こんばんは。さすけです\(^o^)/
前回の一条工務店耐水害住宅の話題を書いた際に、一条工務店のロゴを冠した蓄電池がチラ見えしていたことをご紹介しました。その後、すぐに一条工務店がお客さんに対して蓄電池のキャンペーン開催を周知したとのことで、多くの方から一条工務店の蓄電システムについての情報をお寄せいただきかなり詳細が分かってきました。
結論から言いますと、もし今契約をするならば、蓄電池+太陽光のセットを導入しないという選択肢はない、というほどに異常とも言える低価格で太陽光と蓄電池が販売されるプランとなっています。
さらに、今回の蓄電池キャンペーンで、一条工務店が今後の太陽光発電について大きな方向転換、そして非常に面白い、設置する顧客にはほぼメリットしかない提案をしていることにも気が付きました。
一例を挙げると、一条工務店の蓄電池セットのソーラーパネルは搭載量13.75kWでの提案となっています。一般にソーラーパネル搭載量が10kW未満の場合は、2019年度時点で売電期間10年売電単価24円/kWhとなるのに対して、10kW以上の場合、売電期間が20年になる代わりに売電単価は14円/kWhまで下がってしまいます。ここまで下がると、10kW以上乗せない方が「お得」になるケースも出てきます。さらに来年になれば、間違いなく10kW以上搭載する方が収益が減少してしまいます。そのような中で来年5月以降上棟者を対象とした今回のキャンペーンで一条工務店は13.75kWというパネル搭載量を押しだしてきたことで、10kW以上にするか未満にするか悩まれる方も多い様に思いました。
しかし、実際にはソーラーパネルを13.75kW搭載しても売電単価は10kW未満を維持するというトリッキーな提案をしているのです。これはかなり挑戦的な提案ですが、極めて合理的な提案でもあります。どういうことかというと、パネルを10kW以上搭載しても、パワコンの出力を10kW未満に抑えてしまえば売電単価10kW未満を実現することができるという仕組みを使っています。
一条工務店の新しい蓄電システムについては2回にわけて記事を掲載します。1回目の今回は「一条工務店の蓄電システムの価格は本当に安いのか?」という観点で分析を試みます。次回第2回は「蓄電池設置による収益性」という観点で分析を行います。
ただ、もう分析するまでもなく、一条工務店の太陽光+蓄電システムは超低価格となっており、現時点では採用をしないという選択肢がないことだけは繰り返しておきます。
最初に言っておきますが、今回は特に長いです^^;ただ、今回の一条工務店の蓄電システムは夢発電提供開始以来の大きなターニングポイントになるもののように思っており、現時点で分かっていることをできる限り詳しく書かせていただきます。これから一条工務店で蓄電池の提案があったかたは是非ご一読ください。
教えてください!現時点で蓄電パッケージの価格はソーラーパネル13.75kW搭載時に16.8万円/kWであることは分かっていますが、その他の容量を選択した場合にどのような価格設定になっているかおわかりになる方がいらっしゃいましたら是非教えてくださいm(_ _)m
- 1 一条工務店製蓄電池はどのようなものか?
- 2 一条工務店製蓄電池の価格は安いのか?高いのか?
- 3 一条工務店はソーラーパネルでぼったくっているのでは?
- 4 一条工務店製のソーラーパネルや蓄電池は粗悪品なのではないか?
- 5 今回の一条工務店の蓄電池は「キャンペーン」であり、ごく僅かの人しか当選しない詐欺的な商法では?
- 6 来月以降契約では蓄電池は設置できなくなるのか?
- 7 一条工務店の住宅はどこに向かうつもりなの?性能の追求個人的大ヒットの全電源対応
- 8 でも25万円ものオプション費用を支払う価値あるの?導入は10年後で良いのでは?
- 9 一条工務店はなぜ蓄電パッケージを販売するのか?
- 10 今回の太陽光&蓄電システムの大きな不安要素
一条工務店製蓄電池はどのようなものか?
一条工務店の「太陽光&蓄電池パッケージ」キャンペーンの内容
一条工務店では、2019年10月31日までの申し込みを受付を行った新規契約者を対象として、一条工務店オリジナル太陽光発電システム13.75kWを設置した場合、ソーラーパネルを16.8万円/kWで提供し、蓄電池は無償で付けるというキャンペーンを行っています。
キャンペーンに申し込まれた場合、上棟が来年5月以降の上棟となるという制約があります。また、エリア内で20組限定のキャンペーンとなっています(後で解説するように実質制限なしです)。
蓄電池の容量:リン酸鉄系リチウムイオン蓄電池7kWh
今回一条工務店がソーラーパネルとセットで販売する蓄電池の容量は7kWhとなっています。
蓄電容量としては、現在市販されている家庭用定置型蓄電池のサイズとしては平均的かやや大きめといった感じです必要十分なサイズと言えます。
例えば私が自分で取り付けた蓄電池は、NEC製の5.5kWh(10年リースで60万円、当時としては激安の部類)となっていますが、通常の停電であれば生活を補助するには十分な容量となっています。私は趣味である海水魚とサンゴ飼育用水槽の非常用電源として使用しています。海水魚は万が一停電でヒーターやクーラーが止まってしまうと全滅してしまいますからね。。。
詳細は最後で書きますが、一条工務店が採用しているリチウムイオン蓄電池はリン酸鉄系と呼ばれるリチウムイオン蓄電池となっています。
また、この他にもパワコンが新しいモデルとなり、従来はせっかく大容量のソーラーパネルを搭載していても停電時は非常用コンセントから1500W×2系統しか電力を取り出せませんでしたが、全電源対応として、停電時も太陽光発電システムと蓄電池の両方から住宅全体に電力が供給されるシステムが採用されています。これ、私が知る限り50万円以上するシステムです。。。
その上で、冒頭に書いたように13.75kWのソーラーパパネルを搭載しながら10kW未満の割高な売電単価を採用できる仕組みの導入、そして高効率なソーラーパネルを採用することでおそらく35坪程度の住宅でも13.75kWのソーラーパネルが搭載できるようになっています。仕様的にはこれ以上ないほどの仕様となっているように思います。
めっちゃ欲しい。。。
一条工務店製蓄電池の価格は安いのか?高いのか?
