防蟻剤「アセタミプリド」について一条工務店から回答がありました\(^o^)/

こんばんは\(^o^)/さすけです。

今年最初に3回シリーズで書かせていただいた

・ 一条工務店の防蟻剤の安全性は?欧州食品安全機関の規制強化・・・胎児や子供に影響??

・ 防蟻剤の歴史=使用と禁止の歴史
・ 住宅に使用される化学物質リスクとどう向き合うべきか?

について、一条工務店から回答がありました\(^o^)/

あらすじ

このシリーズを書いた発端は日本経済新聞2014年1月2日付け電子版に「ミツバチに毒性懸念の農薬、人間の脳にも影響か」という記事でした。

このニュースは、EUで食品の安全性を評価している欧州食品安全機関(EFSA)がミツバチの大量死に影響していることが懸念されるネオニコチノイドという農薬について「低濃度でも人間の脳や神経の発達に悪影響を及ぼす恐れがあるとの見解をまとめた」、というものでした。(EFSA原文リンク

で、私は一条工務店の家で2012年6月頃から断熱材EPSに防蟻剤として使用されているニッソーコートAWという薬品がネオニコチノイド系農薬であると言うことを以前聞いていたので、一条工務店の家の安全性は大丈夫なの?という疑問を持ち、先の3回シリーズの記事を書かせていただいていました!

その際、一条工務店に対して

1. ニッソーコートの主成分の開示

2. その濃度とEPS塗布に使用している使用量の開示

3. アセタミプリドの室内外への揮発蒸散量

4. 呼吸器からのアセタミプリド摂取の作用機序研究

といった情報が知りたいと言うことをブログに書いていました。

ただ、ブログで書いただけでは伝わらないので、一条工務店のお客様相談室にも上記の情報開示をお願いしていました。クレーマージャナイヨ!

一条工務店からの連絡\(^o^)/

そうしたところ、数日後に我が家の監督から連絡があり「一条工務店としてきちんと説明したいので、時間を空けて欲しい」という連絡がありました!予想外に早かったです。。。(゜д゜)ビックリ

質問内容については専門的になってしまうと、一条工務店のお客様相談室では回答が困難なので、開発元である日本曹達の担当者も一緒に来てくれるとのことでした(゜д゜)キンチョー!

で、先日、日本曹達の方と一条工務店の展示場でお会いして色々と教えていただく機会をいただくことができました!

お会いした方は一条工務店が防蟻剤として使用しているニッソーコートAWの開発担当者の方で、アセタミプリドの開発にも携わっていた方でした^^

元々研究者の方と言うことで、話もわかりやすく、知らないことも色々と教えてもらってめっちゃ楽しかったです!(←楽しむな!)

結論から言うと、現状では十分に納得のいく説明を受ける事ができました。

ということで、私が勝手にブログに一条工務店の回答をアップしてみたいと思います!

まずは先の4つの質問に関する回答を書いておきます。

1. ニッソーコートの主成分の開示

『アセタミプリドで間違いないです。』(正解だった~\(^o^)/)

2. その濃度とEPS塗布に使用している使用量の開示
『アセタミプリド4.1%溶液を100倍希釈した物で、防蟻済EPS 1㎡あたり理論上最大塗布量228mg/㎡となっています』


3. アセタミプリドの室内外への揮発蒸散量

『EPSに塗布している濃度の180倍溶液で実験をした結果、検出限界1μg/㎥を下回り不検出となりました』

4. 呼吸器からのアセタミプリド摂取の作用機序研究

『呼吸器から取り入れられた場合の薬剤の吸入移行動態を調べる試験はしておりません。また、公的な試験基準も
なく、試験の予定はありません』

とのことでした。これだけ見ると何のこっちゃ?と思われるかと思いますが、個人的な結論として現時点では、一条工務店のEPS防蟻剤としてのアセタミプリド吸入による影響は十分に無視できる可能性が高い、と考えるに至りました(なぜそう思うかは後ほど詳しく書きます。マニアックです!)

それから、もう一つ大変安心?できる話も聞くことができました。ブログに書かれたからかどうかはわかりませんが、アセタミプリドの有害性に関する問題を一条工務店が真剣に考えてくれているということも知ることができました

というのも、私がブログに書いてからすぐ一条工務店の実邸で、アセタミプリドの検出試験を行ったとのことで、そのことも教えてもらいました。

上記2枚の写真は、2014年1月15日に一条工務店が実施した測定で、実際に人が住んでいる住宅の室内で空気を集めている時の写真とのことです。

ここで集めた室内の空気を液体クロマトグラフィーという手法で分析を行った結果、検出限界値0.1マイクログラム以下である事が確認されたとのことでした。このことから、現時点での安全性は高そうだと考えています。(これも後ほど詳しく書きます!)

