできた値段の比較的安い家具だけでもありません。高級家具類の多くにもやはり広葉樹が使用されています。
ヒラタキクイムシへの対策をしていない広葉樹を使用した木材は全て、ヒラタキクイムシの食害にあう可能性があるのです。
ヒラタキクイムシの食害とは具体的に何が起こるのか?
ヒラタキクイムシの食害といわれてもいまいちピンと来ないかと思います。
ヒラタキクイムシの雌(メス)の成虫は産卵を行う際にテイスティングマークという、かじり傷をつけることはありますが木材を食害することはありません。実際に木材を食べて木材に穴を開ける(食害する)のは、ヒラタキクイムシの幼虫です。
ヒラタキクイムシの雌は下記の写真のようにして、木材の導管(木材が水分を通す管)や隙間部分に、長く延びた産卵管を差し込みそこに長さ約1mmの卵を産み付けます(森,1962)。
(出典:森, 1962)
通常、ヒラタキクイムシの雌は1カ所に1個から4個の卵を産み付け、10日ほどの成虫の期間に数十個の卵を産卵するとされています(森, 1976)。
産卵された卵はしばらくすると、孵化し体長1mm程度の幼虫となります。幼虫は木材に穴をあけるようにして食害し、最終的には体長5mm程度まで成長します。
(出典:北海道林産試だより、から)
ヒラタキクイムシの幼虫 (出典:森,1962)
その後、木材中でサナギとなり、成虫へと羽化する際にはじめて,木材表面に穴を開けて成虫が出現することになります。
羽化するまでの全ての期間において、木材の内部に潜んでいるため、成虫が出現するまでヒラタキクイムシの食害に気づくことはほぼできません。
ヒラタキクイムシが幼虫から成虫になる際、木材に2mm程度の小さな穴を開けて羽化します。
(出典:山梨県衛生研究所資料より)
上記のように、直径約2mmの穴が多数空き、そこからヒラタキクイムシが羽化してきます。
羽化の際には、内部の木くずを排出するため、小さな穴とその下に木くずが山になります。この木屑の山があったらヒラタキクイムシがいる可能性が極めて高いです。
実際に、食害を受けたナラのフローリングの裏面の写真は以下の通りです。
出典:(布村,1968)
表面的にはほとんど異常がないのに、目に見えない裏側はヒラタキクイムシの幼虫によってぼろぼろになるまで食害されてしまうこともあります。
なぜ今ヒラタキクイムシの被害が拡大しているのか?
過去のヒラタキクイムシの大発生
ヒラタキクイムシは戦前は「タケシンクイムシ」や「ラワン虫」と呼ばれていました。ヒラタキクイムシの幼虫は乾燥した木材を好んで食べ、戦前の日本家屋で建築材として多く利用されていた竹材の食害害虫として広く知られていました。
また、戦前、輸入家具などに多く使用されていた南洋系広葉樹であるラワン材の食害害虫として「ラワン虫」という名前が広く知られるようになっていきました。
第二次世界大戦中は、ラワン材の輸入量が減ったことからその被害は減少したものの1960年代になると高度経済成長期の生活様式の変化、特に洋室を好む生活様式に変化するようになり、フローリングが広く普及しはじめました。
無処理の広葉樹フローリングを使ったことで、ヒラタキクイムシの問題が新聞等で報道されるに至り、社会に広く知られるようになりました。
1979年に公表された森八郎による「ヒラタキクイムシ, 最近の大発生と防除対策」の報告によると、東京都国分寺市けやき団地において、分譲住宅350戸のうち入居後1年半の間にナラのフローリングがヒラタキクイムシによって食害され、踏み抜かれるという問題が発覚したと報告されています。これ以外にも、立川市の住宅団地でも240戸中100戸で被害が発生するということが起こっていました。この他にも学校の講堂に設置された椅子や体育館のフローリングなど広くヒラタキクイムシの被害を受けていたことが報告されています(森, 1979b)。
ヒラタキクイムシ被害の減少と建築基準法改正による被害の再拡大
しかし、その後ヒラタキクイムシによる被害は徐々に減少していきます。
ヒラタキクイムシ被害減少の理由の一つとして、合板の接着剤に使用されていたホルムアルデヒドなどのVOCsの影響が指摘されています(馬場, 2011)。
ホルムアルデヒド放散量が大きい合板類はヒラタキクイムシの幼虫が成長するには不適切であるため、ホルムアルデヒドを多く含む接着剤が使用されている合板が普及したことで、ヒラタキクイムシの被害が減少したと考えられています。また、ヒラタキクイムシに対する殺虫効果の高いクロルピリホス(2008年中国冷凍餃子に含まれていたことで一般に広く知られるようになりました)をはじめとした有機塩素系殺虫剤による防虫対策によってもヒラタキクイムシの被害が抑えられていたと考えられています。
しかし、2003年7月の建築基準法改正によって、ホルムアルデヒド放散量の高い接着剤の使用が厳しく制限されるようになりました。同時に、殺虫剤であるクロルピリホスの使用も禁止されました。さらに先ほど書いた様な生活様式の変化、家具生産体制の変化がヒラタキクイムシの侵入を後押ししました。
これによって、木材中に潜んでいたヒラタキクイムシの幼虫が死滅することなく、成虫となり近年急速に被害を拡大してきたと考えられています。
乾燥木材使用の一般化
ヒラタキクイムシが食害するのは、含水率15%以下の広葉樹辺材部のみ(野平, 1980)とされています。
家を購入する際に、ハウスメーカーから「木が動く」というようなことが言われることがあります。これは、木材が乾燥していく過程で木材が収縮を行うためです。
乾燥の程度が低い木材の場合、乾燥の仮定で木材が反り返ってしまったり、割れたりと様々な問題を引き起こします。
そのため、最近のハウスメーカーの多くは使用する木材がしっかりと乾燥された木材、すなわち含水率の低い木材である事をアピールすることが一般的になっています。
例えば
- 一条工務店:あらかじめ含水率を20%以下まで十分に乾燥させた木材を使用
- 積水ハウス:建材として強度を安定させるには含水率を15%以下にすることが重要です。
- 住友林業:含水率を15%以下に低減し、収縮や変形、割れが起きにくい安定した品質を確保しています
- 三井ホーム:含水率が18%近くになると未乾燥材に比べ圧縮強度が約2倍になり、反りや変形の可能性が減少します
- スウェーデンハウスの構造材は、含水率がJAS(日本農林規格)の基準である19%を大きく下回る、概ね15%以下に保たれています
と述べられています。
また、農林水産規格JASにおいても建築用資材として用いる木材は「原則として、製材を用いる場合は製材のJASに適合する木材(JASに規定する含水率表示SD15又はSD20)又は国土交通大臣の指定を受けたもの(SD20以下)を用いる」とされていて、含水率20%以下の木材しか使用できないように規定されています。
ちょっと話が逸れますが。。。今回初めて気が付いたんですが、一条工務店の使用する木材の含水率って、他メーカーが15%まで乾燥させているのに比べるとかなり含水率が高いのですね。。。
一条工務店のWebサイトにはあたかも「20%という高い基準をクリア!」という雰囲気で書かれていますが、こういう部分も知っているのと知らないのでは大分違うものだな~と思えて来てしまいます。。。。まあ、こういうのは「コストの問題」なので、一概に低ければ良い、高ければダメ、という訳ではないのでしょうが、、、、どうなんでしょうね??
話を戻します。ヒラタキクイムシは低含水率の木材(乾燥木材)を好んで食害することが知られており、一方で最近の新築住宅ではその強度や精度を維持する観点から木材の含水率をできる限り低くする傾向が見られます。
その結果、ヒラタキクイムシが生息する為に最適な環境(含水率8-12%程度)を満たしやすい状態となっています。
ハウスメーカーがアピールする木材の乾燥が結果的に、ヒラタキクイムシの繁殖しやすい条件を満たしてしまっていると言えます。
住宅の高断熱化によるヒラタキクイムシライフサイクルの短縮~大発生の要因~
さらに2000年以降、住宅の省エネ性能の向上、そして住環境の快適化を目的として、住宅の高断熱高気密化が進められてきました。
1999年にはいわゆる「次世代省エネ基準」が施行され、その後2015年からはさらに高い省エネ基準が求められ、従来以上の高断熱高気密化が進められています。
結果として、本来温暖な環境を好む種が多いヒラタキクイムシ類が活発に活動できる期間を増やすこととになりました。
日本の環境ではヒラタキクイムシ類は本来1年に1世代しか交代しません。しかし、一条工務店の住宅のように全館暖房を導入した住宅においては1年を通じてヒラタキクイムシが活発に活動できる環境が維持されるため、結果的にその世代交代に要する期間が短縮され、最短3ヶ月に1世代の世代交代が行われ、本来であれば4世代進むためには4年を要していたのが、1年で4世代分の大発生が可能な環境となってしまいました。
実際、今回、一条工務店で全館床暖房を導入されたお宅では、ヒラタキクイムシが幼虫として越冬しているはずの12月、1月においても羽化をしていることを確認しています。夏にヒラタキクイムシを確認してから、次世代の発生まで4ヶ月という短期間で世代交代が行われたことが示唆されます。
今回は一条工務店の断熱性能の高さ故に、一条工務店の住宅で上記のようなライフサイクルの短縮が確認されましたが、2015年からは新省エネ法が施工されており、あらゆるハウスメーカーの住宅で同じことが起こりえると言えます。
この部分はしっかりと研究すれば論文の1本にもなりそうな話題です。
以上がヒラタキクイムシの被害が近年になって急に拡大してきた背景となります。
アフリカヒラタキクイムシの被害発生とその深刻化
繁殖力が強く、食害を深刻化させるアフリカヒラタキクイムシの被害拡大
悪い条件は重なります。
1982年当時、それまで日本国内では5種類のヒラタキクイムシ類の生息が確認されていました。
しかし、1982年、大阪府高槻市の民家においてそれまで日本国内では正式な生息記録がなかった「アフリカヒラタキクイムシ」の被害が報告されました(岩田, 1982)。
その後の研究では、1955年に正倉院で採取されたとされる昆虫類の中からもアフリカヒラタキクイムシが発見されており、1955年時点で既にアフリカヒラタキクイムシが国内に侵入していた可能性が指摘されています(岩田, 1989)。アフリカヒラタキクイムシは通常のヒラタキクイムシと姿形が酷似していることから、通常のヒラタキクイムシと思われそれまで確認されていなかっただけの可能性が指摘されています。
出典:(岩田, 1982)
このアフリカヒラタキクイムシは、通常のヒラタキクイムシと比べるとやや小型であるもののその形状は通常のヒラタキクイムシと酷似しており、専門家で無い限り目視によってはその違いを見分けることは極めて困難です。
アフリカヒラタキクイムシは通常のヒラタキクイムシに比べて繁殖力が強く、食害被害が発生した場合、通常のヒラタキクイムシよりも早く、そして深刻な被害を発生させるとされています。
しかし、アフリカヒラタキクイムシはその名前が示すとおり、南方系のヒラタキクイムシであり、通常のヒラタキクイムシよりもさらに温暖な地域を好みます。
そのため、日本の気候環境では大発生には至らず、それほど大きな問題は引き起こしてきませんでした。
しかし、建築基準法の改正による低ホルムアルデヒド建材の普及、そして住宅の高断熱高気密化が状況を大きく変化させました。
統計的に有効な大規模な調査事例はないものの、小規模な調査を引用すると、アフリカヒラタキクイムシの被害はその数と範囲を急激に拡大させています。
出典:(古川, 2009)
36件のサンプル調査において、その約7割(25件)がアフリカヒラタキクイムシの被害であったことが報告されています(古川, 2009)。そして、その被害範囲も沖縄、九州といった南部から関西、さらには宮城においてもアフリカヒラタキクイムシが採取されています。
住宅の高断熱化が進められ全館暖房の住宅であれば、アフリカヒラタキクイムシの被害は日本国内のどこでも起こりえると考えて良い様に思います。
そして、このアフリカヒラタキクイムシの被害はさらに深刻な問題を引き起こします。
アフリカヒラタキクイムシは築10年を経た住宅も食害する
これまで日本で観察されていた従来のヒラタキクイムシは、新築から数年の大発生を経て、その後は徐々に数が減るとされていました。
ヒラタキクイムシは、デンプン質の多い木材を好んで食害します。ヒラタキクイムシが広葉樹のみを食害し、針葉樹は食害しないのもデンプン質の量に関係があるとされています(森, 1976)。
広葉樹はその重量の3%以上がデンプン質でできています。一方、針葉樹のデンプン質はその重量の0.3%以下しかありません。ヒラタキクイムシの幼虫はデンプン量が3%以下の木材では成虫になることができないことや、そもそも雌のヒラタキクイムシが産卵場所を選択する際に、デンプン量が少ない木材には産卵を行わないため、広葉樹のみが被害にあうとされています{(伊藤,1977),(伊藤, 1983)}。
日本複合・防音工業会のサイトによると、ヒラタキクイムシ被害の80-85%が新築して2年以内の被害である旨が報告されています。
住宅に使用される建材中に含まれるデンプン質も時間経過と共に変質してしまい、木材中のデンプン質が減少することでヒラタキクイムシの幼虫が活性化する条件を欠いてしまうことが理由であるとされています。
しかし、アフリカヒラタキクイムシは通常のヒラタキクイムシよりも少ないデンプン量の木材であっても活性状態を保つことができ、低デンプン質の木材であっても羽化することができてしまいます。
そのため、アフリカヒラタキクイムシは築後10年を経た住宅でさえ被害を発生させていると報告されています(山梨県衛生環境研究所)。
駆除が困難なアフリカヒラタキクイムシ
ではその駆除はと言うと、現在、ヒラタキクイムシが繁殖してしまった一般住戸から完全にヒラタキクイムシを駆除する方法は研究開発途上にあります。すなわち完全な駆除を行う方法がないのです。
通常のヒラタキクイムシであれば、色々試行錯誤して数年を経過すると、いつの間にかヒラタキクイムシが居なくなっていると言うことで終わっていた事例が多かったかと思います。
しかし、アフリカヒラタキクイムシが室内で繁殖してしまうと、何もしなければ10年以上にわたって延々とアフリカヒラタキクイムシが発生し続ける事になってしまいます。