一条工務店製蓄電池価格は安いを通り越して詐欺かと思うほど安い
家庭用蓄電池というとなんとなく100万円以上するイメージを持たれている方も多いかと思いますが、蓄電池の価格はピンとこない方も多いかと思います。
さらに、一条工務店の今回の蓄電池販売はソーラーパネルとセットとなっており、ただでさえわかりにくい蓄電池価格がさらに分かりにくいものとなっています。
結論から言うと、一条工務店の蓄電池価格は「安いを通り越して詐欺かと思うほどに安い」と言えます。
それでは具体的に一条工務店の蓄電池価格を見てみることにしましょう。
一条工務店が提供する蓄電池の価格:24万7500円(税抜き)
一条工務店の蓄電池はソーラーパネルの販売とセットになっており、蓄電池の単体販売は行われていません。
今回、10月末までのキャンペーンとはなっていますが、蓄電池セットのソーラーパネル単価はソーラーパネル13.75kW搭載時に16.8万円/kWとなっています。ソーラーパネルの搭載量に応じてパネル単価が変動するよう設定されており、パネル搭載量が減少するとパネル単価が上昇する仕組みとなっています。
一方で、蓄電池なしのソーラーパネル単価は直近で10kW以上のソーラーパネルを搭載した場合15万円/kWで販売されていました。そのため、仮に13.75kWのパネルを搭載した場合、パネル価格は税抜き206万2500円となります。これに対して、今回蓄電池付きのソーラーパネルの単価は1kWあたり16.8万円ですので、231万円となります。両者の価格差は24万7500円となり、これが蓄電池の価格とみなすことができます。
蓄電池は容量によって価格が変わりますのでこれだけでは安いか高いかはわかりません。
捉え方によっては25万円のオプションとも見なせるので、高いな~と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。
一条工務店の蓄電容量は7kWh、容量単価35,300円!?
先ほど述べたように一条工務店の蓄電池は容量が7kWhとなっています。価格と容量がわかれば蓄電池の容量単価、すなわち1kWhの蓄電容量あたりの価格を計算することができます。
蓄電容量単価は
247,500円÷7kWh=35,357円/kWh
おおよそ、3.5万円/kWhとなります!????え?35000円/kWh???となった方もいらっしゃるかもしれません。
はい。3万5千円/kWhなのです。。。蓄電池の価格をご存じの方であれば、この価格がどれだけ異常な価格かおわかりになると思います。
ぶっちゃけ、頭おかしいの?と思うほど激安なのです。むしろ安すぎて詐欺を疑うべき価格なのです。
国の定める2020年蓄電容量単価目標は9万円/kWh
現在、日本政府は蓄電池の普及を目指し低価格化を促進する政策を行っています。
下の画像は経済産業省の委員会資料となっていますが家庭用蓄電池の2020年度目標価格が示されています。
経済産業省の資料によれば、国内における家庭用蓄電池では2020年度までに9万円/kWh以下の価格水準にすることを目標として掲げていたことが分かります。
7kWhの蓄電池であれば63万円程度が2020年の目標価格となっています。
それに対して、一条工務店の蓄電池単価は3.5万円/kWhとなっており、政策目標値の半額を通り越して、6割引状態となっているのです。ちなみに、現行の国内メーカー製蓄電池の価格は1kWhあたり15万円~20万円弱が相場ですので、そこと比べると一条工務店の蓄電池価格は明らかに異常な価格となっています。
政策目標がおかしいのか?それとも一条工務店がおかしいのか?で言うと、明らかに一条工務店がおかしいです。
黒船来襲と恐れられているテスラでさえ7.3万円/kWh
日本の家庭用蓄電池の価格目標は日本企業に配慮したものであることは間違いありません。そのため、やや高めに設定されている可能性は否定できません。
そこで一条工務店の蓄電池の安さを示すもう一つの資料をご覧ください。
2019年10月16日付けの日本経済新聞で、日本市場にテスラ社のパワーウォールが参入することが報道されました。
テスラと言えば、PayPalマフィアのボスでもあり、また、民間企業でありながら火星探査や移住計画までを掲げるスペースX社の創業者であるイーロン・マスクが創業した企業の一つです。
(出典:Wikipedia「イーロン・マスク」)
このイーロン・マスクが率いるテスラ社が破格の値段設定で家庭用蓄電池部門に参入したのが「パワーウォール」です。
(出典:テスラ社ホームページより)
このテスラ社のパワーウォールが2020年日本市場にも投入されることが報道されたのです。報道によれば、パワーウォールの蓄電容量は13.5kWh、日本における価格は99万円という圧倒的な低価格によって市場を牽引することが期待されているそうです。
日本の家庭用定置型蓄電池市場に黒船として襲来したテスラ社のパワウォールの蓄電容量単価は
99万円÷13.5kWh≒7.3万円/kWh
となっています。これが世界の潮流における「圧倒的な低価格」の水準となっています。
ちなみにテスラ社のパワーウォールは設置に別途工事費が発生しますが、一条工務店は新築時に設置が条件となっているのでここでは扱いません。
テスラ社のパワーウォール7.3万円/kWhに比べて、一条工務店の蓄電池は3.5万円/kWh、世界的にも圧倒的な低価格を誇るテスラのさらに半額という価格設定が一条工務店の蓄電池の価格なのです。
私がバカみたいに安い、という表現をすることもご理解頂けるかと思います。本当に、むちゃくちゃな価格設定となっているのです。
ここまで安いと、「なぜ安いのか?」が気になってきます。いくつかの可能性について検証をしてみましょう。
一条工務店はソーラーパネルでぼったくっているのでは?
蓄電池価格をソーラーパネル価格に転嫁しているだけではないか?
