こんばんは。さすけです。
以前、「ソイルセメントが土地の価値を目減りさせる!?地盤改良を提案されたら絶対すべきこと」と題して下記のブログを書かせていただきました。
[kanren postid=”10532″]内容としては、ソイルセメントや小口径鋼管杭による地盤改良工事を行った場合、将来土地を売却する際には地盤改良に用いたソイルセメントや小口径鋼管杭の撤去費用は土地の売り主、すなわち施主側の責任になっていること、そして、場合によってはソイルセメント撤去費用が高額になるケースが存在する事を指摘させていただきました。
上記の記事では具体的に1軒の情報をいただいたお宅の見積価格を事例として、ソイルセメントの施工費用約80万円、小口径鋼管杭を選択した場合、115万円となるという見積が出ていましたが、これを撤去するためには、ソイルセメントの場合の撤去費用が概算見積で約300万円、小口径鋼管杭の撤去費用だと約90万円と伝えられたケースをご紹介しました。
撤去費用までを考えると、小口径鋼管杭を選択した方が安くなるケースが存在する事になります。
そのため、撤去費用を踏まえてソイルセメントと小口径鋼管杭を選択するため、地盤改良工事を推奨された場合は、その撤去費用の見積を採ることを推奨させていただきました。
その後、数名の方が実際に一条工務店に対して問合せを行い、撤去費用の見積をもらい、その情報をご提供いただきましたので、両者の撤去費用についてご報告をさせていただきます。
ソイルセメントの撤去費用は土地の売り主負担
そもそも地盤改良をして、なぜ土地の価値が目減りしてしまうのかというのがわかりにくいかと思います。
家を建てる段階では家を地震から守ってくれる非常に頼もしい存在です。
しかし、購入した土地を売却する段階ではソイルセメントや小口径鋼管杭は「廃棄物」となり、それらを撤去した状態で売却するか、または、撤去に要する費用を土地の費用から差し引いての売却が求められます。
その根拠は、民法570条の規定にある「売主の瑕疵担保責任」によって定められており、多くの土地の売買契約書には土地を売却後であっても地下から廃棄物等が見つかった場合にはその撤去費用を売り主に求めることができるという条項が定められています。
そのため、土地を売却する段階では撤去を回避することはできなくなっています。
ソイルセメントや小口径鋼管杭は再利用できないの?
ソイルセメントや小口径鋼管杭は土地を転売後も再利用できれば、「廃棄物」とはならず、むしろ新しいソイルセメントや小口径鋼管杭を施工する費用を浮かせることができる「付加価値」となるように思われます。
しかし、残念ながら特殊なケースを除き、ソイルセメントや小口径鋼管杭の再利用は困難です。
なぜならば、地盤改良工事に伴うソイルセメントの施工位置や小口径鋼管杭の埋設位置は、住宅の間取りや構造によって大きく異なってきてしまうためです。
すなわち、古くなった住宅を取り壊して、「同一の間取りと広さ・構造(重さ)」の家を再建築するのであれば再利用可能ですが、そうでない限りは再利用ができないのです。
今回、色々と調べている中で、大手のハウスメーカーで家を建てられた方でソイルセメントを施工した住宅において不幸にも火災によって住宅が全焼してしまったという事例がありました。
こちらのケースでは、そのハウスメーカーがソイルセメントの正確な施工位置と強度に関する情報を有していたこと、そして、火災保険によって住宅を再建する関係で全く同一の上物を再建したことから、現場でのソイルセメントの強度試験を経て以前に施工されたソイルセメントを再利用した事例がありました。
しかし、このような事例を除き、通常は家の建て替えでは間取りなどを大きく変更するのが一般的であるため、ソイルセメントや小口径鋼管杭の再利用は困難であると考えるのが良いかと思われます。
ソイルセメントと小口径鋼管杭の撤去費用
以前、ソイルセメントと小口径鋼管杭の話をブログで書かせていただいた際は、ソイルセメントの施工費用が80万円、小口径鋼管杭にした場合の施工費用が115万円というケースにおいて、撤去費用はソイルセメントの場合約300万円、小口径鋼管杭が約90間年という見積を一条工務店から伝えられたケースをご紹介しました。
その後、ソイルセメントと小口径鋼管杭の撤去費用について一条工務店に見積を求めていただき、いくつかの事例が集まりましたのでご紹介します。
結論から言うと、撤去費用は業者によって大きくばらつきが出ておりほぼ同条件でも地域によって100万円単位で金額が変わってくるケースが存在するということです。
ソイルセメントと小口径鋼管杭の施工を勧められた場合は必ず両方の施工費用と撤去費用の見積を出してもらうことをお勧めします。
事例別の施工費用と撤去費用見積額:鋼管杭の方が高いケースも!