これは、不快であると同時に住宅へのダメージも深刻なものとなる可能性があります。ただし、アフリカヒラタキクイムシは在来種のヒラタキクイムシに比べて食害の程度は少ないとされており、構造的な問題がどの程度生じるかについては今後の研究を待つ必要があります。
ヒラタキクイムシの被害が発生したときのハウスメーカー/工務店の対応~訴訟事例~
ヒラタキクイムシの食害で代金4千万円を返還
日経ホームビルダー2008/05号に掲載されていた”ヒラタキクイムシの食害で代金4千万円を顧客に返還“によると、2007年6月、ある住宅会社が分譲した2階建て住宅では内装した時にラワン合板を使用していたそうです。
「閉めきった部屋で黒い虫が何匹も飛んでいる。床や壁にいくつものピンを刺したような穴があき、穴から木の粉が吹き出している」というクレームが入り、調査の結果、それがヒラタキクイムシであると判明しました。
住宅会社が害虫防除業者に相談した結果、「(前略)薬剤を注入することはできるが、食害が止まる保証はできない」と言われ、そのことをお客さんに伝えましたがが、当然と言えば当然、被害が続く可能性がある対策に猛反発をしました。
その結果、その住宅会社ではクレームから20日で分譲価格約4千万円を返金することになりました。
この住宅会社は、非常に良心的で、迅速に返金に応じています。
お客さんの側は「床や壁の中で虫が木を食べている音が聞こえる気がする」と言う程に追い込まれた状況にあったようですから、迅速な返金によって解決をするのは、かなり良心的な対応と思います。
日経ホームビルダーの記事では、この記事の参考文献でもいくつもの論文を引用させていただいているヒラタキクイムシの専門家である森林総合研究所の大和田和香子氏にもインタビューを行っており、
- ヒラタキクイムシは古くから食害を及ぼしており検疫上の「外来種」にはあたらないこと
- 人間が加工した木材から見つかるケースがほとんどであること
- 倉庫での保管時など流通過程で卵を産み付けられている可能性が高いこと
などが述べられている。
さらに、ヒラタキクイムシの防除対策としては、
- 一般住戸でヒラタキクイムシが発生した場合、幼虫や卵が残るの覚悟の上で羽化後の穴に薬剤を注入する方法か
- 被害を受けた部位とその周辺の広葉樹をまるごと交換する程度しか対処はない
と述べています。
建築前の対策としては、「ラワンなどを使うなら、接着剤に防虫成分を混ぜた「防虫合板」を使うのが一番だと思う。(中略)(防虫合板によって)産卵を防ぐことができる」とも述べており、有効な対策としては住宅や家具の生産段階における「防虫合板」の利用しかないとも述べています。
最高裁まで上告したけれど工務店が敗訴した事例、、、でも保証は・・・
先の事例のように大手のハウスメーカーや分譲会社であれば、その後の風評なども踏まえて早期に応じてくれる可能性もあります。しかし、資金力に乏しい中小の工務店などでは、既に建築済の段階で受け取った資金を使用してしまっており、返金に応じることが非常に困難となります。また、そもそも責任の所在が不明確な害虫の問題に対してハウスメーカーや工務店がどこまで責任を負うかは難しい問題です。
実際に最高裁まで争われた事例をご紹介します。
2011年2月1日付けのケンプラッツ資料「ヒラタキクイムシの食害で工務店が敗訴」によると、2008年9月に新築の住戸が工務店から建て主に引き渡されました。
このお宅では、建て主の希望で床材として無垢のナラ材を使用していました。
ところが、引き渡しを受けた後2008年11月の段階でヒラタキクイムシの食害がはじまり、1階と2階の床材が共に被害を受けました。
建て主の方は食害を「瑕疵」として、工務店に対して民法に基づく瑕疵担保責任を果たすことを求めて2009年8月に長崎地方裁判所に提訴しました。
裁判での工務店側の主張は
- ヒラタキクイムシが住宅内へ飛来したのは、住宅の裏山から引き渡し後に飛来した可能性が高い
- ナラの無垢材を採用するよう指示したのは建て主であり、建て主に食害の責任がある
という(無理がありすぎる)主張をしました。
一方の、建て主側の主張は
- 引き渡しを受けて間もなく食害が発止したのだから工務店に瑕疵担保責任がある
- ヒラタキクイムシの食害が生じている床材を採用するよう指示していない
- 床材の全面張りかえが必要だ
という主張を行いました。
2010年2月に判決が下り、結果は(当然)工務店側の敗訴です。
裁判の結果、約250万円の損害賠償を工務店に支払う命令が下りました。
その後工務店側は福岡高裁に上告し、同じ主張を繰り返したそうですが、2010年7月に再び工務店側敗訴の判決が下ります。
工務店側はさらに、最高裁判所に対して控訴審判決を不服として上告していましたが、2010年12月3日に最高裁が上告の不受理を決定し、判決が確定しました。
ここで注意が必要なのは、この裁判事例を持って「ヒラタキクイムシの食害が発生したら工務店やハウスメーカー側が責任を負う判決」とは言えないという点です。
この裁判において工務店側は弁護士をつけず訴訟に対応しています。そのため、明らかに主張が法律の常識とかけ離れたところにあり、ある意味負けるべくして負けているという特殊な事例と言えます。
例えば、過去の研究からも日本においては屋外でのヒラタキクイムシの発見事例はほとんどなく、ヒラタキクイムシが外部から飛来してくる可能性はほぼないと考えられます(森満範, 2008)。工務店側の主張である「外部からの飛来」は、あり得ない主張をと言えます。
さらに、「ナラの無垢材を採用するよう指図したのは建て主だから、ヒラタキクイムシの食害は建て主の責任」という理屈は、常識ではあり得ない理屈です。。。。それがまかり通るならば、施主側が何かを希望してそこに不備があっても全てが施主側の責任ということになってしまいます。。。。
このように、上記訴訟事例は工務店側が「はちゃめちゃな主張」をした結果として敗訴した事例に過ぎません。
ケンプラッツの記事にもありますが、本件について争うべきであった争点は
- ヒラタキクイムシの食害は住宅の瑕疵に該当するか?
- 殺虫剤による対策など床の張りかえ以外の対策はないか?
と言った点から争うべき問題であったと思われます。上記を争点にして、建築に詳しい弁護士が付いていれば、敗訴するにしても金額はかなり少なくなっていたように思います。
よって、この訴訟は「ヒラタキクイムシの食害を瑕疵と認めた判例」とするには余りにも特異に過ぎると思っています。
むしろこの裁判事例から学ぶべきことは、工務店側が完全敗訴したこの事例であってでさえ、ヒラタキクイムシによる食害への弁済額は250万円でしか無かったと言う点です。
万が一自分の家がヒラタキクイムシに食害されて裁判をするとなれば建築訴訟に詳しい弁護士を雇う必要があります。2年にわたる弁護費用は相当な額になるはずです。ちなみに裁判で勝訴すれば、訴訟費用を敗訴側に求めることができますが、ここで認められる訴訟費用には弁護士に支払う着手金や報酬は含まれません。よって、勝訴できても多大な弁護士費用は自己負担となります。
仮に床の張りかえに250万円がかかるとしたら、着手金や報酬等は完全に持ち出しになってしまいます。このような点からも、私自身は多くのケースでハウスメーカーへの裁判は推奨されないと思っています。
[kanren postid=”10644″]相手が大手の分譲住宅が会社や大手ハウスメーカーであればなおさらです。大手の企業であれば住宅訴訟を専門とした多数の顧問弁護士と契約しているはずです。そうなると勝訴することさえ極めて難しくなると思います。
特にヒラタキクイムシはシロアリと違い、住宅の構造上重要な部材への食害は限定的です。そのため、そもそも「瑕疵担保責任」で争った場合、敗訴も視野に入れて訴訟を起こす必要があります。そのような危ない、そして、仮に勝てても施主側には一切メリットのない訴訟はすべきではないと思います。
そうではなく、あらゆる手を使ってでもハウスメーカーや住宅販売会社と粘り強い交渉によって解決するほうが、良い結果を得られると思います。
少なくとも、ヒラタキクイムシの食害が発生した家で「4千万円の返金」という結果は裁判では逆立ちしても下されることがない判決です。
大手ハウスメーカーの対応はどうなっているの?
保証書にも記載のあるヒラタキクイムシ、一条工務店と積水ハウスを例として
以下では、一条工務店と積水ハウスに関して、その保証書においてヒラタキクイムシによる食害が発生した場合の記載について確認します。
これは、私の把握した限りという限定条件付きですが、大手のハウスメーカーにおいては保証規定を盾にしてヒラタキクイムシの食害に対する保証(対応)を渋った事例は認知していません。ただし、小さな工務店では、ヒラタキクイムシの対策として、殺虫剤の塗布のみを行い、部材の交換対応は有償であると明言している工務店も複数存在しています。
ヒラタキクイムシの食害が発生しないことは保証してもらえる?
どのハウスメーカーであろうと無関係に、営業さんに「ヒラタキクイムシの被害が発生したことはありますか?」と確認すれば、99%の営業さんは「そんな話は聞いたことがありません。」というような回答をするはずです。つづけて防蟻処理の説明などが行われて安心させようとするはずです。
しかし、これは「嘘」です。嘘というと言い過ぎかも知れませんが、知らないだけだったり十分に確認していないだけです。
試しに、「ヒラタキクイムシの被害が発生するのが不安だから、過去において貴社でヒラタキクイムシの食害発生件数がゼロであることを文書で提出してください。」とお願いしてみてください。
今度は、なぜか99%の営業さんが、それはできないと答えるはずです。
中小の工務店ではこの質問は無意味(建築棟数が少ないので被害が出ていない可能性があるため)ですが、大手のハウスメーカーであれば、ヒラタキクイムシ専用の対策が行われていない限り、確実にどこかで被害が発生していると考えるのが合理的です。よって、文書として将来万が一ヒラタキクイムシの食害が発生した時に、自社の責任を示す文書を提出すると言うことはほぼ不可能です。。。。嘘を承知で出してくることはあるかも知れませんが、それならそれで将来の万が一に供えて保管しておけば良いと思います。。。ただ、昨今の大企業はコンプライアンスが厳しく問われますので、明らかな嘘となる資料は出せないはずです。
ハウスメーカーの言い分と誤解
ハウスメーカーにヒラタキクイムシのことを確認すれば、営業さんも仕事ですから仕方ないのだと思いますが、必ず安心させようと色々なことを言ってきます。
先に、その言い分を潰しておきます。
- 防蟻処理がしてあるから大丈夫→住宅全体にピレスロイド、ネオニコチノイド等を使った防蟻がされていればその通りですが、2階部分や高さ1.5m以上の部分は防蟻されていないのが一般的なため、ヒラタキクイムシに食害されます。ヒラタキクイムシは「乾燥した木材」を好み、シロアリの食害範囲よりも広い範囲を食害します。よって、シロアリ対策がしてあるからヒラタキクイムシも大丈夫ということは全くありません。
- そんな虫はほとんど発生しない→学術研究の事例から、アフリカヒラタキクイムシの被害が拡大していることが知られています(古川, 2009)。また、各都道府県でも注意を喚起しています(例、京都府, 山梨県, 長野県他)。
- 万が一発生しても保証の範囲内→事前に保証書を確認してみてください。後ほど一条工務店、積水ハウスの保証書を例示します。
- 万が一発生しても責任を持って駆除する→確実に駆除する方法は確立していません。
この他に色々な説明があると思いますが、本当に信じて良い対策は、「建材の全てに防虫合板を使用しているため住宅建材にはヒラタキクイムシの発生はないのでご安心下さい」という回答のみです。
一条工務店におけるヒラタキクイムシの食害に対する保証
一条工務店保証書にも「ヒラタキクイムシによる食害」に関して明記されています。「ヒラタキクイムシのことなんて聞いたこともない」などという営業さんがいたら、自社の保証書も読んだことがない、と宣言しているようななものですから信用できないことが分かるかと思います。。。
(2012年時点の一条工務店保証書より抜粋)
一条工務店の保証規約においては「防虫処理を行った部分のシロアリやヒラタキクイムシ等による食害や損傷」を保証すると規定しています。
上記保証規約を要約すると
「防虫処理を行った部分のヒラタキクイムシによる食害は保証対象」
となります。
ここで、重要なのは「防虫処理を行った部分の」という文言です。読み替えると、
「防虫処理を行っていない部分のヒラタキクイムシの食害は保証対象外」
とななります。
新築後3ヶ月で、防蟻処理が行われていない2Fの壁からヒラタキクイムシが発生した場合。。。。残念ながら保証対象外という約束になっています。
後で示すように実際には、上記のようなケースでは、一条工務店の場合は対応を行っています。保証期間は10年と比較的長期です。
積水ハウスにおけるヒラタキクイムシによる食害への保証
積水ハウスの保証書にもヒラタキクイムシに関する保証規定が定めれています。
積水ハウスの保証規定では「保証の対象となる現象例」として「ヒラタキクイムシの発生による蝕害、損傷」が明示的に保証の対象となっています。
(消費者庁:セキスイハウス保証基準(一般住宅用)より)
一条工務店の場合は、「防虫処理を行った部分」のみが保証の対象でしたが、積水ハウスの場合は防虫処理の有無にかかわらず、全ての木質部についてヒラタキクイムシの食害は保証の対象となっています。
ここで、保証期間が2年間となっている点に不安を感じられる方もいらっしゃるかと思いますが、上で述べたとおり、従来のヒラタキクイムシのライフサイクルは最長でも2年である事が分かっています。
そのため、建材にヒラタキクイムシの卵が産み付けられていた場合、確実に2年以内に被害が発生します。そのため、建材に散乱されていた場合の第一世代のヒラタキクイムシ被害は2年以内に発生することから2年の保証期間が定められていると推察されます。
ただし、先に示した通り、アフリカヒラタキクイムシは10年を超えて食害を発生させます。第一世代を発見することができず、数世代を経て初めて被害を認知したときには2年を経過してしまっていることは十分に考えられます。
現状では、一条工務店、積水ハウスのいずれの保証も一長一短といったところのように思います。
ただし、両者とも「ヒラタキクイムシの被害は保証する」としている点では同じですので、被害が発生したらまずは相談をしてみることが重要です。担当の営業さんや監督があ~だこ~だと言ったら、保証書を示してください。
ヒラタキクイムシの判別方法
これってもしかしてヒラタキクイムシ?