今回の7kWhの蓄電池は仮に世界的に低価格であることから販売が伸びているテスラの蓄電池と同じ(7.3万円/kWh)であったとしても、蓄電池価格は7.3万円/kWh×7kWh=51.1万円となります。
現行販売される定置型蓄電池でこれ以上安いものはほぼ存在しないかと思います。
それに対して一条工務店の蓄電池は24万7500円となっており、世界最安値クラスの蓄電池と比較しても半額以下という極めて異常な価格設定となっています。
なぜこれほどまでに蓄電池を安く設定できているのかという疑念が生じます。可能性として最も濃厚なのは、ソーラーパネル価格への転嫁が行われているという疑いです。
すなわち、本来市場で1kWのソーラーパネルあたり10万円で販売されているものを16.8万円で販売すれば、差額の合計(13.75kW×6.8万円/kWh)は93.5万円となり、蓄電池価格を賄うことができるといった仕組みです。
もしこのような仕組みとなっているのならば、それは見せかけの低価格に過ぎず驚くに値しません。
このようなことになっていないことを確認するためには、現在市場で流通する平均的なソーラーパネルの価格を知っておく必要があります。
一条工務店のソーラーパネルはそもそも市場価格の半額以下という異常
一条工務店では、従来10kW以上のソーラーパネルを設置する場合、ソーラーパネル価格15万円/kWで販売していました。今回と同様に13.75kWのパネルを搭載した場合、パネル価格は税抜き206万2500円となります。
これに対して、今回蓄電池付きのソーラーパネルの単価は1kWあたり16.8万円ですので、231万円となります。両社の価格差は24万7500円となり、これが蓄電池の価格として転嫁されていることは既に書かせていただいた通りです。
仮に一条工務店のソーラーパネル価格が、他のメーカーのソーラーパネル価格に比べて高いならば一条工務店はソーラーパネル価格を高く設定することによって蓄電池価格を割安に見せている、すなわちソーラーパネルでぼったくって、そこで得たお金を蓄電池価格を割安に見せるのに使っているだけ、ということになり、異常とも言える一条工務店の蓄電池の価格の安さの理由を示すことができます。
それでは、世の中のソーラーパネル価格は一般にいくらくらいなのでしょうか?
これを調べるにあたっては世の中で販売されるソーラーパネルの単なる平均価格を調べるだけでは不十分です。
一般に既築住宅にソーラーパネルを設置するのに比べて、新築時にソーラーパネルを設置する方が割安となっています。新築時であれば住宅を建築する際の足場を使ってそのままソーラーパネルを設置することが可能であるなど、工事費用を安く抑えることができるためです。
そのため、既築の住宅と新築の住宅を分けて比較可能なソーラーパネル設置費用を知る必要があります。これについては経済産業省の委員会が取りまとめた資料が公開されていました。
下がそのグラフになります。このグラフで黄色い線で示されたのが「新築時の太陽光発電システム導入における1kWあたりの単価」となっています。
出典:経済産業省資料「平成 31 年度以降の調達価格等に関する意見(案)」より
このグラフから、国が調べた範囲では新築時にソーラーパネルを設置した場合、2018年度時点でその費用は1kWあたり32.2万円/kWであったことわかります(゜д゜)高いですね。。。
さらに、このグラフでは上位25%、すなわち一般よりも割安でソーラーパネルを設置した上位25%の平均値も示されており、その費用は26.73万円/kWであったと示されています。
これに対して、一条工務店のソーラーパネルの単価は、以前のパネル単価で15万円/kW、蓄電システム込みでも16.8万円/kWでした。。。。平均値のほぼ半額となっていました。
この統計が2018年度時点のものであり、2019年時点ではもう少し安くなっているとしても過去の推移を見る限り、平均で30万円、上位25%の平均でも25万円/kWあたりが現状のソーラーパネルの価格帯と捉えてほぼ間違いないかと思います。
このことから、蓄電池なし15万円/kW、蓄電池付き16.8万円/kWのいずれであったとしても、一条工務店のソーラーパネルの価格は、極端に安く設定されていることがわかります。
このことから、一条工務店がソーラーパネルを市場価格よりも割高に設定することで見かけ上蓄電池価格を安く見せているだけ、という疑念は完全に間違っていることがわかりました。
むしろ、蓄電池が安すぎるだけではなく、一条工務店が提供するソーラーパネルも安すぎると言って良い価格帯となっていることがわかりました。。。
一条工務店製のソーラーパネルや蓄電池は粗悪品なのではないか?
安さの理由は、「粗悪品」だからではないか?
一条工務店が提供するソーラーパネル、また、蓄電池はいずれも現在の市場価格から見る限り極端に安く、もっと言えば安すぎると言っても良い価格となっていることが分かりました。
ソーラーパネルも市場価格の半額近く、蓄電池に至っては、市場価格の3分の1以下という価格設定はあまりにも安すぎるため、「性能」への疑義が生じます。
要するに、めちゃくちゃな粗悪品をあたかも「割安」であるかのように装って提供してるだけではないのか?という疑念が生じるのです。安物買いの銭失いです。
ソーラーパネルが粗悪品でないことは確認済
まず、ソーラーパネルについてはあまりその疑念はないと思っています。現在とパネルの仕様はことなりますが、我が家に設置されているソーラーパネルは色々と細かくはありますが、無難に発電はしています。
2013年4月1日~2019年3月31日までの6年半の総発電量は69,388kWhでした。これを6年で割って1年あたりの発電量に換算すると平均11,565kWh/年の発電であったことがわかります。
我が家を建築したときに一条工務店が作成したソーラーパネルの発電シミュレーションでは年間9564kWhとされていましたので、現時点では一条工務店のシミュレーションを約20%上回る性能を見せており、気象の影響等々ありますが、少なくとも粗悪ということはないことが分かります。
現在の一条工務店ソーラーパネルは米国パナソニック工場製?