まだ、実邸での測定は1軒しか行えていないので10軒程度は実施する予定とのことでした。

また、早い段階で指摘した恩恵?として、我が家も測定対象になりました!測定方法の妥当性、測定結果の内容等々含めて、測定が終了したら改めて記事にしたいと思っています!

結果と概要

まずは、結果と概要を書かせていただきます。

結論から言うと、現時点でEPSの防蟻剤として使用されているアセタミプリドは室内で検出されていません。よって、アセタミプリドが住んでいる人間に影響を与える可能性は極めて低いと考えられます。

また、今回一条工務店が使用していた装置は検出限界が0.1μg/㎥以上という装置であったため、0.1μg/㎥未満の濃度でアセタミプリドが室内に拡散している可能性は否定できません。

しかし、仮にこの検出限界値である0.1μg/㎥のアセタミプリドが室内に存在した場合でも、そこに住む人が1日に摂取するアセタミプリドの量は0.5μg/日と計算されます。よって、EU食品期間が指摘した安全基準値(1日当たり0.025mg/kg未満=体重60kgの人で1.5mg/日)という経口基準値に対して、一条工務店が使用する防蟻剤ニッソーコートAWからのアセタミプリド放散による理論的最大吸入量は0.5μg/日未満であると言えます。

経口摂取と吸入摂取という違いはありますが、1.5mgは0.5μgの3000倍にあたります。仮にアセタミプリドは吸入摂取の方が経口摂取よりも100倍効率よく体内に取り込まれるとしても、アセタミプリドの安全摂取量の30分の1に満たない量であるという結論になりました。

これらのことから、一条工務店がEPSの防蟻剤として使用しているアセタミプリドが人間に害を与える可能性は極めて低いと言えそうです。

ただし、これは1軒の家の測定結果に過ぎませんから、今後サンプル数を増やして測定を行う必要はあると思います^^

以上が結果の概要です!

と、ここまでですと、なんとなく「さすけが一条工務店にうまく丸め込まれたんじゃないの~」と思われる方もいらっしゃると思います!そう思うのは当然と思います^^;

私自身、うまく丸め込まれている可能性は否定できません。

ですから、他の方に私が丸め込まれていそうか、それとも一条工務店の説明が妥当であったのかをご判断いただく為にも、私が聞いてきた話をもう少し詳しく書かせていただきたいと思います\(^o^)/

内容は少々マニアックになりますがその点はご容赦ください!

以下は、一条工務店の公式な見解ではありませんし、日本曹達の見解でもありません。私が、両者のお話を聞かせていただいた上で、私個人の理解である点にご注意ください!!


ニッソーコートAWについて

ニッソーコートAWという薬剤は、2012年6月ころ以降に上棟した一条工務店の住宅の断熱材(EPS)用防蟻剤として使用されています。それ以前のEPSにはACQという異なる薬剤が使用されていました。

EPSは無色透明で、以下の様な特徴があります
1. 処理ムラが少ない
2. 燃焼性を高めることがない
3. 揮発成分を含有しない
4. シロアリに対してすぐれた殺蟻性を有する。
という特徴があるそうです。

まず1の処理ムラを少なくすることができる理由として、一条工務店ではフィリピンの向上にてニッソーコートAW溶液を満たした水槽のようなものにEPSを浮かせる形で塗布を行っているそうです。そのため、散布を行う場合などに比べると処理ムラが少なくなるとのことでした。また、EPSの特性としてニッソーコートAWを吸い込みやすく約1cm程度は浸透して
おり、防蟻効果の減衰も少なくなっているとのことです。

2については、揮発性溶液を含有しておらず、また、燃焼性を高める成分を含んでいないため、EPSの燃焼性を高めることはないとのことでした。

3については、揮発成分を含んでいないためいわゆるシックハウス症候群をおこさないという特徴を持っています。

4については、「アセタミプリドの欠点」の応用と理解しました。

少し脱線しますが、日本の農薬開発というのは、お米、いわゆる水稲をターゲットとした農薬開発が主体になっているそうです。これは、水稲は市場規模が大きく、1種類の作物に対応した農薬を開発するだけで、「大きな商い」になるためとのことです。