室内に、体長1cm未満の小さな甲虫がたくさん居るのを発見したらヒラタキクイムシを疑ってください。
ヒラタキクイムシは国内で7種が確認されていますが、その種類の特定は専門家でないと難しいので、種類の特定までは必要ありません。
どの種のヒラタキクイムシでも室内の木材を食害し、住宅に深刻なダメージを与える害虫である事に違いはありません。
ヒラタキクイムシの大きさは、種類などによって2.0-8.0mm程度のサイズで、茶色または濃茶色です。
(ブログ読者の方に提供を受けたアフリカヒラタキクイムシ:さすけ撮影)
上記のように指先よりももっと小さい場合が一般的です。概ね4mm前後です。
以下にいくつかの拡大写真を掲載します。
(長野県林業総合センター資料より)
(出典:山梨県衛生研究所資料より)
(出典:大阪府衛生害虫検索システムより)
(出典:大阪府衛生害虫検索システムより)
上記のような小さな虫を見かけたら、ヒラタキクイムシの可能性を疑ってください。
この段階で、被害を防げるかどうかが、その後数年、アフリカヒラタキクイムシであった場合今後10年以上にわたって、ヒラタキクイムシに悩まされるかどうかの分かれ道となります。
ヒラタキクイムシならどこかに羽化したときの穴があるはず!
ヒラタキクイムシであるなれば、どこかにヒラタキクイムシが羽化する際に開けた穴があるはずです。
(出典:山梨県衛生研究所資料より)
(しろのすけさんのお宅のヒラタキクイムシの穿孔跡)
ヒラタキクイムシと思われる虫が多く見られる場所の周辺を探してみて下さい。そうすると、上記のように壁に直径2mmほどの小さな穴が空いている壁や床があるのが見つけられるかも知れません。
小さな穴ですから見つけるのは難しいですが、ヒラタキクイムシが羽化する際には、その穴から木の粉を排出することが知られています。
室内の壁という壁を見ていき、下の方に非常に細かいおがくずのようなものがたまっている場所がないかを探して下さい。
(ブログ読者の方からの提供)
(しろのすけさん宅の穿孔跡から排出された木屑)
上記のように、多数の穴とおがくずのような木粉があったらそこがヒラタキクイムシの発生場所です。
この木くずまで確認できたらほぼ確実にヒラタキクイムシが発生していますから一も二もなく、ハウスメーカーに連絡してください。
このような状態であれば、その部材を交換し、周辺への薬剤塗布、室内の成虫の徹底した駆除以外にありません。何より、次の世代を繁殖させないことが最重要課題です。
穴がどうしても見つからない場合はコクヌストモドキかも?
上記で示した、「穴」や木粉が全く見つからず、ヒラタキクイムシと疑われる虫が、キッチンに多く見られる場合は、ヒラタキクイムシに非常によく似た「コクヌストモドキ」という甲虫の可能性も疑って下さい。
コクヌストモドキの写真は以下です。サイズもヒラタキクイムシとほぼ同じ4mm程度の大きさです。
(出典:大阪府衛生害虫検索システムより)
(出典:Wikipediaより)
(出典:農業・食品産業技術総合研究機構より)
コクヌストモドキは、ヒラタキクイムシのように木材を食害することはありません。
コクヌストモドキであれば、気持ちは悪いかも知れませんが、ラッキーだったと思って下さい。。。
コクヌストモドキは、多くの場合、キッチンの中にある小麦粉、おかし、ナッツ類などに大量発生します。病気を拡散するようなことはないとされています。
コクヌストモドキの中でも、ヒラタコクヌストモドキとヒラタキクイムシの見分けは非常に困難です。
キッチンで大量発生している場合は、コクヌストモドキの可能性も十分に考えられるため、まずはキッチンの中の小麦粉やお菓子をくまなくチェックしてみて下さい。
発生場所を発見したら叫び声を上げたくなるかも知れませんが、コクヌストモドキが発生しているおかしやお米、その他食品を破棄し、周辺の食品類も封が開いた者は破棄してしまって下さい。
その後、気になるようであれば通常の殺虫剤等で駆除することで発生を抑えることができます。
このコクヌストモドキは、外からも入ってきますし、木材に卵を産み付けるような性質もないため、ハウスメーカーの責任ではありません。。。。
ただ、どうしても見分けが付かず、コクヌストモドキの発生場所も分からない場合は、ヒラタキクイムシの可能性もあります。素人判断で判断すると後になって大きな問題となるため、コクヌストモドキであった場合は、最後は謝ることを前提にハウスメーカーに連絡をして種類を確認してもらうのが良いかと思います。
コクヌストモドキとヒラタキクイムシの大きな違いはその頭部の形状にあります。
頭部が扁平で丸っぽくなっているのがコクヌストモドキです。ただし、ヒラタキクイムシにも類似した形状の種もいるため、実物を見たことがない状況で見た目だけでの判断は危険です。
発生場所(貯蔵された食品への大量発生)が確認できない場合はヒラタキクイムシの可能性を排除せず確認を行うようにして下さい。
また、非常に興味深い報告として、上記のコクヌストモドキが建材に発生する事例が存在することが、ミサワホーム総合研究所によって報告されています。
ミサワホーム総合研究所のWebサイトによるとコクヌストモドキが本来発生しないはずの建材部に発生している事例が報告されています。その理由は明らかではないものの、コクヌストモドキのフェロモンと同種の物質が建材に含まれている可能性が示唆されるとされています。ただし、ミサワホーム総合研究所の報告によれば、その発生数は数年で減少するとされています。これは、そのフェロモン類似物質が経年で減少することが可能性として挙げられています(個人的にはハウスメーカーがこういったネガティブな情報を積極的に発信する姿勢は素晴らしいものと思います)。
このようなケースでは、コクヌストモドキであってもハウスメーカーによる対応を求めるのも妥当な判断と思います。ただ、気持ちは悪いですが、ヒラタキクイムシに比べれば被害は限定的ですので、その点はあまり心配しすぎないようにして下さい。
ヒラタキクイムシの発生場所が特定できない場合
ヒラタキクイムシである可能性が高いにもかかわらず、ヒラタキクイムシの発生場所が特定できないケースが存在します。
その場合、ヒラタキクイムシの発生場所が壁の裏、天井裏の可能性を疑って下さい。
ヒラタキクイムシは合板に使用される、ラワン等の広葉樹を好んで食害します。通常、新築の住戸で合板がむき出しになっていることはないかと思います。
合板がむき出しになっているのは、壁紙等が貼られていない階段下収納やクローゼット内部等だけかと思います。一条工務店の場合はクローゼット内部の合板の上にもシートが貼られているためほとんど合板はむき出しになっていないかと思います。
(ブログ読者の方からの提供)
上記のパントリー内部も合板の上に化粧シートが貼られているかと思いますが、ヒラタキクイムシはそれを突き破って発生してきます。
上記のようにわかりやすい場所から発生してくれば、発生場所の特定も可能ですが、天井裏や壁の内部、補強壁等に食害が発生した場合は場所の特定が困難になります。
具体的な例として、LEDライトの裏側の合板がヒラタキクイムシによって食害された事例も存在します。
(ブログ読者の方からの提供)
LEDライトの内部に大量のヒラタキクイムシの死骸が入っているのが確認できます。このケースでは、LEDライトを取り外した裏側にヒラタキクイムシの穴が確認されたとのことでした。
このようなケースでは、室内に小さな虫が頻繁に飛び回っているけれど、その発生場所が特定しにくいケースになります。
見た目だけでは判断できない場所が食害されている可能性もありますので、ハウスメーカーの担当者など専門家を呼んで確認を行って下さい。
ヒラタキクイムシ発生の責任は誰にあるか?
シロアリ対策はヒラタキクイムシに効果があるのか?
ここで、シロアリ駆除の対策が効果があるのではないかと考えられる方もいらっしゃるかと思います。
一条工務店は1Fについては合板部も含めて、シロアリ対策としてピレスロイド系の薬剤によって処理がされています。これらの薬剤はヒラタキクイムシについても有効である事が報告されています。しかし、住宅全体が処理されているわけではないため、ヒラタキクイムシの被害を防ぐ対策としてはほとんど効果がありません。
一条工務店以外の住宅メーカー工務店についてはその多くで建築基準法で定められた防蟻処理(地表面から高さ1.5mまでの防蟻処理)しか行われていケースも多いため、さらにヒラタキクイムシには弱い状態となっています。
ヒラタキクイムシとシロアリの大きな違いは、「乾燥した木材を好む」という点です。そのため、地表面からの高さに関係なく、ヒラタキクイムシの食害は発生します。よって、防蟻処理によってヒラタキクイムシの発生を完全に防ぐことはできません。
ヒラタキクイムシは外から飛んできません!
ここで、ヒラタキクイムシによる食害がほぼ確実になった場合、その責任関係を明確にしておくことがその後の対応において重要となります。
ヒラタキクイムシは昆虫です。
そのため、ご自身でも「もしかしたら外から飛んできたのかも知れない?」という不安があろうかと思います。
また、ハウスメーカーの担当者も「裏に山があるからそこから飛んできたのだろう」などとうそぶく可能性もあります。
ゴキブリなどの衛生害虫は屋外から室内に侵入してきます。そのため、室内にゴキブリが居たからと言ってハウスメーカーの責任を追及することはできません。
しかし、ヒラタキクイムシについてはその点は自信を持って外からは飛んでこない、と言い切って構いません。
ヒラタキクイムシが屋外から飛んできて、家の中に産卵することはまず考えられません。
裏に山があろうと、野原があろうと関係ありません。
ヒラタキクイムシはほぼ「屋内のみでしか生息できない」という特殊な昆虫です。
日本国内ではこれまで7種のヒラタキクイムシ類が発見・報告されています{(岩田,1982)(岩田, 1988)(岩田,1996)}。
このうち、最近発見された、ケブトヒラタキクイムシは1978年(森, 1978) 、アフリカヒラタキクイムシは1982年(岩田,1982)、アメリカヒラタキクイムシは1996年(岩田, 1996) にはじめて日本国内での正式な生息記録が行われていますが、それ以外の4種についても明治期等以降に記録が始まっている等から、江戸時代頃に海外からもたらされた外来種であると推測されています。(北方系で北海道に生息しているナラヒラタキクイムシのみ本来種である可能性が高いとされています(岩田,1991))
そして、北海道に生息するナラヒラタキクイムシ以外の6種は全て南方系ヒラタキクイムシと呼ばれており、日本の冬を屋外で越冬することは困難な種であるとされています。
実際、日本と類似した気候の屋外でヒラタキクイムシが発見された事例は世界的にも極めて少ないことが過去の研究から分かっています(岩田, 1991)。
出典:(岩田, 1991)
1991年の論文で岩田氏らの研究によると、世界全体のヒラタキクイムシの文献調査の結果からも、日本やヨーロッパの温帯から亜寒帯では世界的に見てもヒラタキクイムシが屋外で採取された事例は極めて少ないとされています。
日本国内においては、岩田氏らの研究によって、非常に特殊な事例として林道脇の薪(岩田,1981)や山間部の薪(岩田,1988)など特殊な環境で例外的に捕獲されているに過ぎません。
昆虫であるため、どうしても「外から入ってきたのではないか?」ということが第一に推測されてしまいますが、ヒラタキクイムシはその他の害虫とは大きく異なり、外から飛来する可能性は極めて低い特殊な昆虫なのです。
先に示した工務店側敗訴の訴訟において工務店側は「裏山から飛来した可能性が高い」と主張していたようですが、この主張は科学的根拠がなく、あまりにも無理のある主張であったと言わざるを得ません。
万が一、ハウスメーカーや工務店側が「外から飛来した」という主張をする場合は、(岩田,1991)を示して冷静にその可能性が極めて低いことを示すのが良いかと思います。裏山から見つかったら、それは論文に掲載されるほどに特殊な事なのですからその可能性は排除して良いかと思います。。。
それでもやはり「屋外からの可能性もあるのでは?」と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、北方系で寒さに強いナラヒラタキクイムシを除いて、上記の岩田氏らの研究で確認された屋外での生息記録は「木材をビニールシートで覆った環境」のように、かなり人為的な環境での屋外発生確認であって、本当の意味での屋外発生は確認されていないことを付記しておきます。
ヒラタキクイムシの発生場所として家具も疑う
上記の事例のように、ヒラタキクイムシは外から飛来する可能性は極めて低い昆虫です。
そのため、ヒラタキクイムシは人為的に持ち込まれた木材に卵が付着していた可能性に限定して議論して良いと考えます。
その他の論文においても、発生の原因の多くは既に産卵された建材や家具などを持ち込んだことによるものと考えられる、とされています(大村, 2009)(馬場, 2014) 。
ここで重要となるのは、ヒラタキクイムシが「建材」のみではなく、あらゆる広葉樹の木製品に幼虫が産み付けられている可能性があるという点です。
新築住宅の場合、建築材以外の発生場所も疑う必要もあります。
建材の可能性を除けば、最初に疑うべきは「家具」です。
新築にあわせて、ベッドやその他の収納、飾りなど様々な木製品を新規に購入することも多いかと思います。
それら家具に使われている合板は基本的に広葉樹を原料とした合板です。
ヒラタキクイムシを発見したらすぐに、壁や床を確認すると同時に、新規に購入した家具類も必ずチェックして下さい。
「けいたさんのブログ」では、ベビーベッドからヒラタキクイムシが羽化してきた事例が紹介されています。
こちらのお宅では、リビングに置いてあった竹篭からヒラタキクイムシが発生した事例が紹介されています。
家具や置物からヒラタキクイムシが発生した場合の責任をハウスメーカーに問うことはまずできません。しかし、責任問題の前に被害の拡大を防ぐことが最重要と思います。初期の段階でヒラタキクイムシが家具から発生していることができたならば、建材にヒラタキクイムシが生息していた場合よりもはるかに対応が楽です。
多くの家具は1年間の保証期間が設定されているはずですから、家具の購入店にヒラタキクイムシ発生を伝えればすぐに交換か返金の対応をしてくれるはずです。
家具や置物を確認してヒラタキクイムシが羽化する際の穴や木屑が確認できた場合は、ただちにその家具や置物を屋外に搬出して下さい。その上で、室内をバルサンのような燻蒸剤(種類は後ほど詳しく書きます)によって数回燻蒸して下さい。ヒラタキクイムシの成虫が発生している状況ですから、それら成虫が室内に産卵することをなんとしても止めることが重要です。今後数年から10年辛い思いをすることを思えば、数日の努力です。
家具も置物もチェックしたけれどヒラタキクイムシの発生が確認できなかったら建材に違いない、というのは早計です。。。
ヒラタキクイムシは、戦前はタケシンクイムシと呼ばれていたのですが、その名前が示すように竹を好んで食害します(森, 1976)。過去においては、弁当を包む際に使用されていた竹ひご材からのヒラタキクイムシの発生が確認されています。また、海外、特に東南アジアで購入した木製の皿やフォーク、スプーン等からのヒラタキクイムシの発生も報告されています。(論文中に土産物からヒラタキクイムシの発生事例が報告されたものがあったのですが、どの論文か分からなくなってしまいましたm(_ _)m)