私が一条工務店で家を建てて、ソーラーパネルを設置した2012年当時の一条工務店製ソーラーパネルは無難な発電量を示しており、粗悪品であると言ったことはなかったことがわかりました。
ただ、当時は多結晶系と言うソーラーパネルでしたが、現在は単結晶系というより「高効率」とされるパネルを採用しており、現行のソーラーパネルは粗悪品なのではないかという懸念は残ります。
そもそも、一条工務店が太陽光発電システムを一条工務店のフィリピン工場(HRD)で生産していることは知られていますが、一条工務店には太陽光発電システムの基盤部品である「セル」を製造することはできないと考えています。セルというのは下の写真の黒い基板部分のことを指します。
このセルの生産ではシリコンウェハーを作る必要があることから、半導体工場と同レベルの技術が必要となっています。また、セルを生産するための工場設備には数千億円単位の投資が必要であるのが一般的であり、売上高4千億円の一条工務店ではその投資をすることはさすがに難しいと推察されます。そのため、一条工務店はこのセルをどこからか購入してこなければならないことになります。フィリピン工場では購入しててきたセルをモジュールに組み上げる工程を担っていると考えるのが合理的です。
しかし、これまで一条工務店がどこのセルを作っているかは不明でしたが、これを明らかにする報道が2019年5月にありました。
2019年5月31日にロイター通信が「パナソニック、テスラ協業の太陽電池をフィリピンに出荷」という報道を行いました。
こちらの「フィリピン工場」とは一条工務店フィリピン工場、正式名称HRDシンガポールのことを指しています。
ロイターによれば「セルの出荷先は、H.R.D.シンガポールという企業が保有するフィリピン工場。この工場は、一条工務店向けに太陽光パネルを含む住宅部材を生産している。」と報じられており、一条工務店フィリピン工場(HRD)がパナソニックとテスラが協業する工場で生産されたセルをフィリピンに輸入し、そこでモジュールを加工し、出来上がったソーラーパネルを日本に輸出しているということが示唆されます。
一条工務店が採用するソーラーパネルセルが、パナソニック・テスラ連合系のセルだけを使っているのかは不明ですが、少なくともこれらの工場で生産されたセルと同レベルのセルが採用されていることはほぼ間違いなさそうです。
よって、現在国内で設置されている一条工務店製のソーラーパネルはパナソニックとテスラが共同出資した米国工場で生産されたものを使用しており、いわゆる第三国で生産された品質の悪いセルを作っているということはほぼないと断言できるかと思います。
なぜ一条工務店はパナソニック製のソーラーセルを使っていることを宣伝しないのかというと、おそらく、パナソニックとの供給契約において、一条工務店はパナソニック製のセルを使っていることは宣伝してはいけないことになっているのではないかと思います。というのも、パナソニック自身も国内でソーラーパネルを独自に展開しており、一条工務店が極端な低価格でパネルを提供しながらパナソニック製を宣伝に使うと、パナソニックの国内販売に問題が生じてしまうためです。
こうしたことから、一条工務店自身はセルの購入元を明らかにせず、「フィリピンの自社工場」で生産し、一条工務店のフィリピン工場の国内法人である日本産業製のソーラーパネルとして供給しているという構造になっていることが伺えます。
いずれにしても、ロイターの報道を見る限りは、一条工務店が採用している太陽光発電セルは世界的に見てもしっかりとした工場で製造されたものが採用されていると考えて良いかと思います。よって、現行の一条工務店ソーラーパネルが粗悪品である可能性は極めて低いと言えます。なぜパナソニックから安く供給を受けられるかというとここにはパナソニック社内の問題があるようですが、長くなるので割愛します。
以上のことから、一条工務店のソーラーパネルは品質上は問題がないにも関わらず、新築時のソーラーパネルの国内平均価格の半額で提供されているということがわかりました。
よって、太陽光発電システムについてはそれが粗悪品である可能性はほぼないと思って良いかと思います。
低コスト化の追求で安全性がおざなりにされているのでは?太陽光火災の問題
一条工務店のソーラーパネルや蓄電池が極端に安いこと、さらには製品としては比較的性能の良いものが採用されているというのをご覧になって、一条工務店は「施工上の安全性を犠牲にして低価格化を図っているのではないか?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
これは私自身が記事にした
記事が発端となっているかと思います。この記事は今年の1月末に消費者庁が発表したソーラーパネルからの発火事象に関する報告書に基づいたものとなっていますが、一条工務店が既に太陽光発電システムを設置した約6万世帯の住宅について、火災のリスクがある施工をしているのではないか?という点を指摘した記事となっています。
結論から言えば、一条工務店はその後消費者庁の報告書に従った施工方法に切り替えを行っており、少なくとも消費者庁の指摘する火災発生リスクの高い住宅には該当しない施工方法を採用するに至っています。
具体的には、不燃材としてケイ酸カルシウム板を不燃材として屋根材とソーラーパネルに挟み込んだ施工を行っています。
ただ、過去にそうした問題があったということで一条工務店は「危険」と思われていた施工をあえて採用していて、消費者庁からの指摘を受けてやっと是正に応じた、と思われる方もいらっしゃるかも知れません。しかし、それは明らかな間違いです。今回の消費者庁の指摘の対象となった住宅は一条工務店だけではなく、例えばミサワホームなどの住宅においても同様の施工が行われており、住宅メーカー以外ではシャープ、パナソニック、京セラのいずれもがこれらの施工方法でソーラーパネルを設置していました。こうした施工方法が火災に関係し得るということは、研究者の中で指摘している人はおりましたが、一般に危険性が認知されていたものではなく、どちらかというと消費者庁の指摘を受けてみんなが右往左往したといったのが実態と思います。また、消費者庁は今回ソーラーパネルという通常は見えない位置に設置された部分からの火災ということで、過去の事例とは異なり実際に人的被害が生じる前に報告書を出すという対応を行ったもので、現時点で人的被害が発生した事実もありません。
よって、少なくとも上記事例は一条工務店が安全性を故意に犠牲にしたということの根拠にはなり得ません。我が家には不燃材施工されていませんがね^^;
今回の一条工務店の蓄電池は「キャンペーン」であり、ごく僅かの人しか当選しない詐欺的な商法では?
エリアあたり20組限定:それ契約者全部じゃん。。。。
今回の一条工務店の「電力革命」と題した広告資料には今回の蓄電池価格がキャンペーン価格であり、10月31日までの申し込みに限っており、かつエリアで20組限定という記載があります。
こうした記述から、今回の蓄電池の値段の安さは「キャンペーン価格」であって、いわゆる客寄せのための広告的な「当選商法」に近いのではないかという疑念が生じます。
このことについて検証してみます。
一条工務店の年間施工等数は戸建て注文住宅では積水ハウスを抜きトップの約12000棟となっています。
今回のキャンペーンは「エリア内20組限定」となっており、一見すると当選者が極めて限られているかのように見えなくもありません。
しかし、一条工務店はフランチャイズ店を除いて、国内を50以上のエリアに分割しています。すなわち、エリア単位では20組限定であっても、全国ではキャンペーン対象者総数は1000組以上に昇るのです。
先ほど書いた通り、一条工務店の年間施工等数は12000棟となっており、単純に12ヶ月で平均すると1ヶ月あたり1000組の契約者が存在することになります。
よって、20組限定と言いつつ実際には契約して希望する全世帯がキャンペーンの対象となる限定数となっているのです。
この時期にこのようなキャンペーンを行う意図としては、消費税の駆け込みも一段落し、さらに今年度中の引き渡しを受けたい人の契約が多かった8月を経て、契約者がやや減少する今の時期にカンフル剤的に投入したのが今回のキャンペーンと思われます。
そういう意味で、当選詐欺のように、極端に低価格を設定しておいて顧客を引き寄せながら当選する人は極少数で、実際にはもっと高い値段で契約させるといったものではなくむしろ本気でこの価格で全世帯に太陽光+蓄電池を設置させようとする目論見を感じる限定数となっていると言えます。
来月以降契約では蓄電池は設置できなくなるのか?