確かに、日本で生産されている農作物のうち、コメに次いで生産量の多いイモの作付面積は約2.4万haです。それに対して、コメの作付面積は220万haを超えます。作付面積で約100倍となっています。

一般に農薬はその農産物ごとに開発されることが多く、水稲向けの農薬開発を行う事が優先されているとのことでした。そのため、農薬開発会社は水稲をターゲットとした農薬開発を行う事が多いそうです。

しかし、水稲向けという意味ではアセタミプリドは「失敗作」であったそうです。

というのも、アセタミプリドは水稲の成長を阻害する害虫のうち、一部には効くけれど、一部の害虫には効きにくいといった、効果ムラがあったそうです。

そのため、アセタミプリドの商品名である商品名モスピランはイチゴ農家などでは広く使用されていますが、水稲用農薬としては普及していないとのことでした。

このアセタミプリドは、昆虫網網翅目・・・要するに(ゴキブリの仲間達)・・・には効きやすく、一方で昆虫網膜翅目・・・蜂や蟻の仲間・・・には効きにくいという特徴があるそうです。

で、ご存じの方も多いと思いますが、シロアリは蟻ではなくて、ゴキブリの仲間に分類されます。そのため、アセタミプリドが効きやすい昆虫と言うことになります。

この話を聞いたとき、私が以前書いた記事「防蟻剤実際に効果有るの?実験してみた!!予想外な結果が。。。」のことがすっと理解できました。


この記事では、実際に蟻を捕まえて防蟻剤の効果を実験してみたことがありました。しかし、その際、ヒメアリとニッソーコートAWを塗布したEPSを一緒に入れているにもかかわらず、5日を経てもヒメアリは全く死にませんでした。そのため、私は「今回予想外(期待はずれ)の結果だったのはニッソーコートです。」と書いていたのです。

当時の私は、ニッソーコートの主成分等を十分に知らないまま実験をしており、ニッソーコートがヒメアリの属する膜翅目に対して効きにくいことを知らずに実験をしていました。そのため、ヒメアリでも昆虫なんだから死ぬだろう、と思っていたのですが、ニッソーコートの主成分であるアセタミプリドは膜翅目であるヒメアリに効果が低いため死ななかったということが理解できたのです!言い方を変えると、上記の実験は正しかったということがわかったのです!これはちょっと嬉しいです^^

ただ、私がニッソーコートに対して誤った評価をしていたことは間違いありませんのでその点に付いては、ここに謝罪しますm(_ _)m

ニッソーコートが本当に効果があるかについてはシロアリで実験してみなければわからない事になります。(とは言え、シロアリでは実験しませんヨ!^^;)

なぜACQではなくニッソーコートを使うことになったのか?

この点は、日本曹達の方に聞いてもわからない部分ではあるわけですが、この点は私が先に書いた「一条工務店のシロアリ対策について超詳しく聞いてみました」に書いたように、うまくシロアリを封じ込めるのに適した特性を有していたからだと考えられます。

特にアセタミプリドのすぐれた特性として「忌避性が低い」という特性を持っています。どういうことかというと、シロアリはアセタミプリドが毒であると言うことを気が付くことができない、ということです。そのため、シロアリは知らず知らずのうちにアセタミプリドが塗布されたEPSを舐めてしまい、死に至ることになります。

アセタミプリドはどのようにシロアリを殺すのか?

人間や昆虫等の動物は、心臓や肺といった臓器を動かす際、自分の意思によらず動かすことができます。しかし、意識をしなくても動いていますが、実際には脳内で交感神経副交感神経と呼ばれる神経が適切に臓器をコントロールしてくれています。

例えば、人間が走ると心臓や肺が活発に動作します。この際、脳が交感神経に心臓の活動を活発にするよう指示を出しています。もっと言うと、脳内にアドレナリンという神経伝達物質が放出され、アドレナリン受容体という部位がアドレナリンをキャッチすると心臓が活発に動作します。

しかし、このままアドレナリンが出続けては、体が疲労してしまいます。そこで、ほどよいところで脳内にアセチルコリンという神経伝達物質が放出されます。このアセチルコリンが脳内に放出され、アセチルコリン受容体にキャッチされると、心臓や肺の動きを押さえる方向に働きます。しかし、このアセチルコリンがどんどんと放出され続けると、今度は心臓が遅くなりすぎてしまいます。そこで、今度はコリンエステラーゼという酵素が放出されて、アセチルコリンを分解します。これによって、アセチルコリン受容体はアセチルコリンを受け取らなくなるため、心臓や肺が正常に動作するようになります。

