20年収益260万円!?一条工務店太陽光&蓄電池パッケージは本当に詐欺じゃないの??

こんばんは。さすけです\(^o^)/

太陽光&蓄電池パッケージのキャンペーンが11月末まで延期になったそうです。しかも限定枠が従来の1エリア20組から30組へと人数も1.5倍に拡大です。全国で1500世帯が対象となります。

この記事は

一条工務店蓄電システム:これは詐欺か革命か?

の続きです。

本日は、蓄電池の採算性に関するシミュレーションをご紹介しようと思っていたのですが、多くの方から情報をお寄せいただき一条工務店が「電力革命」と題した新しいプランがどのようなものなのか?何らかの制約はないのか?価格はどうなっているのか?さらに一条工務店として考える採算性はどの程度なのか?といったかなり詳細がわかってきましたのでご紹介させていただきます。

今回の内容はお客さんよりも営業さんに読んで欲しいと思っています。。。。だって、営業さんがお客さんに正しく説明できていないように思えてならないので。。。

最初に一番多くいただくお問い合わせで、パワコン9.9kWでソーラーパネル13.75kWも載せて本当に意味があるのか?というお問い合わせがあります。後ほど詳しい計算を示しますが、載せられるならばできる限り載せるべきです。例えば、10kWしか載せない場合よりも13.75kW載せた方が10年後の収益に約50万円もの差が生じます(中部電力管内の場合)。立地の関係で搭載量を減らさざるを得ない場合を除いて、載せられる限り載せるべきです。

目次

一条工務店太陽光&蓄電池パッケージの仕組と価格みについて

i-smart2以外でも採用できるの?

和風百年を除く全てのタイプで採用可能となっています。具体的には、i-smart、i-cubeはもちろん、新しいグランセゾン、そして旧セゾン、分譲地向けのi-palletやi-smileも対象となっています。

一条工務店の太陽光&蓄電池パッケージを契約可能な対象者は?

2019年10月1日以降の本契約者と仮契約者が対象となっており、さらに、2020年4月第三週(2020年4月13日)以降に上棟を予定されている方が対象となっているそうです。

ただし、10月1日以前に仮契約(土地が決定する前の契約)で、10月1日以降に本契約となった場合はパッケージ契約の対象となるそうです^^

よって、今から契約される方であっても今年度中引き渡しを希望される場合は対象外となるので注意が必要です。

また、現時点でお寄せいただいている情報の範囲では10月1日以前に本契約を済まされて、現在打合せが開始されているお宅では蓄電池の採用は軒並み不可との回答をされているようです。

北側に家が建つのでソーラーは載せないのだけど、蓄電池だけでも採用できる?

残念ながら今回のパッケージの対象外となっているようです。

今回の一条工務店の太陽光&蓄電池パッケージは太陽光発電システムとセットの導入が必須となっています。

その理由としては、今回の蓄電システムは太陽光発電システムに付いているパワーコンディショナーに接続して住宅に電力供給をする仕組みとなっているため、太陽光発電システムの導入がないと蓄電システムを接続することができないためです。

太陽光&蓄電池パッケージの「パッケージ内容」はどうなっているの?

ソーラーパネル+7.04kWh蓄電池+感震ブレーカー+IoT通信器+グリッド切り替え器がセットとなっています。それぞれの詳細は後ほど詳しく説明します。

太陽光&蓄電池パッケージの価格設定はどうなっているの?(一言で言えば激安です)

太陽光の容量のみで決定される価格設定

今回の一条工務店の太陽光蓄電池パッケージの価格設定は「太陽光の容量」のみによって決定します。

ソーラーパネルの搭載量が変化しても、蓄電池の容量やその他パッケージの構成(感震ブレーカー等)は同一です。

以下、全て税抜きで具体的にはソーラーパネルの容量が

  • 13.75kWの場合:パネル1kWあたり16.8万円/kW:合計231万円
  • 10.00kWの場合:パネル1kWあたり18.2万円/kW:合計182万円
  • 8.00kWの場合:パネル1kWあたり20.5万円/kW:合計164万円

となっています。ソーラーパネルの搭載量が少なくなるほど、パネルの単価が上昇する仕組みとなっています。

上記3パターン以外のソーラーパネル容量は選択できないの?

問い合わせてくださった方の情報に寄ればパネルの容量は任意に設定可能です。

例えば、パネル容量5.5kWしか載らない場合は5.5kWの選択などが可能です。ただし、その場合、パネル単価はさらに上昇します。

任意のパネル容量を選択した場合、価格はどうなるの?