来月以降なくなることは考えづらい
今回、一条工務店は10月31日までの契約に限定したキャンペーンとして太陽光+蓄電池のキャンペーンを打ち出しています。
今月中に契約しなければ来月以降は一条工務店の蓄電池プランはなくなってしまうのではないか?と不安に感じられている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、当面は蓄電池のオプション設定がなくなることはまずないと考えています。価格はやや上昇する可能性もありますが、今回のキャンペーンの動向次第では価格が据え置かれる可能性も十分にあるように思います。
なぜならば、下の写真のように一条工務店では既に一条工務店のロゴを入れた蓄電池を生産しています。また、今回の価格設定からも一条工務店が本気で蓄電池を国内に展開しようとする意図が汲み取れます。
また、今回の価格設定を見ても、蓄電池を相当の数で購入していなければあり得ない価格となっています。そうしたことを考えると、1ヶ月だけのキャンペーンで蓄電池の販売から撤退するということはまず考えられません。むしろ、全世帯に蓄電池を設置するぐらいの勢いで蓄電池のキャンペーンを打ち出してくる可能性が高いように思っています。ただし、短期的には今回の価格よりも大きく下がる可能性はまずないと思っており、来月以降は価格は上昇する可能性はあるように思います。それでも、+10万円~15万円の範囲には収まるはずです。これにはしっかりと根拠があります。それ以上の価格になってしまうと採算が採れない家が出てくるため、導入が顧客のデメリットになってしまうケースが発生するためです。
しかし、裏を返せば、今回の価格設定はもちろん、+10万円~15万円の範囲であれば、どう転んでも損をする、すなわち費用的な持ち出しが発生することはない価格設定になっているとも言えます。
一条工務店の住宅はどこに向かうつもりなの?性能の追求個人的大ヒットの全電源対応
リン酸鉄系リチウムイオン蓄電池を採用
今回、一条工務店の資料では蓄電池の種類についての詳細は記載されいませんが、その特性として「三元系リチウムイオン蓄電池と比べて2倍の充放電サイクルを実現」とあり、この特性から一条工務店の蓄電池がリン酸鉄系リチウムイオン蓄電池であることがわかります。
今回、一条工務店の宣伝資料では新しいリチウムイオン蓄電池の「開発に成功した」と書かれていますが、これは残念ながら真っ赤な嘘、嘘とまでは言わないまでもオーバーな表現となっています(ジャロに言いつけちゃうよ!)。リン酸鉄系リチウムイオン蓄電池は比較的古くからあるリチウムイオン蓄電池の一つであり、一条工務店が新たに開発をしたという事実はありません。むしろ既に特許も切れている枯れた技術です。
リチウムイオン蓄電池は旭化成の吉野彰氏がノーベル賞を受賞したことから一気に関心が高まっていますが、この吉野氏が1983年に開発に成功したのはコバルト酸リチウムイオン蓄電池と呼ばれるものになります。リン酸鉄やコバルト酸というのは蓄電池の正極材料にどのような材料を使うか、というのを示しており、正極材料の違いがリチウムイオン蓄電池の性能や性質を大きく左右するものとなっています。
この他にも、ニッケル酸、マンガン酸、コバルト酸のコバルトをニッケルとマンガンで置換し、コバルト・ニッケル・マンガンという3種類の元素を使った三元系、さらにチタン酸といった形で正極材料の種類によって様々なリチウムイオン蓄電池が開発されています。それぞれにメリット、そしてデメリットがあります。
例えば、私自身も乗っている日産リーフなどのように電気自動車では出力が大きく小型化が可能な三元系のリチウムイオン蓄電池が使われています。その派生で家庭用にもこの三元系リチウムイオン蓄電池が多く普及しています。しかし、この三元系リチウムイオン蓄電池には充放電を繰り返すと劣化が進みやすいという問題、そして、ニッケルやコバルトといった希少金属(レアメタル)を使用することから低価格化が難しいという課題もあります。
一方で、近年家庭用などの定置型として注目を集めているのがリン酸鉄系リチウムイオン蓄電池となっています。このリン酸鉄系リチウムイオン蓄電池はNTTが1990年代に開発を行ったリチウムイオン蓄電池となっており、肥料にもなるリンと鉄という地球上に豊富にある元素を使った蓄電池となっていることから三元系に比べて低価格化がしやすいというメリットがあります。そして、もう一つ、充放電に強いというメリットがリン酸鉄系リチウムイオン蓄電池の大きなメリットとなっており、三元系リチウムイオン蓄電池の充放電回数(サイクル)は6000回であるのに対して、リン酸鉄系リチウムイオン蓄電池のサイクルは12000サイクル、すなわち12000回の充放電が可能となっています。もちろん、これだけ充放電を繰り返すと相当に劣化はしてしまいますが。。。そして、もう一つ、安全性の高さがリン酸鉄系リチウムイオン蓄電池の大きなメリットとなっています。
リチウムイオン蓄電池に使われるリチウムは非常に危険性の高い物質となっており、スマートフォンなどのリチウムイオン蓄電池(リチウムイオンポリマー蓄電池)が爆発した映像などをご覧になったことがある方もいらっしゃるかと思います。リチウムイオン蓄電池では、その構造上、充放電時の発熱によって正極部分で内部のリチウムの結晶構造が変化してしまうことで爆発などの危険な事象を発生させるのですが、リン酸系リチウムイオン蓄電池では、発熱があっても結晶構造が変化しにくいため安全性が高いとされています。
これほどメリットばかりなのになぜリン酸鉄系のリチウムイオン蓄電池が普及していないのかというと、大きなデメリットがあるからです。
それは、充放電能力が三元系などに比べて低いという問題があります。すなわち、同じ容量の電気を貯めておこうとした時に小型化が難しく、重くなってしまうのです。これは現在の蓄電池の主な用途である電気自動車に採用しようと思った場合には燃費(電費)に悪影響を与える大きな問題となります。しかし、家庭用の定置型蓄電池として考えた場合には多少の大きさの増大はそれほど問題にはなりません。むしろ低価格化と安全性、長寿命という方が遥かに重要です。
電気自動車には向かないリン酸鉄系リチウムイオン蓄電池ですが、家庭用の定置型としてはメリットが多く、こうしたことから最近ではリン酸鉄系リチウムイオン蓄電池を家庭用定置型蓄電池に採用するメーカーも増えています。例えば、シャープが販売する家庭用定置型蓄電池はリン酸鉄系リチウムイオン蓄電池となっています。
(出典:シャープ社ホームページより)