上記のように、脳は必要な時に心臓などの臓器を活発に動かし、必要がなくなったら正常に戻すといったことを行っています。

で、有名どころの農薬というのは、上記の仕組みにうまく関与することによって、昆虫を殺します。

例えば、有機リン系農薬は、アセチルコリンを分解するためのコリンエステラーゼと結合してアセチルコリンの分解を阻害します。結果的に、昆虫は正常に臓器をコントロールできずに死に至ります。

また、防蟻剤や市販されている殺虫剤などとしてもよく使われているピレスロイド系殺虫剤は、脳内の神経受容体に対して作用して、何も受け取っていないのに「受け取ったフリ」をさせて神経を活性化してしまいます。結果的に、脳は臓器に対して誤った信号を流してしまい、臓器のコントロールをできなくしてしまいます。

そして、今回のアセタミプリドを含むネオニコチノイド系農薬はというと、ニコチン性アセチルコリン受容体と呼ばれるアセチルコリン受容体の1種に対して、くっついてしまう構造を持っています。そのため、アセタミプリドが脳に達すると、アセチルコリンが出ていないにもかかわらず、勝手にアセチルコリン受容体が反応してしまいます。その結果、正常に臓器をコントロールすることができずに死に至ります。

上記のように、効果の高い農薬というのは、脳内の神経伝達にうまく関わることによって作用しています。

ネオニコチノイド系農薬にはアセタミプリド以外にもイミダクロプリドなど複数の農薬が存在していますが、いずれも脳内のニコチン性アセチルコリン受容体に結合しやすい構造を持っています。

。。。。

・・・・・

なんか、ちょっと怖い・・・

上記では途中から「昆虫は死に至ります」とか書きましたけど、人間と昆虫の脳の神経伝達方式は基本的に同じです。ようするに、人間に対しても上記のような効果が現れます^^;;

ただ、人間は体が大きいことや、臓器の構造が違うため脳に達するまでに分解されることが多かったりするというだけです。

アセタミプリドの作用として「ニコチン性アセチルコリン受容体」と書きましたが、その名が示すとおりこの受容体は「ニコチン」をキャッチして反応します。典型的なのが「タバコを吸うと落ち着く」と感じるのは、ニコチン性アセチルコリン受容体がタバコから摂取したニコチンをキャッチした事によって副交感神経が活性化され、「落ち着いた状態」を作りだしているということになります。

ただ、昆虫は人間よりも体の大きさが遥かに小さいため、人間が「落ち着く」と感じる程度の量であっても死ぬというだけです。

上記が、ネオニコチノイド系農薬のうち、アセタミプリドの作用です。

結局の所、量が非常に重要になってきます。
そして、EU食品機関が食品中にアセタミプリドが含まれていても十分に安全であるとした安全基準値が体重1kgあたり0.025mg/日と言う基準値になります。

アセタミプリドの安全基準値の算出

量が重要となった以上、アセタミプリドの安全基準値が「安全であるか」ということが非常に重要になってきます。

そこで、アセタミプリドの安全基準値がどのように導かれたのかについても調べてみました。

農薬を含むあらゆる化学物質の安全基準値の算出は、動物実験の結果から得られる無毒性量NOAEL(No Observed Adverse Effect Level)と呼ばれる値を用いて計算されます。

NOAELは一般にマウスなどに濃度を変化させた化学物質を食べさせたり、皮膚に塗ったりするといった動物実験によって得られます。動物実験の結果、マウスに異常が現れなかった量がNOAELになります。

2年間のマウスを用いた慢性毒性試験の結果から得られた、アセタミプリドの無毒性量 NOAELは体重1kgあたり7.1mg/日です。

じゃあ、体重1kgあたり7.1mg/日を基準にするかというとそういうわけではなくて、ここに安全係数という倍率が掛けられます。掛けられる安全係数は
・ 動物種の違い:10倍
・ 個人差:10倍
合計100の安全係数が掛けられます。すなわち、7.1mg/日の100分の1が安全基準値として設定されます。よって、0.071mg/日が安全基準値となっています。これはアセタミプリドの安全基準値と等しくなります。上記の動物種の違いとは、当然のように人間で実験するわけにもいかないのでマウス等の動物実験によってNOAELを求めるしかありません。しかし、マウスと人間では動物としての種の違いがあるため、安全を見て10分の1にしておこうという考えです。そして、個人差の10倍とは、同じ人間であっても、耐性が強い人と弱い人がいるので、それを10倍で見ておこうという考え方です。この10倍というのはある種の経験則から生み出された値であるため、何か根拠があるものではありません。