また、論文では、古い記録ですが、マッチの軸に使用されていた木材からヒラタキクイムシが発生された事例も報告されています。
このように、かなり広範な木材からヒラタキクイムシが発生する可能性があるため、ヒラタキクイムシが発生したからといって直ちに、建材に付着していた、と結論できないのがヒラタキクイムシの難しい点でもあります。
ヒラタキクイムシ発生要因の特定
発生時期からの発生場所と責任の所在を推測する
ヒラタキクイムシが建材に付着していたのか、それとも、家の持ち主が家具等、何らかの形でヒラタキクイムシの幼虫が潜む木材を持ち込んでしまった結果、住宅にヒラタキクイムシを発生させてしまったのかは、その後のハウスメーカーの対応に大きな影響を与えます。
積水ハウスは家具等に付着してもたらされたヒラタキクイムシの被害を保証外と明記しています。一条工務店は、家具等によって持ち込まれたヒラタキクイムシについては言及していませんが、原則的には、施主側が持ち込んだヒラタキクイムシの卵による被害までは責任を問うことは極めて難しいと考えるべきと思います。ただし、一条工務店の場合は、「防虫された部材」、すなわち1階部分の合板は全て防虫加工していることを宣伝していますからこの部材が食害された場合は、食害したヒラタキクイムシが家具に付着していた卵由来であっても保証範囲内と解釈できます(ただ、普通に考えてこれは食害されないと思いますが。。。)。
どのようなケースにおいても、建材に潜んでいたヒラタキクイムシの幼虫に由来する食害か、それとも施主が持ち込んだ家具に潜んでいたヒラタキクイムシの幼虫による食害かは、その後の保証対応において極めて重要と思いますので、細心の注意が必要と考えます。
仮に発見時のヒラタキクイムシが家具から発生していたとしても、家具によって持ち込まれたとは断定できません。建材から発生したヒラタキクイムシの第一世代が家具に産卵して羽化してきたというケースも考えられる為です。
同様に、建材から発生しているからと言ってハウスメーカーの責任とも言えません。ヒラタキクイムシを家主が家具等に付着した状態で持ち込んで羽化した第一世代が建材に産卵した可能性もあるためです。
ヒラタキクイムシの発生の主要因を特定するにはヒラタキクイムシの早期発見が重要です。
引き渡し後2年以上経た住宅のヒラタキクイムシ発生はハウスメーカーの責任ではない
はじめてヒラタキクイムシを室内で発生したのが、新築引き渡しを受けてから2年以上経過している場合は、建材にヒラタキクイムシの幼虫が付着していたという可能性は極めて低くなります。
新築引き渡しから2年以上経た住宅でヒラタキクイムシが発生した場合は、最近1年程度の間に新規に購入した家具やその他の木製品からの発生が疑われます。
また、ヒラタキクイムシの被害に遭われた方の80-85%は新築後2年以内に被害が発生しており、2年目以降に被害が発生する可能性はそれほど高いとは言えません(日本複合・防音工業会のサイト)。
万が一、新築から2年以上経てからヒラタキクイムシの被害に遭われた場合は、アフリカヒラタキクイムシの可能性も高いため、専門家への依頼を行うことをお勧めします。この場合は残念ながらハウスメーカーの責任を問うことはほぼできないものと思います。
引き渡し後2年以内にヒラタキクイムシが発生した場合は早期発見が鍵
ヒラタキクイムシが発生した原因がハウスメーカーが建築に使用した建材にあることを証明するためには、ヒラタキクイムシの早期発見と発生箇所の特定が最重要です。
ヒラタキクイムシのライフサイクルは、通常の環境では秋までに産卵をし、翌年の春以降に羽化します。
よって、秋以降に引き渡しを受けて、翌年の春~夏までのの間にヒラタキクイムシの成虫が確認された場合、それは新築後の第一世代の可能性が高くなります。
この第一世代の段階でヒラタキクイムシの発生箇所を特定できれば、それを持ち込んだのがハウスメーカーなのか、自分なのかを特定する鍵となります。
第一世代のヒラタキクイムシを発見したら、すぐにヒラタキクイムシの発生箇所の特定を行って下さい。
この時点で住宅の建材にヒラタキクイムシの幼虫が羽化する際にできる穴が居ていたらば、かなりの確率でハウスメーカーや工務店が利用した建材にヒラタキクイムシの幼虫が潜んでいたことが示唆されます。
なぜならば、ヒラタキクイムシが世代交代を行うためには通常1年を要するからです。
よって、仮に新築引き渡し後に施主が家具等にヒラタキクイムシが付着した状態で室内に持ち込んでしまい、それが室内のヒラタキクイムシ発生に繋がったとするならば、施主が持ち込んだヒラタキクイムシは引き渡し後の翌年春以降に羽化し、そのヒラタキクイムシの成虫が室内に産卵し、第二世代として建材で繁殖したと考えねばなりません。
しかし、ヒラタキクイムシの通常のライフサイクルを考えると、施主が持ち込んだとするならば、翌年の春から夏までの間に施主が持ち込んだヒラタキクイムシが羽化し、その後、室内の建材に産卵し、翌年の春までに建材から羽化したと考えなければなりません。そのため、施主が持ち込んだヒラタキクイムシが建材に被害を与えるためには通常2年近くの時間が必要になるのです。
よって、引き渡し翌年春~夏の段階で建材にヒラタキクイムシが羽化する際にできる穴が空いていたということは、引き渡しの時点で既にそこにヒラタキクイムシが産卵をしていたと言うことが強く示唆されることを意味します。
新築時には多くの家具類も購入していると思いますので、それらの家具からの侵入も十分にあり得ることには注意が必要です。
ただ、1世代目の時点で建材から幼虫の脱出口が確認されれば建材由来のヒラタキクイムシである可能性が極めて高いと言える事から、写真を撮影するなどして証拠を残し、すぐにハウスメーカーに連絡をすれば、資金力のある大手ハウスメーカーであればまず間違いなく、部材の交換とその後の殺虫処理等の対応を保証の範囲内として行ってくれるかと思います。
ただし、あまり強気に出すぎないことをお勧めします。というのも、先ほども示した通り裁判になって勝てるには勝てるかも知れませんが、そこで認められる金額はごく僅かですし、裁判に持ち込むと言うことはその間ハウスメーカー側は対応を取ってくれないことになるので、駆除も自分でしなければならなくなります。駆除は専門業者以外難しいため、その費用も負担せざるを得なくなります。
そして、駆除が成功していたら、裁判して勝っても保証してもらえるのは駆除に要した費用だけですし、駆除できなくても部材の交換対応のみとなります。それ以降拡大したヒラタキクイムシ被害はハウスメーカーに責任を問うことが難しくなります。よって、裁判しても何一つ良いことがありません。。。それならば、ハウスメーカーを説得して早期に交換対応などをしてもらうことの方が良いためです。
ハウスメーカー側の責任による可能性が高いヒラタキクイムシの発生判別方法~一条工務店限定~
築後1年以上経過して発生したヒラタキクイムシでもハウスメーカーが持ち込んだ可能性が極めて高いと言える事例も存在します。以下は一条工務店に限定したハウスメーカー、すなわち一条工務店の責任の判別方法です。
ヒラタキクイムシはその生態として、木材の導管内に産卵をします。(下図)
(出典:森, 1962)
そのため、産卵をするには木材が水を通す際の穴、導管が不可欠です。
この特性を踏まえると、ヒラタキクイムシをハウスメーカーが持ち込んだのか、それとも家具等に付着して家主が持ち込んでしまったのかを判別できるケースがあります。
典型的なハウスメーカーが持ち込んでしまった、ヒラタキクイムシの事例がしろのすけさんのお宅です。
(しろのすけさん宅においてヒラタキクイムシ駆除の応急措置風景)
しろのすけさんのお宅では、築2015年9月に引き渡しを受けており、2017年3月頃にヒラタキクイムシが一条工務店の床材から羽化してきたことが初めて確認されています。時間的には1年半が経過しており、ただちにハウスメーカーが持ち込んだものとは断言できないように見えます。
しかし、しろのすけさんのお宅は、まず間違い無くしろのすけさんがヒラタキクイムシを持ち込んだのではなく、一条工務店がヒラタキクイムシの卵が付いた状態の床材を持ち込んだことが原因と言えます。
いやいや、家具などに付着したヒラタキクイムシが床に産卵した可能性もあるのではないか?と思われるかも知れませんが、あり得ない、のです。
なぜ、断言できるかというと、一条工務店の床には産卵に必要な「導管」がないのです。。。
一条工務店の標準床材はEBコーティングという処理をされた床材を使用しています。詳しくは下の記事をご覧下さい。
[kanren postid=”5769″]このEBコーティングとは、表面を薄く高分子材料でコーティングしたものとなっています。そのため、床表面はいわゆるビニールのようなもので覆われた状態になっており、露出した導管が存在しないのです。
そのため、ヒラタキクイムシは床の表面から産卵を行うことができません。
導管が存在しないにも関わらず床からヒラタキクイムシが這い出てきたということは、コーティングがされる以前にヒラタキクイムシが木材に産卵していた、可能性が高いと言えます。
一条工務店の住宅の場合は、床の裏面は床暖房のアルミ箔が張られていますのでここからも産卵が行えません。よって、論理的に考えて、一条工務店がヒラタキクイムシが産卵した床材を使用してしまっていたことに起因するヒラタキクイムシの発生である、と言えます。
これはあくまで一条工務店のケース限定の判定方法となります。一条工務店の床材は、表面をEBコーティングで塞がれており、裏面に接する木材の間には床暖房用のアルミ箔が張られていることから引き渡し後に床フローリングにヒラタキクイムシが産卵できないという特殊な条件を満たしているからこそ判定ができるものです。
ただし、既にヒラタキクイムシが大量に発生した状況ではフローリングと床暖房の隙間に入り込んで産卵することもあるため、あくまで初期の確認に限定された判定方法となります。
実際、一条工務店もしろのすけさんのお宅のヒラタキクイムシ被害は自社の責任である可能性が高いとして、床の全面張りかえを無償で迅速に行っています。
(しろのすけさん宅の床の全面張り替え風景)
アフリカヒラタキクイムシの種類の簡易な判別(同定)方法
ヒラタキクイムシの種の同定
ヒラタキクイムシの被害が確認された後は、そのヒラタキクイムシが具体的にどのヒラタキクイムシであるかの同定が必要になります。
現在、ヒラタキクイムシの中でも特に被害が顕著なのがアフリカヒラタキクイムシとなります。
これまでの研究報告によれば「特に名古屋以西の西日本ではその被害の大半が新たな侵入種であるアフリカヒラタキクイムシであることが明らかとなった(吉村,2016)」と報告されています。
日本の在来のヒラタキクイムシとアフリカヒラタキクイムシでは駆除の方法に若干の違いがあります。そのため、侵入したヒラタキクイムシが日本のに従来からいたヒラタキクイムシ(在来種)であるのか、アフリカヒラタキクイムシであるかの判別(同定)が必要になります。
従来のヒラタキクイムシであれば、数年の大発生の後、徐々に数が減少していきますがアフリカヒラタキクイムシであった場合、放置すれば今後も継続して発生し続けてしまいます。
ヒラタキクイムシの種の同定はハウスメーカーに任せれば良いかと思いますが、ハウスメーカーとしてもなかなか同定が難しいかと思います。
そこで、今回この記事を書くにあたってアドバイスをいただいた奥村防蟲科学株式会社の奥村氏に教わった簡易なアフリカヒラタキクイムシの同定方法を示します。
在来種のヒラタキクイムシとアフリカヒラタキクイムシの判別は肉眼では困難です。また、虫眼鏡やルーペでも同定は可能ですが、かなり難しいかと思います。できれば数十倍に拡大できる顕微鏡は必要かと思います。
早期にアフリカヒラタキクイムシである可能性がわかっていれば迅速な対応ができるため、ここでの同定方法はあくまで確定診断ではなく、簡易なスクリーニングとお考えください。
アフリカヒラタキクイムシの特徴~昼間に活発に稼働している~
在来種のヒラタキクイムシは薄暮活動性とされ、夕方~夜、夜~朝方にかけて活発に稼働をします。
一方のアフリカヒラタキクイムシは昼行性とされ、日中に活発に稼働をします。見つかったヒラタキクイムシが日中に動き回っているようであればアフリカヒラタキクイムシの可能性があります。逆に日中は隅の方でじっとしているのに夕方から夜にかけて活発に稼働しはじめる、または、日中は目に付かなかったのに夜になるとどこからともなくヒラタキクイムシがあらわれるという状態であれば在来種のヒラタキクイムシの可能性が高いと言えます。
アフリカヒラタキクイムシの特徴~複眼が黒色~
虫眼鏡などを使ってご覧になっているアフリカヒラタキクイムシの複眼(目)を確認してください。
アフリカヒラタキクイムシの複眼は「黒色」です。
実際に今回一条工務店の住宅で被害を発生させていたアフリカヒラタキクイムシの顕微鏡写真を下に示します。
(さすけ撮影:アフリカヒラタキクイムシの複眼)
上記のように矢印の先の複眼が黒色をしていることがわかるかと思います。
ただし、通常のヒラタキクイムシも灰褐色とは言え、かなり黒に近いケースもあるためこれだけでアフリカヒラタキクイムシと判別することはできません。目の色が茶色またはグレーであればアフリカヒラタキクイムシではない可能性が高いです。
アフリカヒラタキクイムシの特徴~腹部の毛房~
これは簡易なもので良いのですが顕微鏡や虫眼鏡がなければ判別が難しいですが、かなり確定に近い判定ができるためご紹介します。
下は論文に示されていたヒラタキクイムシとアフリカヒラタキクイムシの判別方法の一例ですが、図2をご覧下さい。
これは雌(メス)だけの特徴であるため、複数のヒラタキクイムシを採取して確認する必要があるのですが、メスのアフリカヒラタキクイムシには腹部の関節(腹節)に毛房がありますが、通常のヒラタキクイムシには毛房がありません。
上の写真ではわかりにくいため、私が撮影した下のカラーの写真をご覧下さい。
(さすけ撮影:メスのヒラタキクイムシの腹部)
上の矢印の先に、黄色い毛房が確認できるかと思います。このような毛房は在来種のヒラタキクイムシには存在しません。
そのため、複数のヒラタキクイムシを採取して顕微鏡で確認し、毛房が確認できた場合はそれはアフリカヒラタキクイムシである可能性が高いと言えます。
より詳細な種の同定方法
日本国内ではヒラタキクイムシ類は複数確認されています。具体的に種を同定するためには専門的な同定が必要となります。
ヒラタキクイムシの同定方法については「乾材害虫と屋内で発見される昆虫 : 同定、生態、被害、防除(1993)林業科学技術振興所」に示された方法によって、国内で生息が確認されているヒラタキクイムシの種の同定が可能となります。
ここで示されている種の同定方法は専門家でなければ判定は困難なものが多くハウスメーカーの専門部署の方などに依頼をして下さい。
例えば、上記の種の同定方法で示されている図の一つですが、左側が通常のヒラタキクイムシ、右がアフリカヒラタキクイムシの顎部分ですが、素人目には両方同じですが、「頭部は前頭楯片の間に凹陥部を欠く」というのがアフリカヒラタキクイムシの特徴として書かれていますが、、、、個人では手に負えません。。。
とりあえずの初動対応としては、昼行性のアフリカヒラタキクイムシなのか、薄暮性(夜行性)の通常のヒラタキクイムシなのかが特定できれば十分です。
(野淵,1993)
ヒラタキクイムシに食害されていることがわかったらどう対応すべきか?