こうしたことからも一条工務店が低価格化のために「変なリチウムイオン蓄電池を採用した」ということではなく、今回の一条工務店のリン酸鉄系リチウムイオン蓄電池の採用は、低コスト化を実現し、かつ長寿という住宅とのセット販売を考えた場合、極めて合理的な選択をしたと言えます。
結構スゴイことじゃない!?全電源対応
今回、蓄電池の話題の中で一条工務店があまりアピールしていないけれど、これは良いな!と思える仕様を採用しています。
それは全電源対応(私が勝手に名前を付けました。正式名称は不明です)と思います。
通常太陽光発電システムや蓄電池システムは、系統電源(電力会社の電力)と接続している状態では発電電力や蓄電池からの放電電力は系統電力を補助する形で住宅全体の機器に供給されます。しかし、停電をしてしまうと、様々な規則等によって、「非常用コンセント」として事前に準備したコンセントから1500W×2系統の電力しか取り出すことができません。
そのため停電時は冷蔵庫やその他の機器に、別途延長コードなどを使って停電時用のコンセントから電源を引き直すという対応が必要になります。
これに対して、一条工務店の新しいパワーコンディショナーでは、停電時も住宅全体の電源(全電源)として電力が供給可能となっているのです。
この仕組みは日産が盛んにテレビコマーシャルをしているリーフで何日生活できるか?というのと同じことをもう少し小規模にして実現しているのと同じなのです。
上記のCMではリーフを停電時の非常用電源として利用し、これを全電源として住宅に供給することで非常時の生活を長期に維持可能であることをアピールしています。
最新モデルの日産リーフの蓄電容量は62kWhであり、一条工務店の蓄電池7kWhよりも容量が遥かに大きいので同じような生活は送れませんが、似た生活を送ることは十分に可能です。ちなみにこのリーフ自体が400万円ほどしますし、さらに住宅と接続するためのシステムが私が聞いたタイプでは150万円ほどするため、金額的にも同じ土台で議論できるものではありません。
しかし、25万円という低価格で同じようなことが実現できるというのは大きなメリットです。停電が発生したら自立運転モードなどへの切り替え操作をおこなえば自宅の中のどの場所のコンセントからでも、日中であれば太陽光発電の電力を、太陽光発電がダメでも蓄電池の電力を使うことができるのです。
一条工務店のアナウンスでは停電時でも5.5kWの出力に対応するとなっていますので、従来の非常用コンセントでは使用できなかった200V機器であるIH(1口最大3kW)を使うこともできてしまうのです。はたまた、停電時であっても日中に晴れていればその間にエコキュートを稼働させてお湯を沸かして、お風呂に入る事さえできてしまいます。
完全に日常の生活を送るということまではできませんが、大規模な停電に見舞われてもストレスを大きく低減できることは間違いありません。
蓄電容量に関しても、新型の冷蔵庫であれば1日あたりの消費電力量は平均して1kWh前後ですから、万が一1週間停電したとしても冷蔵庫単独であればその間全く晴れずに太陽光発電が使えなくても5日~6日程度では冷蔵庫の電源が切れることはないのです。実際には、長期の停電が継続しても日中に太陽光発電によって蓄電が回復しますので、極端な悪天候でなければ冷蔵庫などを使いつつエアコンも夜は照明も付けて生活することさえできます。
5.5kWの全電源として使えるというメリット、さらに太陽光と蓄電池のセット、そして一条工務店の高断熱高気密を併せることで、例えば冬期に長期停電に見舞われても全室の暖房をするということまでは難しいですが、例えば寝室など限られた空間だけをエアコンを使って暖かくしたり、逆に夏であればクーラーを入れて涼しい状況を維持しながら停電を乗り切ることができてしまうのです。
このような全電源対応の蓄電池は既に世の中に存在はしていますが、ぶっちゃけ非常時に備えて導入するには高すぎる(ざっくりですが、私が知る限り蓄電池なしで全電源に対応するだけで50万円以上する代物です)のがネックでした。しかし、今回の一条工務店の太陽光・蓄電池パッケージではこの全電源対応が標準となっているのです。。。。
でも25万円ものオプション費用を支払う価値あるの?導入は10年後で良いのでは?
むしろ収益になる
今回の記事で一条工務店の太陽光・蓄電池パッケージの価格が極端に低価格であるかはおわかりいただけたかと思います。
しかし、そうは言っても従来は1kWあたり15万円で設置できたソーラーパネル価格が16.8万円になってしまい、結果的に約25万円のオプション費用を支払って蓄電池を付けているのと同じではないか?と思われた方もいらっしゃるかも知れません。
そして、25万円を払ってあるかないかわからない非常時に備えるのであれば、ソーラーパネルだけでも十分じゃないか?と思われて、蓄電池の採用をためらわれる方もいらっしゃるかも知れません。
しかし、これは全くの間違いです。
むしろ、この蓄電池の採用は結果的に25万円以上の収益を生むのです。運用としては当初10年間(ソーラーパネルの固定売電期間)は深夜電力を蓄電し、日中に蓄電した電力を消費することで深夜電力と日中電力の価格差を使って収益を得ることができるのです。そして、10年経過したら売電価格が低下してしまう太陽光発電でできた電力を蓄電し、この電力を夕方など比較的電気料金の高い時間帯に使うことで差益をえることができるのです。
このように、電気料金の価格差を利用して蓄電池から収益を得ることができてしまい、結果的に25万円以上の収益を得ることができるため、導入をしないという選択はあり得ないのです。
具体的にどの程度の収益が期待できるかは次回シミュレーションします。
ソーラーパネル13.75kWは多すぎるのでは?
今回の一条工務店の太陽光&蓄電池パッケージではソーラーパネルの容量が13.75kWとなっていました。
実際にはパワコンの出力を10kW未満に設定することで、売電単価を10kW未満の比較的値段が高く連系接続料など不安定な費用の発生を防止することができるといったメリットがあることは既に説明しました。
そうは言っても、パワコンの出力が9.9kWなのに13.75kWもパネルを搭載してしまっては損をしてしまうのではないかと不安に感じられる方もいらっしゃるかと思います。
しかし、この考えも全くの間違いなのです。
なぜならば、13.75kWのソーラーパネルが13.75kWも発電することはあり得ず、もっと言えば10kW以上発電するなどと言うことも実際にはほとんどないためです。個人的は、13.75kWと言わずに、18kWぐらい搭載しても良いと思っています。
こちらについても、実際に本当にそうなのか?という部分を我が家の発電実績データを使ってシミュレーションしたいと思っています。
一条工務店はなぜ蓄電パッケージを販売するのか?