ちょっと話がそれますが、最近では動物実験への反対が大きくなっているため、動物実験への反発が特に強いEUなどでは、「人間で実験をする」ことも行われるようになりつつあるようです。ようするに人体実験なわけですが、過去に行われてきた非人道的な人体実験とは異なり、きちんとした説明をし、十分に内容を理解した人に対して、相応の対価を支払って、十分な安全性を確保しつつ人間に投与を行うといった実験が行われるようになっているそうです。。。。

ただ、個人的にはこのあたりに矛盾を感じてしまいます。。。もちろん現在人間で実験されているのは化粧品など安全性が高い分野に限られてのことだとは思いますが、それでも、安全基準値を求めるのに、十分な安全を求めつつ、、、というのは無理がありそうな気がします。。。それに、その実験に参加してくれる人というのは「対価」と引き替えに参加してくれるということですから、お金で他人の健康を害するリスクを買っている事になってしまいます。。。じゃあ、動物の命なら良いのか?と言われると困るわけですが、ちょっと釈然としません。。。

確かに動物実験はある種残酷な試験ではありますが、私達はその犠牲の上に安全を教授していることを理解して生活することで許容した方が良いのではないか、と個人的には思います。

また、話がそれました!
そんなわけで、日本では体重1kgあたりの1日安全摂取量は0.071mgと定められています。

今回、EU食品機関では、新たに得られた胎児等への影響を考慮に入れ従来の安全基準値の約3分の1にあたる、0.025mgまで基準値を引き下げることを勧告しました。

ということで、この安全基準値の算出過程にはまず問題はなく、0.025mg/日・体重1kgという基準で良いと考えられます。

一条工務店の家は安全か?

1日の許容摂取量が明らかになり、次に問題になるのは一条工務店の家は安全か?ということになります。

まず最初に言っておきます!タバコを吸う人&家族にタバコを吸う人がいる方は、アセタミプリドの影響を受けないと思って良いと思います!なぜなら、アセタミプリドとニコチンの作用が同じであるなら、ニコチンの摂取量の方が遥かに大きいためです。。。^^;;ちなみに私も喫煙者だったりするため、この時点で私はある意味「安全」です。。。やめたいと思ってもやめられないんです(; _ ;)だってね、やっぱり脳には勝てないのですよ。。。
そんなことはどうでも良い話でした。

今回、一条工務店は私の所に来る前に1軒のお宅で、測定試験を行っていました。
その結果から、私は一条工務店の家は現在の所安全であろうと結論しました。

なぜ安全と考えたかについて書きます。

今回、一条工務店が実施した測定試験では室内からアセタミプリドは検出されませんでした。

しかし、私が気になったのは、その検出精度です。一条工務店が用いた、測定装置の検出限界は0.1μg/㎥でした。すなわち、1㎥あたり0.1μg未満の量が室内空気中に存在する可能性は否定できないことを意味します。

そこで、もしも室内に検出限界ぎりぎりの0.1μg/㎥のアセタミプリドが漂っていることを仮定して計算を行ってみました。

人間の1日の呼吸量は約15000リットル/日=15㎥/日ですから、仮に検出限界ぎりぎりの0.1μg/㎥が室内空気中に含まれていたと仮定して、かつ24時間室内に滞在した場合を仮定します。

その場合、呼吸で吸い込んだ空気中のアセタミプリド全量が体内に吸収されるという極端な仮定でも総吸入量は1.5μg/日になります。現実問題としては、人間の呼気のうち体内に吸収される量は酸素量を参考にして3分の1程度と仮定すると0.5μg/日と考えられます。

また、アセタミプリドの安全基準値0.025mg/日という値は「経口摂取」によって求められた値です。アセタミプリドが作用する仕組みは最初に書いたとおり脳の中での影響です。