ヒラタキクイムシ防除の基本
ヒラタキクイムシの防除は素人では難しいと言うことは十分にご承知おき下さい。その上で、以下では専門家の意見等を踏まえてヒラタキクイムシの防除方法を記載します。
ヒラタキクイムシの防除方法は大きく、成虫の防除と幼虫・卵の防除の2つに分けて考える必要があります。
成虫の防除は、被害の拡大防止の観点から非常に重要です。サナギから羽化したヒラタキクイムシの成虫の雌は10日程度の短い命です。
しかし、その期間に1カ所に3-5個程度の卵を産みながら、生涯で70個程度の卵を産み付けます。
ヒラタキクイムシの成虫を防除することは、次世代のヒラタキクイムシの数を大きく左右するものであるという点から非常に重要です。
しかし、一度大発生してしまったヒラタキクイムシを1回の防除作業で完全に防ぐことはかなり難しいことです。すなわち、産卵を完全に防ぐことは非常に困難です。
よって、ヒラタキクイムシが大発生してから気が付いた場合は、ヒラタキクイムシの卵と幼虫の防除をあわせて実施することが必要となります。
しかし、先にも述べたようにヒラタキクイムシは木材の導管内部深さ1cm程度の所に産卵を行い、幼虫は成虫になるまでは外に出てくることがありません。そのため、通常の薬剤散布では卵や幼虫を殺虫することは非常に困難なものとなっています。幼虫と卵への対応は場当たり的な対応にならざるを得ないのが現実です。気長に、対応せざるを得ないのがヒラタキクイムシ防除の難しさと思います。
ちなみに、ヒラタキクイムシの産卵カ所は表面から見分けることは極めて困難です。テイスティングマークというヒラタキクイムシのかみ傷を見つけることで産卵カ所を特定できるケースもありますが、これは数も少なく傷としても目立ちにくいため通常は産卵場所は特定できないと考えるべきです。
また、以下のヒラタキクイムシの防除に関しては、ペット等の哺乳類、子どもへの影響について農薬等として影響を検証されてはいますが、ペットの昆虫、魚類(金魚や熱帯魚)に対しては致死的な影響を及ぼすのでそのようなペットを飼育されている場合は事前に避難させるなどしてからおこなって下さい。
特に、私と同じように熱帯魚等を飼育されている方は十分にご注意ください。全滅します。
初期段階で発見できた場合:第一の対応は部材の交換
室内にヒラタキクイムシのような虫を見つけて、早期に発見できた場合はうまくいけば根絶できる可能性があります。
ヒラタキクイムシへの対応は発見から早ければ早いほど駆除できる可能性が上昇します。
しかし、ヒラタキクイムシの幼虫が羽化して成虫になってはじめてヒラタキクイムシの食害に気が付くのが現実です。
成虫は約10日の間に交尾をして、産卵を行います。ここで重要なのは、ヒラタキクイムシを見つけたら一刻も早く成虫を殺してしまうことです。
1匹でも2匹でも残してしまえば次の被害を発生が懸念されます。第一世代の段階であれば、相当にひどい状態の家でない限りは1カ所の合板からヒラタキクイムシが発生しているはずです。
また、ヒラタキクイムシはその生態として、羽化した直後は飛翔せず、周囲を歩きまわる習性を持っているとされています(布村, 1968)。産卵開始前のこの時点で殺虫することができれば被害の拡大を防ぐことができます。
クローゼットや壁など、かなりのお金もかかるため費用面の交渉を進める前に交換をすることはリスクがあることかも知れませんが、発生箇所が特定できたらすぐにその発生箇所とその周辺(既に卵を産み付けられている可能性があるため)を交換することが効果的です。
ヒラタキクイムシの1匹の成虫は大抵同じ板周辺に産卵します。そのため、しろのすけさんのお宅のように1枚のフローリング板から複数の成虫が羽化してくるのが一般的です。
全ての幼虫が同時に羽化するわけではありません。そのため、その板にはまだ羽化していない幼虫が潜んでいると考えて間違いありません。このような場合はできる限り早期にフローリングなどごと交換することで、それ以上の羽化を防止することができます。
ハウスメーカーなどによっては、交換用の部材が届くのを待ってから、作業をするというような話をするかと思いますが、これは色々な論文等を読んだ限り、そのような悠長なことは言わずに、発生箇所が特定できているならば外せる部分はすぐに、できれば翌日でも翌々日でも良いので、すぐに外してしまうことです。
フローリングのように剥がすこと自体が容易に行えない場合はヒラタキクイムシが這い出てきた木材の周辺に残効性のある殺虫剤を塗布しておくことで羽化してもすぐに殺虫することができます。薬剤が飛散してよいことはないため、殺虫剤を表面に散布したあとサランラップ等で覆って、周囲を養生テープで貼り付けておくと良いです。一般に殺虫剤の多くが油溶性であるため、フローリングが変色する可能性が高くなります。
その他、傷が付くとか、壁紙の色が変わってしまうとか、色々と問題は出るかも知れません。。。。でも、ヒラタキクイムシが毎年、場合に寄っては数ヶ月に一度大発生するよりはずっとマシなはずです。
ヒラタキクイムシが巣くっている可能性のある合板や収納は全交換が第一選択です。
その際、幼虫などがばらまかれることを懸念するかも知れませんが、過去の研究からヒラタキクイムシの幼虫は、一度木材から出てしまうと自分自身で壁に穴を開けて再度壁の中に潜り込むという能力がないことが確認されています。ですから、幼虫が合板から落ちてしまえばそれは死滅するだけですから気にする必要はありません。
何よりも、新たなヒラタキクイムシが羽化してきて、そのヒラタキクイムシが別の場所に産卵することを防ぐことが重要です。
この段階で、どれだけ迅速な、そして適切な対応がとれるかどうかがその後のヒラタキクイムシの拡大を防げるかどうかの分水嶺になります。
ヒラタキクイムシの羽化が確実な段階で「様子を見る」という行為は百害あって一利無しです。
ヒラタキクイムシの成虫が室内に発生しており、木材に穴が空いており、その穴の下に木粉が落ちていたら、それはほぼ間違いなくヒラタキクイムシと考えて行動すべきです。
第二の対応は熱処理
天井裏の合板や壁裏の構造壁など、交換が難しい場所からヒラタキクイムシが発生している場合は、熱処理が第2の選択となります。
ヒラタキクイムシの幼虫は比較的熱に弱く、65.5℃以上の温度になると死滅することが分かっています(Altson, 1922)。また、高温蒸気による処理では54.9℃以上の温度で1時間半処理することで材中のヒラタキクイムシの幼虫を死滅させることができるとされています(Fisher, 1928)。
これらのことから、いわゆるスチームクリーナーによる熱処理が有効と考えられます。
この方法では、「材中の温度が65.5℃以上(スチームの場合は54.9℃以上)になる」ことが必要である点に注意して下さい。羽化前のヒラタキクイムシの幼虫は木材の深さ1cm程度の所に潜んでいるため、その深さまで温度を伝える必要があります。害虫駆除の専門商社である鵬図商事のWebサイトに掲載された奥村防虫科学の奥村氏の実験によると、
ケルヒャースチームクリーナーDE4002plusを利用した事例では、5.5mmの合板で45秒、9.0mmで90秒、12mmでは360秒以上を要したとされています。
スチームクリーナーをお持ちでしたら、スチームクリーナーでヒラタキクイムシが羽化してきた(他の穴と繋がっている可能性がある)穴に対してスチームクリーナーで高温蒸気を入れるという方法で、一定の殺虫が可能であると考えられます。
この方法のメリットは薬剤を使用しないため、食品等が保管されている部位に容易に使用できるという点が挙げられます。
ただし、上記でも書いたように、内部の温度を予想しながら使用する必要があるため、初動時の対応またはその他の薬剤処理との併用で実施するのが良いと考えます。
火災等の危険もあるため推奨されるものではありませんが論文中に記述のあった古くからの方法として、穴の周辺をアイロンで熱するという駆除方法も紹介されていましたので、付記しておきます。
また、上記方法は熱による壁紙のはがれや変色等が起こりえますので、自己責任またはハウスメーカー担当者と相談の上実施するようにしてください。
広範な箇所の対応は困難ですが、運良くヒラタキクイムシの第一世代の羽化を確認できた場合には影響が少なく効果の高い方法となります。
次の章ではヒラタキクイムシの薬剤による苦情方法を詳説します。
ヒラタキクイムシに対する薬剤駆除の基礎知識
薬剤散布のタイミング
ここまではヒラタキクイムシの駆除に薬剤を使用しない駆除方法を紹介してきました。部材の交換や熱処理による防除は安全性が高く、一定の効果が期待できるものの一度羽化してして室内に飛び出した成虫を駆除することはできません。
既に羽化してしまったヒラタキクイムシを可能な限り確実に駆除し、さらには、どこから羽化するか分からないヒラタキクイムシを羽化した直後に殺虫するためには薬剤の散布が最も効果的です。
ただし、室内に殺虫剤を散布する以上、十分な事前知識は不可欠です。殺虫剤はどれほど毒性が低くても、人体に対しても全く無害である、ということはありません。ハウスメーカー等に依頼して専門知識を前提として対応をする場合は、原則その指示に従うことが重要です。個人で行おうとする場合は、それぞれの薬剤の特性を十分に理解した上で実行して下さい。
基本は可能な限り高い殺虫効果を得つつ、人畜毒性の低い薬剤を散布すること、そして、ヒラタキクイムシが新たに羽化してきたときにその成虫を駆除できるよう残効性のある薬剤を使用するということが必要です。
そして、ヒラタキクイムシの成虫駆除においては、薬剤散布の「タイミング」が重要となります。
先に示したようにヒラタキクイムシは一般に夜行性または薄暮性と言われており(布村, 1968)、日中は木の隙間など暗いところに隠れています。ただし、アフリカヒラタキクイムシは昼行性ですので、その他のヒラタキクイムシとは活動時間が異なります。
まずは、ヒラタキクイムシの種類の特定が重要になります。種類の特定が困難である場合は、通常のヒラタキクイムシ類の可能性とアフリカヒラタキクイムシの可能性の双方を踏まえて対応を行います。
通常のヒラタキクイムシは、夜行性であるため日中に薬剤散布を行っても十分な効果を得られません。
逆にアフリカヒラタキクイムシであれば夜に薬剤散布を行っても十分な効果が得られません。
また、羽化直後は飛翔することなく床面を這い回る行動を取るため、通常の薬剤噴霧では十分に効果が得られないこともあります。
ヒラタキクイムシが確認されたら、可能な限りすぐに薬剤噴霧を行う必要があります。
【非推奨】効果は高いが、人畜にも影響が懸念される薬剤~シフェノトリン~
最初にヒラタキクイムシへの殺虫効果が学術的に最も確実な「シフェノトリン」という殺虫剤をご紹介します。ただし、このシフェノトリンは後で示すように、人間に対しても眼性刺激等が強いことから、シフェノトリンではなくもう少し毒性の低いフェノトリンを第一選択として使用する様にして下さい。
学術的にはヒラタキクイムシには「シフェノトリン」というピレスロイド系の殺虫剤の効果が確認されています(馬場, 2014)。
シフェノトリンを主成分とする燻煙剤としては「バルサンプロEX」が代表として挙げられます。
このシフェノトリンは、独立行政法人製品評価技術基盤機構によると残効性が高い薬剤とされており、燻煙後もしばらくの間効果を発揮することが期待できます。
これによって、木材の隙間等に隠れていたヒラタキクイムシなどが夜に歩き回った際に薬剤に触れて殺虫することも期待できます。
また、以前このブログでも書かせていただいたことがあるようにピレスロイド系殺虫剤は、昆虫類への毒性が極めて高い一方、昆虫類への毒性に比べて人間等の哺乳類への影響が少ない農薬です。
[kanren postid=”5426,5427,5428″]現在、住宅の防蟻剤として広く使用されており、一条工務店でも使用しているコシコート、コシペレット、コシシーラー、アリピレスなどは全てこのピレスロイド系の殺虫剤です。
そして、このピレスロイド系殺虫剤の中でも最も強い殺虫効果(毒性)を有するのがシノフェトリンという農薬になります。
今回、アドバイスをいただいた奥村防蟲科学株式会社の奥村氏からは、「学術的な根拠に基づく記述としては正しいが、お勧めしない。現実的には厳しい。」とのアドバイスをいただいていることを付記します。
【推奨】毒性が低いがヒラタキクイムシに効果を発揮するフェノトリン製剤
上記で示したシノフェトリンは効果が高く残効性も有するのですが、一方でそこに住む人間にも影響が出てしまうことが危惧されます。得にペットを飼育しているお宅や、小さなお子さんがいらっしゃる家庭ではシフェノトリンはむやみに散布するべきではありません。当然全ての殺虫剤はむやみに散布すべきではありませんが。。。得にシフェノトリンはヒラタキクイムシのように小さな昆虫に対して使用するには強すぎます。