低価格の背景:差別化
一条工務店は太陽光&蓄電池パッケージをなぜこれほどまで低価格で販売するのか?ということについては、私の想像でしかありませんが、おそらく「大容量ソーラー」を一条工務店の「売り」として維持することが結果的に一条工務店の住宅の価値となり、それが他のハウスメーカーとの差別化になるという戦略的な意図に基づいて行われた意思決定の結果だろうと思っています。
一条工務店のソーラーパネル搭載率と平均パネル搭載容量は、2015年頃には平均搭載率92%、平均搭載容量14kWに達していました。それが、2018年には搭載率73%、平均搭載量11kWにまで低下してしまいました。現在ではおそらく搭載率60%台、平均搭載容量も10kW台か10kWを下回る水準になってしまっているだろうと思います。
これは短期的に見た場合、稼働していない生産ラインが発生してしまっていることを意味します。
一条工務店としてはこれはそれなりに大きなダメージです。仮に2015年時点の一条工務店の年間施工棟数を1万棟(パネル搭載率92%,平均搭載量14kW)、2019年度の施工等数を1.3万棟(パネル搭載率65%,平均搭載量10kW)とした場合、2015年時点でソーラーパネルの生産量は12万8800kWであったことになりますが、それが現在は8万4500kWしか生産していない状態まで落ち込んでしまっていることを意味します。すなわち生産ラインの稼働率が35%も落ち込んでいることを意味するのです。これは結果的にコストに跳ね返って来ます。現時点では一条工務店のソーラーパネルは十分な価格競争力を有していますが、このまま手をこまねいていれば早晩価格競争力の衰退に繋がる問題ともなります。
ただ、これは一条工務店は住宅メーカーであってソーラーパネルメーカーではないこと、住宅全体の販売収益に対してソーラーパネルの販売収益は限定的であることから一条工務店全体としては深刻とまでは言えない問題とも見ることもできます。
ソーラーパネルの採算性の悪化以上に問題なのが「差別化」材料を一つ失ってしまうことの方が遥かにダメージが大きいと思います。私自身がそうでしたが、住宅メーカー選びの段階で一条工務店に決めた一つの大きな決定打は大容量のソーラーパネル搭載に対応をしてくれてたことでした。そして、それを支えているのが低価格でそれなりの品質のソーラーパネルをこれでもかという容量で搭載できると言った仕様でした。その後の政策的な後押しもあって、高断熱高気密と並んで一条工務店と言えば大容量ソーラーパネルと言えるほどに、ソーラーパネルは一条工務店の差別化ポイントとなっていたことは間違いありません。
高断熱化についてはまだ一日の長がありますが、それでも他のハウスメーカーもZEH補助金という後押しを受けて、高断熱高気密化に力を入れています。そして、太陽光については売電単価の下落によって顧客が得られる収益が2012年当初のように10年、20年という現実的な期間で何百万円といった大きな収益を見せられなくなり、社会的にも大量導入されたソーラーパネルが様々な社会問題を引き起こしたことからイメージが悪化してしまったこともあって、お客さんに対してソーラーパネル(夢発電)を提案してもそこまで食いついてもらえなくなっているという状況にあったと思います。
そのため、従来の高断熱高気密と太陽光という一条工務店の他のハウスメーカーとの大きな差別化ポイントをお客さんに対してはっきりと示すことがしにくい環境になりつつあったことが今回の超低価格蓄電池パッケージの販売の背景にあるように思います。
そのような中で、今回の太陽光&蓄電地パッケージは、お客さんに対する説得力という観点では極めて有効な商品と思います。正直ここまで低価格にすると色々と疑いたくなる程に低価格で、かつ、仕様的には全電源に対応し、さらに大容量と高い売電単価を両立させると言った仕組みは往事の一条工務店のソーラーパネル販売を復活させるだけのパワーのある提案のように思えます。おそらく、蓄電地の価格が今後も維持されるならば、一条工務店の家のほとんどにソーラーパネルと大容量太陽光が搭載されるという状況が復活する日が再び来るように思うのです。
もう一つの背景:営業さん達のモチベーションアップ
今回の太陽光&蓄電地パッケージの販売は、営業さん達のモチベーションアップも企図したものと思います。
私がブログを読まれた方からお問い合わせをいただく中で感じていたこととして、一条工務店の営業さん達の「太陽光プッシュ」が一時に比べて非常に弱いものとなっていたことが気になっていました。なぜ一条工務店の営業さん達が太陽光のプッシュを辞めてしまったのかというと、2012年、2013年頃からはじまった太陽光バブルとも言える状況は、お客さんに対して「驚き」を与えることができるほどの収益を見せることができ、そしてこに説得力を持たせることができていました。
しかし、売電単価が下落したことで数百万円もの費用を支払ってソーラーパネルを設置しても得られる利益は20年で数十万円という状況になり、お客さんに対して「驚き」を与えられなくなってしまった結果、営業さん達の住宅販売の方針が変化し「太陽光は付けたいならばお好きにどうぞ」というスタンスに変わってきていたように思います。営業さん達以上にお客さんの好みを把握している人たちはいません。その営業さん達が見限りをはじめたという状況に一条工務店が危機感を覚えたのではないかと思うのです。そうした中で一条工務店としても苦肉の策で、「60年後の収益」というある意味トンデモ理論に近いような理屈でこんなにたくさんの収益が得られますという示し方を試みたりしていました。しかし、おそらくこのような示し方に対してはお客さんの側も懐疑的になりますし、それを見ている営業さん達もあまり太陽光をアピールしなくなっていたのだろうと思います。
そのような中で、今回の蓄電地パッケージには、この停滞した流れに大きな活を入れるだけのインパクトがあるように思います。
今回の13.75kWであれば数十万円ではなく20年で少なくとも100万円程度の収益を得られることのアピールができ、そこに超低価格の蓄電地を設置にすることで収益の増大と非常時への備えの両立という新しい住宅スタイルの提案も可能になります。営業さん達としてもお客さんに対する訴求力があれば従来のように強くアピールするようになり、それが結果として一条工務店の差別化を形作っていくように思います。そして、今年から顕在化する、「FIT切れ」の問題に対しても事前に蓄電地を設置しておくことで備えを提案することもできます。ほぼ全方位戦略と言っても良い戦略のように思います。
これを受けて、営業さん達もお客さん達に蓄電地パッケージを猛烈にアピールするようになるのではないかと思います。そして、そのような状況を作り出すことこそが、今回の破格の価格設定の背景にあるのではないかと感じました。
今回の太陽光&蓄電システムの大きな不安要素
営業さん、きちんと説明できますか?