経口摂取の場合は、消化器官を通じて血液中に取り込まれたアセタミプリドが脳に達するという過程を経ます。しかし、呼吸から摂取された場合は、肺胞を通じて直接血液に流れ込みます。よって、経口摂取よりも吸入による摂取の方が効率的に血液に達することができることが想定されます。

また、アセタミプリドはニコチンと類似した化学構造をもっているため、タバコに含まれるニコチンと同様、肺からも摂取されると考える方が合理的です。

そこで、これはある種の直感ですが、アセタミプリドは経口摂取よりも吸入摂取の方が100倍効率的に摂取されると仮定しました。直感とは書きましたが、一応、経済産業省が発行している「農薬の気中濃度指針値の設定方針について(案)」においても、今回のケースでは100倍の安全率となっているので、整合的です。

以上のことから
・ 現在装置における検出限界(0.1μg/㎥)のアセタミプリドが室内空気中に存在した場合、人の吸入量は0.5μg/日
となります。対して、
・ アセタミプリドの吸入無毒性量概算値は体重60kgの大人の場合で15μg/日
と計算されます。

一応、ここでは体重60kgを想定していますが、体重が少ない子供の場合には安全基準値も下がりますが、呼吸量も減るのでほぼ同じと考えて差し支えありません。

この結果から、一条工務店の実験結果から万が一、アセタミプリドが室内に0.1μg/㎥未満で飛散していたとしても、1日摂取の無毒性量の3%程度にしか達しないということになります。

そのため、農産物から摂取するアセタミプリドの量に比較して十分い小さい可能性が高く、一条工務店の家に住むことで、アセタミプリドを原因とした健康被害に遭う可能性は極めて低い、と考えました。

上記の計算は、正直、安全すぎるぐらいに安全側で計算を行いましたが、それでも安全基準値を超えるようなことはありませんでしたので、まず問題はないと考えます。

今回は、1軒の家だけを対象にした試験である事から、もう少し測定対象の住宅数を増やして検証を行う事は必要と思います。図々しく、我が家も測定対象として潜り込ませてもらいましたので、測定後に改めて検証してみたいと思っています\(^o^)/

アセタミプリドが室内大気中に存在する可能性はあるのか?

上記は、万が一EPSに使用されているアセタミプリドが室内空気中に飛散していた場合を想定して計算したものです。

実際の所、EPSからアセタミプリドが飛散する可能性があるのかについて少し検討してみます。

まず、日本曹達が今回の件とは無関係に実験した結果を見せてもらうことができました。
EPSの防蟻剤に使用されているニッソーコートはアセタミプリドの4.1%溶液を100倍に希釈した溶液を用いて処理されます。すなわち、アセタミプリドの0.041%溶液と考えることができます。

日本曹達では、アセタミプリドの濃度をEPSに塗布する濃度の180倍で揮発蒸散量を測定する試験を行ったことがあり、その結果を示してくれました。この濃度においても、検出限界0.1μg/㎥の装置でアセタミプリドを検出することができなかったとのことでした。

このことから、日本曹達の担当者の方は、「ニッソーコートAWの通常使用において室内空気中からアセタミプリドが検出される可能性は極めて低い」と考えているとのことでした。

大気中に気化しないことは、アセタミプリドの蒸気圧が常温で1.0E-6Pa未満であることからも言えて、この蒸気圧は水の蒸気圧のおよそ1億分の1になります。すなわち水に比べて1億分の1程度しか蒸発しないということを意味しており、極めて蒸発しにくい物質であると言うことが言えます。

そういう意味で、アセタミプリドが気化して室内空気中に含まれる可能性はほぼゼロであろうと考えます。

アセタミプリドがEPSから剥がれ落ちて粉末状になって飛散する可能性は否定できませんが、現時点で室内からアセタミプリドが検出できていないことから可能性としては低いであろうと思っています。

また、万が一粉末になって飛散したとしても、ロスガードが2時間に1回室内の空気を入れ換えてくれていますから、断続的に粉末状のアセタミプリドが供給されるような状態にでもなっていない限りはあり得ないことだろうと思っています。

以上のことから、EPS防蟻剤に含まれるアセタミプリドが健康に影響を及ぼす可能性はほぼあり得ないと判断しました。

感謝と思うこと

今回、一条工務店が指摘したアセタミプリドの問題に対して、真剣に取り合ってくれて、きちんとした説明を行ってくれたことに非常に感謝しています。

特に、日本曹達で研究をされていた方を連れてきていただけたおかげで、非常に科学的に納得できる話を聞くことができました。

また、ある意味、自信の現れ?と思うのですが、我が家でも測定試験をしてくれることになりました。実際に自分の目で測定方法を確認することができることになったため、測定方法に問題がないのかも確認することができそうです^^