害虫駆除の専門家である奥村防蟲科学株式会社の奥村氏から「バルサンいや~な虫」でも問題なくヒラタキクイムシの成虫を殺虫できていると教えていただきました。
「バルサンいや~な虫」の有効成分は、シノフェトリンと同様ピレスロイド系農薬であるフェノトリンが有効成分となっています。
フェノトリンはシノフェトリンと比べると毒性が低く、先ほど挙げたシフェノトリンを有効成分とした「バルサンプロEX」が安全上注意を要する薬剤が分類される第2類医薬品であるのに対して、フェノトリンを有効成分とした「バルサンいや~な虫」は医薬品に該当していません。
フェノトリンはシフェノトリンに比べると毒性が低く、例えばゴキブリの殺虫効果は低く、一般にダニやアリ、カメムシ、ムカデといった小型の昆虫の殺虫を目的として用いられる殺虫剤として販売されています。
そのため、人間への毒性もシフェノトリンに比べると低く、眼粘膜や皮膚刺激性も低くなっています。
一方で、フェノトリンはシフェノトリンと同様高い残効性があるため、散布後も一定期間殺虫効果を維持することができます。
フェノトリンはスミスリンという商品名で、疥癬(ヒゼンダニが皮膚に寄生して生じる感染症)などの皮膚病治療薬としても用いられています。
また、シラミの駆除薬としてスミスリンシャンプーなどとしても用いられています。人の肌に直接付けて使う用途からも分かるようにシフェノトリンに比べると毒性は低くなっています。
通常、ヒラタキクイムシは一斉に羽化するわけではなく、逐次羽化してきますので、バルサン等の残効性を考慮に入れて2週間から1ヶ月程度の間隔を開けて対応を行うことが推奨されています(奥村防虫科学株式会社)。
燻煙を行う際には、ヒラタキクイムシが隠れる場所をなくすよう収納など可能な範囲で開放して行うと効果的です。
ただし、フェノトリンも無害なわけではなく、シフェノトリンと同様、粘膜刺激性、肝機能異常等が発生する可能性もあるので、使用に際しては説明書を十分に理解した上で使用して下さい。
フェノトリン+αの対策~ベープ(メトフルトリン)による補助~
バルサン等による燻煙処理は、薬剤が細かな粒子状の粒になって室内に噴霧されることで効果を発揮します。
しかし、粒子状であるが故に得られる効果も大きい一方、1粒1粒の重さも重くなってしまいます。そのため、壁の裏などには効果が行き渡りにくいと言う問題があります。また、定期的にくん蒸をするにしてもどうしても空白期間が生じてしまいます。
壁の裏などに効果が期待でき、くん蒸の間隔の隙間を埋める方法として、一般にユスリカ(蚊)や小バエなどの防除に使うベープを使用して、ヒラタキクイムシの駆除を補助します。
具体的にはヒラタキクイムシの発生が確認された部屋に最近蚊よけ対策に多く用いられる「どこでもベープ未来」、「どこでもベープ未来Go!」などを設置します。
蚊よけでヒラタキクイムシが駆除できるのか?と思うかもしれませんが、これらの有効成分は、メトフルトリンというピレスロイド系の殺虫剤となっています。
ピレスロイド系薬剤を木材表面に塗布することで、ヒラタキクイムシの産卵抑制効果、及び羽化の際に壁面の薬剤に接触することによる羽化抑制効果も示されており(馬場, 2014)、濃度等の問題はあるものの、成虫による産卵を広範囲に阻止することに寄与できると考えられます。
類似した商品でも薬剤を重視して選択を
こうしてみてくると、ここで紹介していない類似した商品でも良いのでは?と考えられる方もいらっしゃるかと思います。しかし、ご自身で主成分を判断できる場合を除いては、できれば上記の商品の利用をお勧めします。例えば、類似した蚊よけ殺虫剤として「おすだけベープ」という商品などもありますが、こちらは非推奨です。
おすだけベープの有効成分はトランスフルトリンというやはりピレスロイド系の殺虫剤となりますが、甲虫類への殺虫効果(防除価)が低く、ヒラタキクイムシのような昆虫への効果が十分に得られない可能性があるためです。
各ピレスロイド系薬剤の殺虫効果は日本家庭用殺虫剤工業会の「家庭用殺虫剤概論Ⅱ」に示されています。
この他にもベープリキッドタイプなどの防虫剤もヒラタキクイムシへの殺虫効果が期待できます。
上記のタイプは、バルサンなどと異なり、ピレスロイド系の殺虫成分を霧状にして噴霧するのではなく、揮発成分として室内に飛散させます。こちらも薬剤は甲虫への効果も高いメトフルトリンとなります。ただし、油分が多く壁などを汚損する可能性もあるため利用には注意が必要となります。また、安定した薬剤の揮発が行われていないという指摘もあり、あくまで補助的または蚊よけとして使っていて家にあるのならば使用するという使い方が望ましいと思われます。
ヒラタキクイムシ用薬剤の巣穴への注入(エトフェンプロックス)
これについては、ヒラタキクイムシが大量に発生してしまい部材の交換が困難な状況となってしまった場合の対応としてフェノトリンによるくん蒸、メトフルトリンの利用を行った上で、追加的に実施するのが良いと考えます。
ヒラタキクイムシに対応した「キクイムシにも使える木部用シロアリ防除剤」という薬剤が市販されています。
こちらは、ヒラタキクイムシが羽化の際に開けた穴に注入することで、内部の幼虫や卵を直接駆除する為の薬剤です。
とはいえ、基本的には上記で挙げてきたピレスロイド系薬剤と類似した薬剤になっており、ピレスロイド様殺虫剤と呼ばれている成分、エトフェンプロックスが主成分となっています。
基本的にはピレスロイド系薬剤と作用機序に大きな違いはありません。
必ずしもこちらを使用しなくても、穴の数が少ないようであればゴキジェット等の先端が細いピレスロイド系殺虫剤を巣穴の内部に噴霧することで同様の効果が期待できるかと思います。ただし、ゴキジェットはイミプロトリンというピレスロイド系殺虫剤となっており、一般に「即効性」の高さが売りの薬剤となっています。ゴキブリを素早く殺すのに向いた殺虫剤です。対して、ヒラタキクイムシの幼虫の巣穴では、直接薬剤が掛からない場合に残効性によって後から幼虫がその部分を通過した際にも効果ができるのがエトフェンプロックスなど残効性のある薬剤の特徴です。数が多い場合は1本千円ていどですので、こちらの薬剤を使用することをお勧めします。
ただ、上記殺虫剤はあまり一般に売ってはいないですし、気が付いたのが夜などであればゴキジェット等でも問題ありません。何もしないよりもずっと良いです。
プロ用のヒラタキクイムシ用薬剤の巣穴への注入(非推奨:素人は絶対に使用しない!)
ヒラタキクイムシに対応したエバーウッドS-400という薬剤が市販されています。こちらの薬剤は、知識のない個人は使用すべきではない薬剤です。
ここで、この薬剤をご紹介する目的は、ネットで調べるとキクイムシ用として販売されておりだれでも容易に購入できてしまうため、誤って購入することがないよう警鐘の意味でご紹介してます。
こちらの薬剤成分はフェニトロチオンとアレスリンという殺虫成分を主成分としています。アレスリンは上記と同系統のピレスロイド系殺虫剤です。フェニトロチオンは薬剤名スミチオンの名前で農薬として広く普及している有機リン系農薬になります。
この薬剤をヒラタキクイムシが羽化して出てきた穴に対して注入することで内部に残っているヒラタキクイムシの幼虫を殺虫することができます。
ただし、このフェニトロチオン(スミチオン)は濃度を間違えば人間を死に至らしめることができる程度に毒性の高い殺虫剤となります。過去には死亡事故例もあり、安易に使用することは避けるべき薬剤である点には注意が必要です。
国際化学物質安全性カード(ICSC)においても「青少年、小児への暴露を避ける」と記載されています。
こちらの薬剤は専門業者が専門知識の上で使用する薬剤であって、素人が安易に屋内で使用すべき薬剤ではないと考えます。
ヒラタキクイムシ防除・駆除の為の殺虫剤選び
「安全な殺虫剤」は存在し無いことの理解と殺虫力
アフリカヒラタキクイムシを含めてヒラタキクイムシでは特殊な殺虫剤耐性は確認されていません。
そのため、一般に市販されている多くの殺虫剤であればヒラタキクイムシの殺虫効果が期待できます。
一方で、市販されている殺虫剤には高い殺虫効果=有害性があるものもあれば、殺虫能力はやや低いけれども、人体への影響も低いものあります。
ここで間違わないでいただきたいのは、「人間に無害な殺虫剤は存在しない」ということです。
日経トレンディに上記で示したおすだけベープの有効成分トランスフルトリンが「無害」かのような装った記事がありました。
記事中ではアース製薬の方が「殺虫剤に配合されているピレスロイド系は虫に特異的に働く成分であり、人を含む恒温動物にはほぼ作用しないため、ほとんど害がない。ただ、肌(粘膜、特に目や鼻)に対しては刺激がある場合もあるので、直接かかるとピリピリする人もいる」と記載はされていますが、タイトルには「24時間も効くのに、人間には無害?」としており、「?」を付けて問いを投げかけておきながら、本文中では「無害」と断定しないことで、様々な法律を狙った悪意ある記事がありました。
現在市販されている殺虫剤で「無害」なものは存在しません。そこで殺虫剤を選択する上で重要になるのが「有害性と殺虫効果のバランス」となります。
ヒラタキクイムシを殺虫するだけであれば、極端に強力な殺虫剤は必要ありません。
ヒラタキクイムシの殺虫に向けた殺虫剤選択
今回、ヒラタキクイムシについて色々と教えていただいた奥村防蟲科学株式会社の奥村氏から、「人畜影響と殺虫力のバランスに優れた有効成分」とそれを主成分とした殺虫剤をお教えいただきました。
市販されている殺虫剤には必ず主成分が書かれていますので、商品名やブランドイメージではなく殺虫剤の主成分で製品を選択して下さい。
そして、ヒラタキクイムシの成虫を殺虫する効果があるものとして液剤系の殺虫剤としては
- フェノトリン
- エトフェンプロックス
- シラフルオフェン
- ペルメトリン
の4つの有効成分のうちいずれかが含まれているものを選択するようにすると良いかと思います。
また、揮発タイプの殺虫剤であれば
- プロフルトリン
- メトフルトリン
のいずれかがの有効成分を含有するものであればヒラタキクイムシの成虫を殺虫する効果が期待できるとのことです。
(出典:奥村防蟲科学株式会社資料)
上記の有効成分を含んだ薬剤としては下記のような殺虫剤が市販されています。
(出典:奥村防蟲科学株式会社資料)
一条工務店のヒラタキクイムシ対策と対応
構造用合板の針葉樹合板への切り替え
最初でも書いたとおり、一条工務店の新築引き渡し住宅でヒラタキクイムシ被害が出ていることは事実です。
そのような中で、一条工務店は2017年よりヒラタキクイムシの対策を行っています。具体的にいつの施工からは定かではありませんが、一条工務店では構造用合板(構造壁や床下の木材)に従来の広葉樹合板ではなく針葉樹合板を採用するようになりました。
ヒラタキクイムシの生態で説明したように、ヒラタキクイムシ、特に被害が多い日本在来種のヒラタキクイムシとアフリカヒラタキクイムシはシロアリと異なり、広葉樹の辺材のみを食害するという習性を持っています。ケブトヒラタキクイムシ、アラゲヒラタキクイムシについては針葉樹合板も食害するという報告がありますが、被害の件数は在来種のヒラタキクイムシやアフリカヒラタキクイムシに比べると数は少なくなります。全ての種のヒラタキクイムシを防除できる防虫合板ほどの効果はありませんが、一条工務店の対策は現時点において可能な対策としては十分な対策であると言えます。
一条工務店の対応はその他のハウスメーカーよりも優れた対応なの?
こう聞くと、一条工務店のヒラタキクイムシへの対応が得に優れたものかのように誤解されてしまいそうですので、その点は否定しておきます。
一条工務店による針葉樹合板の採用は、他のハウスメーカーと比較して特段優れたものとまでは言えません。どちらかというと、他に追いついた、という感じです。
i-smartやi-cubeのようなツーバイ住宅を古くから建てている三井ホームも針葉樹合板を採用していますし、木材をふんだんに使用したスウェーデンハウスなどでも針葉樹合板を使用しています。また積水ハウスの住宅においても針葉樹合板が採用されています。住友林業などでは遅くとも2006年当時から針葉樹合板を採用しています。ダイワハウスでもやはり針葉樹合板を採用しています。ミサワホームでも構造用合板として針葉樹合板を採用しています。ローコストを売りにするタマホームでも針葉樹構造用合板が採用されています。
こうして確認してみると分かるとおり、一条工務店のヒラタキクイムシの対応は、2017年になってやっと他の大手ハウスメーカーと肩を並べただけであって、特段優れているわけではありません。
一条工務店は本当に針葉樹合板を採用しているの?