下記の事例はいずれも、一条工務店からの正式な回答による金額になっています。ただし、撤去費用については一条工務店が別業者に見積を取り寄せています。
事例1:前回のブログで紹介したケース
こちらは前回のブログで紹介させていただいたケースになります。
・ ソイルセメント:深さ5m×30本
ソイルセメント施工費用:78万円
ソイルセメント撤去費用:約240万円
ソイルセメント計:約318万円
・ 小口径鋼管杭:深さ11.5m×23本
小口径鋼管杭施工費用:115万円
小口径鋼管杭撤去費用:92万円
小口径鋼管杭計:207万円(おそらく重機の料金等が含まれておらず安く見積もられていそうです)
前回紹介させていただいたケースではソイルセメントは施工・撤去費用が約380万円、一方で小口径鋼管杭の施工・撤去費用は約210万円となっていました。
ただし、その後他の方の見積を拝見させていただく中で小口径鋼管杭の撤去費用が異常に安く見積もられていることが分かってきました。一般に小口径鋼管杭の撤去費用も200万円以上はするのが一般的なようです。
事例2:ソイルセメント・小口径鋼管杭共に56本施工のケース
・ ソイルセメント:深さ4.5m×56本
ソイルセメント施工費用:96万円
ソイルセメント撤去費用:380万円
ソイルセメント計:476万円
・ 小口径鋼管杭:8.5m×56本
小口径鋼管杭施工費用:193万円
小口径鋼管杭撤去費用:460万円
小口径鋼管杭計:653万円←小口径鋼管杭の方が高い
事例3:ソイルセメント・小口径鋼管杭共に56本施工のケース
・ ソイルセメント:深さ3.0m×40本
ソイルセメント施工費用:75万円
ソイルセメント撤去費用:197万円
ソイルセメント計:272万円
・ 小口径鋼管杭:5.0m×50本
小口径鋼管杭施工費用:112万円
小口径鋼管杭撤去費用:184万円
小口径鋼管杭計:296万円
撤去費用の大きな差
今回情報としては、一条工務店から施主の方が受け取られた見積書をお送りいただき拝見させていただきました。
見積は「一条工務店宛て」に発行されており、外部の業者に見積を依頼しているようでした。
そのため、業者によって撤去費用にはかなりの開きがあることがわかりました。
事例1のお宅ではソイルセメント1本あたりの撤去費用が約10万円、事例2のお宅では約7万円、事例3のお宅では約5万円となっていました。
一方で鋼管杭は、事例2のお宅で8万円/本、事例3のお宅で4万円/本となっていました。
いずれのケースも倍半分程度異なっていることになります。
ここまで費用がばらつくというのは、それだけ施工事例が少なく、結果としてある程度エイヤ!で見積を出していることが一つの要因と考えられます。
撤去費用の内訳はどうなっているの?
見積についてはいずれもその内訳は
- 1本あたりの撤去費用×本数
- 重機の利用料
- ソイルセメント・小口径鋼管杭の処分費用
の2つから構成されています。
いずれの見積ざっくりと①の費用が撤去費用の半分、そして残り半分が②+③で構成されているという点では変わりがありませんでした
このことから、撤去費用だけではなく、重機利用料や処分費用にも相当の金額がかかるといえそうです。
実際にどのような工事をするの?ケーシング工法
これは私も知らなかったのですが、杭の引き抜き工事は多くの場合「ケーシング工法」と呼ばれる工法によって行われるようでした。
工法の詳細は下記のページが詳しいですが、クレーンのような重機に杭よりも一回り大きな筒状の掘削機を取り付け、杭の周りの土ごと杭を引き抜いてしまう工法のようです。
これは、ソイルセメントでも鋼管杭でも同様の工法が取られるようです。
これは一条工務店による説明の又聞きではありますが、事例2のお宅では杭の引き抜き工事はソイルセメントでも小口径鋼管杭でも施工方法自体は上記のケーシング工法によるため、施工の深さが深い小口径鋼管杭の方が撤去に要する費用が高くなるとの説明があったようでした。
ただし、一条工務店のその説明にちょっと違和感を感じるのは事例3のお宅では、ソイルセメントよりも小口径鋼管杭の法が施行深さが深いにもかかわらず、撤去費用は小口径鋼管杭の方が安くなっているのです。
結局ソイルセメントと小口径鋼管杭どっちを選ぶ方がお得?
気になるのは、ソイルセメントと小口径鋼管杭のどちらを選ぶ方がお得か?ということかと思います。
当初は、私は引き抜きやすい小口径鋼管杭を選択する方がいずれのケースでも撤去まで含めた値段が安くなるだろうと思っていました。
しかし、実際には撤去費用はかなり大きくばらついてしまっており、撤去業者によって撤去費用に大きな開きがありそうだということが分かってきました。
ただし一つ言える事は、ソイルセメントであっても小口径鋼管杭であっても、施工費用の2倍前後の撤去費用が将来負担として待っているということは間違い無さそうです。
すなわち、地盤改良工事をした瞬間から将来の撤去費用という隠れた負債を追ってしまっているといえます。
現時点ではいずれか一方が必ず安くなる、ということはなく、地盤改良工事を推奨してきたハウスメーカーに対して施工費用とは別に撤去に要する費用の見積もあわせて出してもらい、両者を見比べて決定する以外にはないように思います。
現時点で出してもらう撤去費用の見積は何十年か先にその効力を発揮することはありません。しかし、消費者が「撤去に要する費用を気にしている」という強い意思表示になり、それは引いては数十年先に自分たちが本当にソイルセメントや小口径鋼管杭を撤去する際に向けた様々な検討を進めることを促すことができます。
また、法的拘束力はなくとも、あまりにも実態とかけ離れた見積であれば、将来にわたって道義的な効力は有すると思っています。特にそれが、一条工務店や積水ハウス、セキスイハイム、住友林業のような大企業であれば、風評への影響にもなり得ますから完全に無視するというのも困難だろうと思います。
自分自身の将来の万が一に供える意味でも、ハウスメーカーに因らず、地盤改良を進められたらその撤去費用の見積を受けておくことをお勧めします!