自分の疑問にきちんと答えてくれたことに非常に感謝しています。

ちなみに、先に書いたC値の性能劣化の可能性の指摘についても、我が家を対象に継続的なC値測定を行うことを提案してくれました。現在は、一条工務店が持つC値劣化に関する知見が存在しないかを確認しているところです。

今回のように一条工務店がきちんと対応してくれたのは、ブログを読んでくださっている皆さんのおかげだと思うのです。決して私の力だ!などとは思っていなくて、本当に読んでくださる方のおかげだと思うのです。

なぜなら、私一人がいくら大騒ぎしたところで、それは大企業である一条工務店には何も影響を与えないのだと思います。

一条工務店が今回のようにきちんと対応してくれたことは、ブログを読んで私の持った疑問をきっかけとして、同じ疑問を共有してくださった方々がいらっしゃるからこそだと思っています。

一条工務店も企業である以上、多くのお客さんが疑問に思うならばきちんと対応せざるを得なくなります。

そして、多くの方が同じ疑問を共有してくださったおかげで、私に取っては自分自身の疑問を解くことができたことに本当に感謝していますm(_ _)m

一方で、私が一条工務店の宣伝役に成り下がってしまう危険も常に意識しているつもりです。ですから、かなり専門的になってしまったとしても、私が知ったことはきちんと多くの方に向けて書いておこうと思った次第です。そのために、わかりにくい内容になってしまっていたらスイマセンm(_ _)m

もしも、私が単に一条工務店の言っていることをそのまま宣伝しているだけだったら、読んでくださっている方も気が付いてくれると思うのです!^^

また、これは事実として、書いておくべきと思うので書きますが、今回一条工務店が今回私にアセタミプリドに関する説明に来た際に、このことをブログに書け、とも、書くなとも言われませんでした。というか、書かれることはある程度覚悟してきていたとは思いますが^^;;

ただ、対応してくださった最初の雰囲気は、「何を書かれるか不安!」という感じでしたが、話をしていく中で徐々に打ち解けて話をすることができたと思っています^^;

私自身はあくまで中立の立場で、理解できないことは質問して、理解できる部分は理解し、自分で計算できる部分は計算をしてみて妥当性を検証するようにして話をしました。そもそも、私自身は当然日経新聞のニュースを読んだ段階では不安だったわけですが、自分自身で調べて、そして、直接話を聞いて理解を深めることによって、現在は全くと言って良いほど不安は持っていません。別に一条工務店の家が安全だ、などと言うつもりはありませんが、少なくとも今回の説明はきちんと聞いて理解することで安心することができたのは間違いありません。

今回、一条工務店と日本曹達の方が来て下さる前に最も懸念していたことは、何のデータも示さずに「安全です」の一点張りだったらどうしようかということでした。

しかし、今回の説明では、安全であると思われる根拠となるデータを示して、それを説明してくれただけで、安全であるかどうかの判断は私に任せるというスタンスで説明してくれました。

もちろん、データが嘘である可能性というのは否定できないわけですが、データの偽装というのは非常に大変な作業であるし、そもそも、実験データの改ざんというのはある程度経験がある人が見るとすぐにばれてしまうものと思います。私自身も一応、研究者ですから、たぶん偽装されたデータを見たら専門は全く違いますがある程度わかると思っています。

今回示してくれたデータのうち、ブログでは人間の呼吸量から安全性を示しましたが、他にEPSへの塗布量からの概算もしており、その結果からも安全性が高いと思っています。

また、これは自画自賛ではありますが、防蟻剤一つをとってこれだけ詳しく情報を知ることができるハウスメーカーを私は知りません。住宅の一要素ではありますが、防蟻剤の安全性やそのリスクについてこれだけ多くのことを知ることができるようにできた、というきっかけを私のブログが作れたならばそれは嬉しいな、と素直に思っています^^

そして、一条工務店がこれだけまじめに対応をしてくれたことは、本当にブログを読んでくださった方のおかげです。本当に感謝しきれないくらい感謝しています。本当にありがとうございます。

今後も、色々なことに疑問を持ったら書いていこうと思います!そして、それに対して回答をしてくれるならばきちんと聞いていきたいと思っています!\(^o^)/

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