実際に一条工務店が構造用合板として針葉樹合板を採用している点については間違いがありません。
以前ちょっとした騒ぎになった一条工務店の上棟時の雨ぬれの記事をご覧下さい。
[kanren postid=”15094″]この記事で紹介した雨に濡れた床材を見ると、構造用合板として針葉樹合板が採用されていることが確認できます。
こちらは一条工務店で建築をされたお宅で上棟時に雨ぬれが発生して濡れてしまった床の構造用合板の写真です。
一方で、下の写真は2012年に建築された私の家ですが、構造用合板として広葉樹合板が使用されています。
我が家も上棟時に雨濡れがあったためシミがりますが、一目見て明らかに合板の種類が違いのがわかるかと思います。
針葉樹合板(ラーチ合板)と広葉樹合板(ラワン合板)の大きな違いは、その木目の有無にあります。針葉樹合板は木目がはっきりとしており、また節が多数存在しています。強度的には針葉樹合板は広葉樹合板と同程度かそれ以上に強いのですが、針葉樹合板はその見た目からあまり目に付く部分には使用されません。
一条工務店の床構造用合板が針葉樹合板になっていることは間違いありません。壁についてはどうでしょうか?
一条工務店の壁構造用合板は断熱材に覆われているため、あまり写真がないのですが、下の写真も上棟時の雨ぬれの際に紹介させていただいた写真です。こちらの写真には、赤い矢印の部分に針葉樹合板に特有の節があることが確認できます。このことから、壁構造用合板としても針葉樹合板が使用されていることが確認できます。
気になる方は構造見学会などで注意して確認してみてください。床や壁などに節の多い針葉樹合板が多数使用されていることが確認できます。ちょっと意地悪で営業さんに「なんで床や壁がこんなに節だらけなの?」と質問してみてください。多分、変なイイワケをすると思います^^;正しくはヒラタキクイムシ対策としてラワン合板からラーチ合板への切り替えが行われたためです。この辺が一条工務店の良くないところですが、営業さんなどに部材の変更とその趣旨が適切に伝達されていないケースが多いのです。。。かなり勉強されている営業さんであれば、ヒラタキクイムシ対策、または地球環境問題への対策と答えるはずです。。。そもそも断熱材がなんで黒ずんでいるのかも答えられる営業さんは少ない用に思います。こちらも炭素を混ぜるこおで廃棄時の環境対策が理由と思います。
一条工務店の家も針葉樹合板を採用したから安心?いいえ違います。
ここまで書いてきたように、一条工務店の住宅でもヒラタキクイムシ対策として構造用合板として針葉樹合板を採用するようになりました。そのため、被害の多いヒラタキクイムシが構造用合板を食害する可能性は相当に低くなっていると言えます。
では、この一条工務店等のヒラタキクイムシ対策は完璧で、今後はヒラタキクイムシの被害が発生しないか?というとそれは全く違います。
確かに構造用合板として針葉樹ご飯を採用したことによって、ヒラタキクイムシの被害は減少すると思われます。しかし、完全に防げるかというとそうではありません。
実際には構造用合板以外の部分では多くの広葉樹合板(ラワン合板)が使用されています。例えばクローゼットの内部は針葉樹合板ではなくラワン合板が使用されているかと思います。また、建材としてはラワン合板が使われている部分も残っています。
ラワン合板が使用されている部分がある以上、ヒラタキクイムシの被害を完全には防ぐことができないのです。そのためヒラタキクイムシが発生することがないと安心することなく、万が一ヒラタキクイムシが発生した場合には迅速な対応が必要であることは間違いありません。
ただし、従来は構造用合板が食害されることで、交換等が極めて困難な部分にヒラタキクイムシが産卵繁殖してしまうケースが見られましたが、今後は万が一ヒラタキクイムシが発生したとしても比較的交換が容易な(とは言ってもクローゼットまるごと外すのは1日がかりの作業ですが)範囲でのみに被害が限定されるため、従来よりもクレームが深刻化する事態は避けられると推察されます。
万が一ヒラタキクイムシが発生した場合の一条工務店の対応
これは私の観測範囲に限定されるものですが、一条工務店に関してはヒラタキクイムシが発生した後の対応としては比較的迅速な対応をしているように思っています。
具体的にはしろのすけさんのお宅がその一例ですが、クレーム後迅速に床の張りかえまで行われています。
小さな工務店等においては、ヒラタキクイムシ発生後の対応として床の張りかえを争って裁判にまで発展している事例があることを考えると、迅速な対応と言えるかと思います。問題がなければ確かに小さくても良い家を建てる工務店はたくさんありますが、多大な費用を要する補修に迅速に応じられる資金力だけは大手ハウスメーカーに一日の長があるように感じさせられます。
最終手段~訴訟、そして裁判~
裁判で納得のいく結果が得られることはありません
ここまで、具体的にヒラタキクイムシが発生した場合の対応方法を説明してきました。しかし、ヒラタキクイムシの問題の最後の課題として「責任の所在」をはっきりとさせることがあります。
ヒラタキクイムシの問題は、こじれると裁判に持ち込まれることになります。
先に小さな工務店が敗訴した特殊な事例を紹介させていただきました。そこで「勝訴」して得られた補償額は(たったの)250万円でした。
この保証を支払うことで、工務店側はヒラタキクイムシの問題に関して免責されることを意味します。家に住む人は250万円をもらって床を張り替えたり、防除対策をすることになりますが、現実的に1階部分の床を全面張りかえして、さらに防除までおこなって250万円で請け負ってくれる業者はまずないのではないかと思います。
裁判によって、勝訴しても憂さは多少晴れるかも知れませんが、訴えた側には実利はありません。
勝訴しても、ほとんどメリットがないと言うことの前に、大手ハウスメーカーを相手にした場合は勝訴すること自体が極めて困難です。
おそらく大半が、訴訟前に出してきた条件を下回る条件、すなわち顧客側に不利な条件で和解に応じざるを得ないことになると思います。
そのため、個人的な意見としては訴訟は全くお勧めしません。
私は色々な方からのご相談に応じる過程で訴訟に持ち込まれた事例も複数承知しています。一条工務店はもちろん積水ハウスやその他の大手ハウスメーカーが顧問弁護契約を行っている弁護士事務所も把握しています。それぞれ弁護士事務所は異なりますが、決して個人の弁護士などではなく、いずれも国内有数の規模を誇る弁護士事務所です。
こうした国内有数の規模を誇る弁護士事務所で弁護団を組まれた状態で、個人の弁護士と個人の顧客が相対することがどれだけ難しいことかは想像に難くありません。
資金力、情報量、経験のあらゆる面で勝ち目が乏しいのです。
決して、訴訟をしては行けない、ということではありません。
法治国家である日本においては、最後に納得がいかなければ裁判をする以外に選択肢はありません。
しかし、こと害虫の問題に関しては、裁判の仕組みと相性が悪すぎるのです。
まず、ヒラタキクイムシが「ハウスメーカーの責任で混入した」ということの証明が極めて困難です。
先の事例のように、ヒラタキクイムシがビニールシートの床面から出てきた場合は、引き渡し前に混入していた可能性が高いことは事実です。
しかし、そこに「故意性」はありません。例えば、トラックで運んでくる途中であったり、倉庫で保管している過程で産卵を行われた可能性があったとしても、倉庫で定期的なくん蒸が行われ、トラック等においてもビニールシートをかけるなどの対応が行われていれば、ハウスメーカーとしての十分な管理義務は果たしているわけですから、過失は薄くなります。ある意味「不運であった」とされて、損失額は小さく計算されることになるでしょう。。。
また、仮に杜撰な管理が行われていたとしても、同じ状況で運ばれた他の住宅でヒラタキクイムシの被害が発生していないのならば、杜撰な管理がヒラタキクイムシの発生を招いたとする因果関係は薄いとされ、仮に勝訴できたとしてもその損害額は極めて低く算定されることになるでしょう。。。。
害虫発生と管理体制の因果関係を全て「断定」することなどできるはずがないのです。
裁判は、証拠を踏まえて事実関係を判断していく作業です。害虫被害と裁判は極めて相性が悪いと言わざるを得ません。
以上の観点から、個人的な意見として、ハウスメーカーとの間で裁判を行うことは可能な限り避けるべきと思っています。
[kanren postid=”10644″]相互の協力と妥協の必要性
ヒラタキクイムシが家の中を飛び回るような状況に晒されたときに、自分たちが「妥協しなければならい」ということに怒りを覚える方も多いと思います。心情的には妥協などせず、すぐにでも何とかしろ!、という気持ちは当然のことと思います。
しかし、繁殖してしまったヒラタキクイムシへの対応は根気が必要で、1回の駆除や防除でどうにかできるものではありません。
先に上げた駆除・防除のための薬剤散布用薬剤についてはホームセンター等で容易に購入できますが、回数が増えれば出費も馬鹿にならないものと思います。これらの薬剤までハウスメーカーが用意してくれることは期待できませんから、自分たちで対応をせざるを得なくなります。もちろん交渉は可能ですし、将来の対応に備えて領収書を取っておく等の対策は必要です。
せっかく信頼して家を建ててもらったハウスメーカーがヒラタキクイムシのような気持ちの悪い被害に対してすぐに対応をしてくれなければ、最後は裁判に!という気持ちになることは当然のことです。しかし、裁判では勝ち目がないとまでは言いませんが勝ってもメリットがほとんどない以上、一定の妥協、具体的には薬剤散布の可能な限りの自己対応は行わざるを得ません。
ハウスメーカーに対しては、決してけんか腰になることなく、必要な部材の交換等については可能な範囲で協力をお願いしていくことが必要と思います。
一条工務店をはじめとしたいわゆる大手ハウスメーカーとしても、ヒラタキクイムシの被害は決して無視できるものではないはずです。そのため、私が知る範囲で最初の段階から無碍に対応されている事例は把握していません。
しかし、顧客の側がすぐにでも何とかしろと迫り、慰謝料も請求しようとすれば「これ以上は裁判でお願いします」となってしまい、手を引かれることになってしまいます。
ヒラタキクイムシの被害についてはハウスメーカーに手を引かれてしまうことはなんとしても避けるべき事態です。特に一条工務店のようにオリジナル建材が多いハウスメーカーの場合、第三者の工務店等に交換や補修を依頼した場合、部材そのものが手に入らなくなってしまう事態も考えられます。念のため補足しますと、明らかに施主側に問題があって一条工務店が補修対応から手を引いてしまった(客観的に見て企業としては手を引かざるを得ない)ケースも把握しています。このようなケースにおいても、施工は一条工務店が行えないと伝えてきたものの、オリジナル部材の提供のみ実費で応じるという対応をしていましたので、部材が全く手に入らなくなるという事態はあまり考えなくても問題ありません。
しかし、いずれにしてもハウスメーカーが施工を行ってくれなくなるとことで多くの別の問題も生じますので、顧客の側も納得は行かなくとも譲歩をせざるを得ないのが現実なのだろうと思います。。。。
ヒラタキクイムシが発生したら~最後の対応:そして最初にすべきこと~
きちんとしたプロに任せる
上記で挙げてきた対応は、個人が行える対応をできるかぎり科学的根拠に基づいてご紹介してきました。
しかし、ヒラタキクイムシの防除と駆除は容易なものではありません。また、その種類によっても方法が変わってきます。
そのため、上記の対応はあくまでプロの駆除業者に任せて駆除を行った後に追加的に行う対応方法または、プロの駆除業者が来る前の段階でその場でできる対応方法と考えて下さい。
ハウスメーカーは住宅を建てるプロですが害虫駆除のプロではありません。
今回、この記事をアップした目的は、決して一条工務店を批判することや、不安を煽ることは目的としていません。
そうではなく、ヒラタキクイムシという害虫が住宅に被害を及ぼすという事実を知ってもらい、その後適切な対応をすることで、被害を最小限に留めていただく事が目的です。
ヒラタキクイムシについてはかなり詳細にまとめてきましたが、ここまで読んでいただければその対応がかなり専門的になり個人で対応することが極めて難しいことはご理解いただけたかと思います。
そのため、最終的には害虫駆除の専門業者に任せることが必要と思います。
プロに任せる際にはいくつか注意が必要です。
ヒラタキクイムシの駆除はプロであっても難しいものです。
先に挙げた森林総合研究所の大和田氏のインタビューにもあったとおり、現時点においては、屋内で繁殖をしてしまったヒラタキクイムシを完全に駆除する即効的な方法はありません。
一方で、ネット上では、XX油だとかなんだかとか、怪しげな薬剤(とも呼べないようなもの)が多く販売されていたり、またはそれらの塗布等を請け負っている駆除業者も存在しています。
これはあくまで個人的な意見に過ぎませんが、科学的に根拠のない駆除方法は時間とお金の無駄になる可能性が高いと考えています。当然、そういったXX油だなんだでも駆除ができたという言い分があることは理解しています。しかし、その多くは「根気強い対応」の必要性を訴えているのが目に付きます。
確かにヒラタキクイムシの駆除には根気強い対応が必要です。ただ、そういった薬剤等は、おそらくはヒラタキクイムシの生態上数年で自然に発生が抑制されていくのをただ単に待っているだけのように思えてなりません。従来のヒラタキクイムシであれば極端な話、水を塗っていても「根気強い対応で」3年もすれば発生が抑制されていくのです。もちろん、水を塗ったからではなく、ヒラタキクイムシが新しい木材を好む習性のために、3年もすると発生しなくなってくることが理由です。決して水で駆除できたわけではありません。しかし、アフリカヒラタキクイムシは10年以上食害を継続します。そのため、このような時間とお金の無駄は避けるべきです。
あくまで、私の個人的な意見として何が言いたいかというと「天然由来成分」は怪しいと思った方が良いということです。
もちろん天然由来成分を全てを否定するわけではありません。何よりも現在最も広く普及していてかつ殺虫能力の高いピレスロイド系農薬はそもそも除虫菊という植物に含まれる菊酸を模倣した薬剤で、それこそ天然由来成分なわけですから。。。。
ただ、安全性を謳いすぎた天然由来成分の多くは、効果に「?」が付くというのがあくまで個人的な感想です。効果が信頼できる学術誌において論文等になっていて、しっかりと証明されたものであればそれは歓迎すべきものですので、そういったものがあれば是非教えて欲しいです。
ヒラタキクイムシへの対応は素早い対応が何よりも重要です。効果の期待できない対応をつづけることで被害を拡大させないようご注意ください。
信頼できると思われる問い合わせ先:奥村防蟲科学 株式会社