今回の一条工務店の太陽光&蓄電池パッケージは、どう考えても、もの凄いお得で、さらには非常時の備えにもなって良いことづくめの仕組みとなっています。
しかし、もの凄く大きな「問題」があるように思っています。
私が心配するのは本当に余計なお世話なのですが、この仕組みを営業さんがお客さんに対してうまく説明できるのか?ということが最大のそして唯一の難関のように思っています。
私はおそらく電力システムなどに詳しい部類と思っています。そのため、今回の一条工務店のパッケージが一条工務店が「電力革命」と謳うだけのことはあるものと思っています。個人的には電力というのは住宅1軒の中で完結するものではなく、発電所や変電所、そして社会インフラ全てを統合したシステムを指すと思っているので、電力革命というのはさすがに言いすぎと思いますが^^;;;それでも、住宅メーカーの提唱する電力革命としては十分な説得力のある内容になっているように思っており、もっと言えば世の中をひっくるめた真の意味での電力革命の序章とさえなり得ると思っています。
ただ、こうした一条工務店が提案するパッケージをお客さんに理解してもらうことは少し考えただけでもかなり難しいのではないかと思えます。
例えば、13.75kWのパネルを載せてパワコン9.9kWで10kW未満というのは法的に、ルール的に本当に問題ないの?どこを見ればそれが問題ないことが確認できるの?と聞かれて答えられるでしょうか?
9.9kWのパワコンに13.75kWのソーラーパネルを載せて、発電電力量が10kW以上になったら安全性に問題ないの?どのような仕組みで安全性が担保されているの?と聞かれて答えられるでしょうか?
蓄電池7kWhでいったいどのような装置が何時間稼働できるの?冬と夏でエコキュートが沸かせる回数や容量はどのぐらい?そもそも蓄電池を設置することでどうやって、どの程度の収益が得られるの?蓄電池の入出力効率の影響は考慮している?9.9kWのパワコン+13.75kWのソーラーで実際に10kW超えて発電することはどの程度の頻度で発生するの??などなど、お客さんから聞かれるであろう疑問は枚挙にいとまがありません。
こうした質問に対して、営業さん達はお客さんが納得できるように回答しなければならないのです。
私が今聞いている範囲では「100万円以上する蓄電池が超お買い得に設置できます」とか「蓄電池を設置すれば災害時にも安心です」とか、ものすごく当たり前で表面的な説明をしている話しか聞こえてきません。今回の一条工務店が展開するパッケージの本質的な価値を理解しているとは思えない営業トークばかりが聞こえてくるのです^^;;;
ソーラーパネルの発電量については一条工務店では既に7年の販売実績があるので営業さん達も一定の知識は有していると思いますが、今回のパッケージは一条工務店が夢発電システムをはじめた当初と同じように、顧客から見たら「詐欺では?」「何か騙されているのでは?」とさえ思われかねない内容となっており、お客さんからの質問に対して適切な回答を行うことが非常に重要になってくるように思います。
そして、この点がクリアできなければ一条工務店の電力革命は失敗に終わってしまうんです。
まじめな不安:購入者が使いこなせるか?~自動制御の導入を~
上記の営業さんがきちんと説明できるかどうかと言うのは、導入した住宅にとっては重要ではありません。
私が真面目に懸念するのは、蓄電地パッケージを採用されたお宅で本当に将来にわたる蓄電地と太陽光の連携制御を行えるのか?という点です。
基本的に蓄電地パッケージを導入しても当初10年間は深夜電力を蓄電して、それを日中放電させるという運用になるでしょうから何とかなるようにも思えます。実際には事前に充放電の開始・終了時刻を設定しておくだけで済むように見えます。
しかし、実際にはそれでは済まないように思います。今後電力自由化の流れの中で電力価格が比較的流動的に変化していくことが予想されています。従来は大手電力会社10社の時間帯別電気料金さえ把握していれば、設定は簡単でしたが、大手電力10社以外を選択した場合プランは極めて多様なものとなります。そうした多様な電気料金プランに応じた設定は住宅に住む人が行わなければならなくなります。
これはあまり現実的なこととは思えません。
さらには10年後、FITが終了したらさらに複雑な運用が求められます。蓄電地の蓄電タイミングを変更し、10年後の状況によってはエコキュートの運転時間の変更も必要となります。さらには、床暖房や食洗機、洗濯機の稼働時間と言ったライフスタイルそのものに影響を及ぼす装置の運転タイミングまでを最適な形に設定しなおさなければならなくなるのです。こうした設定を全てお客さんに投げてしまうと付いて来れないお客さんが多く出てしまうように思います。こうした問題を解決するためには遠隔によって一条工務店が自動制御のためのアルゴリズムを開発することが不可欠のように思います。
遠隔自動制御には導入時点から強かな戦略を持って機器の選択と導入をすすめていなければ実現することはできません。部分的にはそうした取り組みを行っていることは垣間見えますが、全体を包括する形で顧客に新しい生活スタイルを提唱する、一条工務店的な言い方をすれば「ライフスタイル革命」を及ぼす取り組みは十分に行われていないように見えます。
住宅を販売して終わり、ではなく、そうしたライフスタイルの変化にも追随し、最適な機器の制御を行えるような取り組みが行わなければ単なる装置の販売で終わってしまい、せっかっくの蓄電池パッケージも単なる安い蓄電池の提供で終わってしまうように思えます。長期的な一条工務店の住宅の価値を高めるという観点では、単なる低価格な蓄電池の提供で終わるのではなく、顧客のライフスタイルに追随した様々な自動制御を有償で行っていく、その有償とする部分のコストは最適制御によって得られる収益によって賄うようなモデルを開発してくれたら非常に面白いのにな~と思います\(^o^)/
次回は一条工務店の蓄電池パッケージを導入することで、導入しない場合と比べて収益がどの程度向上するのかについて分析をしたいと思います!
教えてください!
現時点で蓄電パッケージの価格はソーラーパネル13.75kW搭載時に16.8万円/kWであることは分かっていますが、その他の容量を選択した場合にどのような価格設定になっているかおわかりになる方がいらっしゃいましたら是非教えてくださいm(_ _)mコメントに記載いただいても結構ですし、sasuke13is@gmail.com宛にメールを下さっても結構です。