これは、しっかりと言っておかなければなりませんが、私は奥村防蟲科学からお金を受け取るようなことはしていませんし、また、紹介を依頼されたりも一切していません。そもそも、今回の件で私から問い合わせを行うまでは面識等も一切ありませんでした。
しかし、今回記事を書くにあたっては、奥村防蟲科学の代表である奥村氏とメールでやりとりをさせていただき、貴重なアドバイスを多くいただきました。
そもそも、なぜ私が奥村防蟲科学に連絡をしたかと言うと、一条工務店で家を建てた方から「ヒラタキクイムシ」という害虫の被害にあっているという連絡を受けて、自分なりに文献を調べて勉強をすることになりました。
そして、被害に遭われた方から実際にそこで発生しているヒラタキクイムシを送ってもらい、顕微鏡などを使ってそのヒラタキクイムシを観察しました。そこではじめてそれが単なるヒラタキクイムシではなく、アフリカヒラタキクイムシではないかという疑問を持つようになりました。
今回紹介した文献等を使ってアフリカヒラタキクイムシであるかどうかの同定を試みて、おそらくはアフリカヒラタキクイムシであろうとは推測はできましたが、やはり素人の限界で、アフリカヒラタキクイムシであるという確信を持つには至れずにいました。
また、今回自分なりに調べて欠かせていただいた対策が本当に正しいものであるのかどうかについても自信が持てずにいました。
ヒラタキクイムシに調べていく中で、多数の害虫駆除の専門業者の方々のサイトを見ましたが、私が調べてきた論文などの情報と照らし合わせたとき信頼性が高い情報発信を行っていたのが
でした。どんな会社かは全くわかりませんし、個人的な面識もありませんでした。
ただ、代表の奥村氏が書かれたWebサイトなどでは過去の論文をしっかりと引用されており、過去の研究成果に基づいた対応方法が示されており、全くの素人である私が論文を読んで得た知識であるとは言え、その知識と同じ内容が示されていたことから信用できると判断しました。
研究やそれに類するものは過去の研究を読んでいくと、自ずと同じ結論にたどり着くということを思っており、少なくとも上記の奥村氏の書いた内容は私がたどり着く結論と同じであったことから信頼できると判断しました。(私は害虫や住宅のプロではありませんが、論文を読む、調べるまとめるという事に関しては職業としてのプロに該当します。)
そのような中で、今回私が分からなかったことなどを含めて、メールで問合せをさせていただいたところ、非常に具体的、専門的に極めて詳細な情報やアドバイスを下さいました。
シロアリ・害虫駆除業者の大半は真面目な業者であるのかもしれませんが、残念ながらかなりの数の詐欺まがい業者が含まれているのも事実です。
そして、それらの業者をホームページの情報や電話帳を調べただけで判別することは極めて難しいことと思います。
これは若干の後日談ですが、2年近く前にこの記事を書いて、奥村氏とやりとりをした後、ネズミ・コウモリの頃だったと思いますが、一条工務店のお客様相談室にもヒラタキクイムシの被害についての情報も提供させていただきました。
そうしたところ、お客様相談室の方から「さすけさん、もしかして奥村防蟲さんに連絡をされましたか?」と聞かれました。話を伺ってみると、一条工務店としても専門家を探して奥村防蟲に駆除方法をアドバイスいただくために問合せをされており、その際に「一条工務店のお客さんでブログを書いているという方から以前連絡があった」という話があったそうなのです。。。
その際、一条工務店としても専門家を国内で探した結果として奥村防蟲科学にたどり着いたとのことでした。
素人の私が探しあてたというだけでは、奥村防蟲科学が本当に知識のある問い合わせ先であるのかは言い切れませんが、全く独立してそれなりのプロを抱えているであろう一条工務店も奥村防蟲科学に問合せをしていたということは、おそらく本当に国内では奥村防蟲科学が最もヒラタキクイムシやその他の害虫防除について高い水準にあるだろうと思っています。
奥村防蟲科学では初回の無料相談も受け付けていますので、実際に被害に遭われている方は奥村防蟲科学に問合せをしてみることをお勧めします。
また、実際にヒラタキクイムシと思われる害虫が発生しているようであれば、1検体1万5千円でメールによる昆虫の同定とその後のアドバイスをしていただけるサービスを提供しています。アフリカヒラタキクイムシの同定が困難な場合にはお願いしてみると良いかと思います。
会社は大阪にありますが全国にで駆除にも対応をしていただけるとのことです。
値段は20万円前後になるようです。このあたりはハウスメーカーに相談をいただくのが良いかと思います。
今後、気象条件の変化、住宅環境の高断熱化、ホルムアルデヒドの少ない住宅と言った様々な変化によってアフリカヒラタキクイムシなどのこれまでは大きな被害を及ぼしてこなかった害虫が住宅に新たな危害を加えることが多くなってくるかと思います。
この記事がそのような被害にあわれてしまった方に少しでもお役に立てれば、そして願わくば被害を防ぐことに役立てれば嬉しく思います。
ヒラタキクイムシに関する参考資料等
ヒラタキクイムシに関して多くの知見を有するであろう現役の研究者
以下に、論文を拝見させていただく中で、ヒラタキクイムシの生態及び防除に関して高い知見を有し、かつ、現在も研究活動を継続的に行われている専門家を挙げさせてただきます。
企業の方については、業務として委託を受けることが可能な可能性もありますが、大学及び公的研究機関研究者の方は、日常の研究・教育業務もあります。
そのため、一般の方から直接問合せを行うのではなくハウスメーカー等が自社の知見では解決できない問題に対して専門家に対して問合せを行う必要が出た場合や、業務として委託可能な裁判準備のための主の特定作業等特殊な作業が必要となった場合の依頼に限られるのが良いかと思います。
- 岩田隆太郎氏 日本大学生物資源科学部森林資源科学科 教授
- 吉村剛氏, 京都大学生存圏研究所生存圏開発創成研究系 教授
- 大村和香子氏 森林総合研究所木材改質研究領域長
- 馬場庸介氏 住化エンビロサイエンス株式会社
- 森満範氏 北海道立総合研究機構 森林研究本部林産試験場
大村氏が在籍する森林総合研究所については、公的機関として研究所のルールに基づいて技術指導を依頼することも可能です。(森林総合研究所技術指導について森林総合研究所技術指導について)
北海道地域であれば、林産試験場にて技術相談窓口が開設されていますのでこちらから問いあわせを行う事が可能です。
参考文献
今回の記事を書くにあたっては下記の文献を参考とさせていただきました。
1970年以前
- Altson, A. M. “ON THE YOUNG LARVAE OF LYGTUS BBUNNEUS STEPH.”Annals of Applied Biology 9.3‐4 (1922): 187-196.
Fisher, Ronald C. “Timbers and their condition in relation to Lyctus attack.”Forestry 2.1 (1928): 40-46.
- 森八郎. “90 ヒラタキクイムシ被害の最近の傾向と防除対策 (昭和 37 年度日本農学会大会分科会).” 日本応用動物昆虫学会大会講演要旨 6 (1962): 18.
- 布村昭夫,”ヒラタキクイムシの生態と防除(1)”,北海道林産試験場報告(1968a)
- 布村昭夫,”ヒラタキクイムシの生態と防除(2)”,北海道林産試験場報告(1968b)
- Smith, V. K. “Lindane controls Lyctus powder-post beetles during airdrying of rough ash lumber.”(1968) : J. econ. Ent. 61, 323-324
- 尊田望之. “北九州で定着が確認されたケブトヒラタキクイムシ.” 昆蟲 37.4 (1969): 395-396.
1970年代
- 海野登久子. “61 ヒラタキクイムシの生態と防除に関する研究.” 衞生動物 25.4 (1975): 322.
- 森八郎. “わが国に生息するヒラタキクイムシ科 Lyctidae の害虫とヒラタキクイムシの Mass culture について.” 木材保存 1976.5 (1976): 11-23.
- 伊藤高明, 廣瀬忠爾. “ヒラタキクイムシ Lyctus brunneus STEPHENS の選択産卵, 特に炭水化物の及ぼす影響.” 日本応用動物昆虫学会誌 22.2 (1978): 68-73.
- 森八郎. “わが国に生息するヒラタキクイムシ科 Lyctidae の害虫 1 種ケブトヒラタキクイムシ Minthea rugicollis Walker 追記.” 木材保存 1978.12 (1978): 27-28.
- 森八郎. “ケヤキヒラタキクイムシ Lyctus sinensis Lesne, わが国における最近の分布圏拡大 (速報).” 家屋害虫 1 (1979a): 77.
- 森八郎. “ヒラタキクイムシ, 最近の大発生と防除対策 (ヒラタキクイムシ科).” 家屋害虫 1 (1979b): 34-42.
- 森八郎. “わが国に生息するヒラタキクイムシ科 Lyctidae の害虫 1 種ケブトヒラタキクイムシ Minthea rugicollis Walker 追記 (ヒラタキクイムシ科).” 家屋害虫 3 (1979a): 74-75.
- 森八郎, et al. “X 線写真によるヒラタキクイムシの生態観察法 (ヒラタキクイムシ科).“家屋害虫 3 (1979b): 60-73.
- 伊藤高明, and 広瀬忠爾. “数種殺虫剤のヒラタキクイムシ卵, 幼虫および成虫に対する効果.” 日本応用動物昆虫学会誌 23.1 (1979): 46-48.
1980年代
- 野平照雄. “ヒラタキクイムシの飼育方法と薬剤防除効果について.” 岐阜県林業センタ-研究報告 (1980): p19-38.
- 岩田隆太郎. “ケブトヒラタキクイムシおよび本邦未記録種アフリカヒラタキクイムシの発生例.” 家屋害虫 13 (1982): 60-63.
- 西本孝一. “< 総説> 防腐・防虫合板の研究開発の動向.” (1983).
- 伊藤高明. “B-14 ヒラタキクイムシ Lyctus brunneus の選択産卵に及ぼす各種物質の影響 (行動学・配偶行動).” 日本応用動物昆虫学会大会講演要旨 27 (1983): 41.
- 岩田隆太郎. “日本産ヒラタキクイムシ科の分類および各種の分布と生態特性について (甲虫, 森八郎博士追悼号).” 家屋害虫 35 (1988): 45-54.
- 岩田隆太郎. “奈良正倉院のアフリカヒラタキクイムシ.” 家屋害虫 11.2 (1989): 116-117.
1990年代
- 岩田隆太郎. “ヒラタキクイムシの生態と飼育:(1) 生態.” 家屋害虫 12.2 (1990): 143-148.
- 岩田隆太郎. “ヒラタキクイムシの生態と飼育:(2) 飼育法.” 家屋害虫 14.1 (1992): 28-41.
- 土居修. “北海道におけるヒ ラタキクイム シ対策.”(1990)
- 岩田隆太郎. “ヒラタキクイムシ科の屋外発生 .” 家屋害虫 13.1 (1991): 22-24.
- Misako Kawashima, et al. “Application of fenitrothion microcapsule for insect-proof plywood.” Journal of Pesticide Science 16.1 (1991): 41-46.
- 野淵輝. “家屋内で発見される木材害虫とその疑いのもたれる昆虫類 (III).” 木材保存18.4 (1992): 190-200.
- 野淵輝. “乾材害虫と屋内で発見される昆虫 : 同定、生態、被害、防除”1993
- 岩田隆太郎, and 池田作太郎. “アメリカヒラタキクイムシの日本国内における初めての発生例.” 家屋害虫 18.2 (1996): 95-98.
- 田中和夫, 山野倫子. “ヒラタキクイムシ類 4 種の国内採集記録.” 家屋害虫19.2 (1997): 84-85.
2000年代
- 宮ノ下明大, et al. “家屋内におけるヒラタキクイムシとシロオビカッコウムシの発生および貯蔵食品害虫に対するシロオビカッコウムシ成虫の捕食実験.” 家屋害虫 26.2 (2004): 123-127.
- 大村和香子, 桃原郁夫. “保存処理建材から発生する室内空気汚染物質 (第 1 報) 接着剤混入保存処理合板からの VOC およびアルデヒド類の放散量.” 木材保存31.3 (2005): 102-106.
- 平野雅親, 竹林禎浩. “シフェノトリン MC 剤のヒラタキクイムシに対する効果.“木材保存 31.1 (2005): 20-23.
- 森満範, “ヒラタキクイムシ類による被害の実態”, 林産試だより2008年9月号(2008)
- 古川法子, 吉村剛, 今村祐嗣. “ヒラタキクイムシ類による家屋被害調査-加害種および発生地域の特定.” 木材保存 35.6 (2009): 260-264.
- 大村和香子. “乾材害虫および乾材シロアリに関する最近の知見.” 家屋害虫 31.1 (2009): 19-26.
2010年以降
- 後出秀聡. “文化財の二酸化炭素殺虫処理の実務と留意点.” 文化財の虫菌害 59 (2010): 12-18.
- 馬場庸介. “表面処理用木材保存剤の動向と展望.” 木材保存 37.3 (2011): 104-110.
- 奥村敏夫. “一般住宅で発見される昆虫類について.” 木材保存 38.3 (2012): 105-110.
- 馬場庸介, 相奈良賢治. “ヒラタキクイムシ (Lyctus brunneus) の防除方法の開発-産卵誘導方法の検討および殺虫成分による産卵・孵化抑制効果の評価.” 木材保存 40.2 (2014): 64-69.
- 吉村剛.”<総説>乾材害虫と屋内で発見される昆虫 : 同定、生態、被害、防除”,京都大学生存圏研究所(2016), 12巻1-10.
Webサイト
- 山梨県衛生環境研究所ヒラタキクイムシ資料
- イカリ消毒オンラインショップ(ヒラタキクイムシ、アフリカヒラタキクイムシ)
- 日本合板工業組合連合会 合板種類
- ケンプラッツ、ヒラタキクイムシの食害で工務店が敗訴(2011/2/11)
- 日経ホームビルダー 2008/05号 “ヒラタキクイムシの食害で代金4千万円を顧客に返還“
- 日本複合・防音工業会 ”ヒラタキクイムシ虫害マニュアル”
- ミサワホーム総合研究所資料
- 害虫駆除の専門商社である鵬図商事のWebサイト
- 奥村防虫科学株式会社
各都道府県による情報
他多数。北海道から沖縄まで日本全国どこでもヒラタキクイムシの被害は発生しています。