これを知るためには、少し計算が必要です。また、あくまで概算ではありますが、大きく外れていることはないかと思います。

詳細を読むのが面倒な方は

パネル単価を11万5千円として計算し、そこに70.5万円を追加した額が、任意のパネル搭載量における太陽光&蓄電池パッケージの合計価格になります。

計算式は

パネル容量×ソーラーパネル単価(11.5万円/kW)+70.5万円(蓄電池等価格)

となります。

例えば、ソーラーパネル容量が5.5kWであれば

5.5kW×11.5万円/kW+70.5万円=133.75万円

が合計金額となります。パネル単価にすると

133.75万円/5.5kW = 24万3千円/kW

あたりの金額になろうかと思います。

パネル単価11.5万円、蓄電池等70.5万円とする根拠(興味のある方のみ読んでください)

なぜこのように金額が求まるかというと、今回のパッケージ価格を

ソーラーパネルの容量×パネル単価+蓄電池等その他のパッケージ価格

と仮定すると、先に明らかになっている3つの単価を用いることで「蓄電池価格」を求める二次方程式を簡単に得ることができます。

この二次方程式を微分して最小値を求めることで、パネル以外の蓄電池等の価格が約705千円とされていることがわかります^^中学校の数学ですね!

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蓄電池や感震ブレーカー等の固定費が70.5万円であることが分かったので、パネル単価も求めることができるようになり、パネル単価は11.5万円/kWで設定されていることが分かりました(゜д゜;)

この価格、、、、ちょっと異常な価格です。。。

現在の日本国内のソーラーパネルの単価は一般にかなり安い部類に入るもので、26万7300円/kWです。11.5万円/kWという価格は、統計で言えば完全な異常値です。。。一言で言えば安すぎて怖い価格設定です^^;ただ、このような価格設定で製造が行えているということが示唆されます。

もちろん、一条工務店のソーラーパネルは一条工務店で家を建てた人しか取り付けることができないため、屋根材の価格を差し引くことができたり、場合によっては住宅本体価格に転嫁させることができるなど通常の単体ソーラーパネルに比べれば遥かにやりくりしやすいため、安値を設定できることは事実ですが、極めて安いのは間違いありません。

蓄電池価格も、追加蓄電池が60万円で提供されていることを踏まえると、残りの約10万円がパワコンや感震ブレーカー等の機器費用とするとある程度妥当な価格となっていますが、、、こちらも市場価格と比較すると安すぎると言っても過言ではない価格設定となっています。ただ、テスラの蓄電池がパワコン込み99万円で13.5kWh、7.3万円/kWhと考えると、一条工務店の蓄電池は60万円で7.04kWhですので、8.5万円/kWhとなり、テスラの安さにまでは至っていないものの、経産省が描く2020年の蓄電池単価目標(9万円/kWh)を下回っており、十分に安いと言えます。

でも、テスラの方が安いならテスラを付けた方が良いかというと、それは間違っていて、テスラは後付けしかできないため、別途工事費等々が発生する事、また、現実的に11.5万円/kWで太陽光を設置することはできないため、テスラを採用するよりも一条工務店の蓄電池を採用する方が採算性が極めて高くなります。

値段については、どのような設定方法をしても現在国内で入手可能な蓄電池と太陽光のセットよりもかなり安いことは間違いありません。

独禁法の問題もあるため、原価割れはしていないと考えると、おそらく原価ギリギリで提供していると思われます。蓄電池メーカーやソーラーパネルメーカーはそれ自体で収支を黒字にしなければなりませんが、一条工務店の場合は、太陽光&蓄電池パッケージは、それ自体で赤字を出すことはできなくとも、ボロ儲けをする必要もないため住宅本体で収益を得られれば原価で提供できてしまうと言うようなカラクリではないかと思います。

太陽光&蓄電池パッケージ:蓄電池の性能面の仕様

蓄電池のメーカー:田淵電機製EIBIS7

一条工務店の宣伝資料では独自開発したかのように書いていますが、蓄電池を独自開発することはできません。

よって、実際には蓄電池メーカーが存在しているわけですが、今回一条工務店が太陽光&蓄電池パッケージで採用している蓄電池は田淵電機の「EIBIS7」という蓄電池になっています。

この蓄電池は2019年9月26日に田淵電機がプレスリリースをした蓄電池となっています。

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(出典:田淵電機プレスリリース

一条工務店が提供する田淵電機製蓄電池の仕様

蓄電池の容量:7.04kWh、実効容量6.68kWhの田淵電機製蓄電池

一般に蓄電池はカタログに記載された容量、一条工務店の場合は7.04kWhが全て利用できるわけではなく、実際にはカタログ上の容量のうち実際に使用できる容量は減少します。

その減少した容量を「実効容量」と呼びますが、使用できるのは実行容量分だけとなります。

一条工務店の蓄電池の実効容量はカタログ値の95%で6.68kWhとなっています。

それほど、低くもなく、とは言え、別に高くもなく、普通な蓄電池実効容量です^^

最も大きな特徴「リン酸鉄系」リチウムイオン蓄電池

寿命の長いリン酸鉄系リチウムイオン蓄電池

一条工務店が採用した蓄電池の最も大きな特徴はリン酸鉄系リチウムイオン蓄電池であるという点になります。

最も私たちが多く目にする大型の蓄電池は日産リーフのリチウムイオン蓄電池と思いますが、これは三元系リチウムイオン蓄電池と呼ばれており、高効率かつ高出力を特徴としています。

一方で、充放電を繰り返すと劣化が激しいというデメリットもありますが、自動車に車載する蓄電池では何よりも重量が軽い(小型、高効率)であることが重視されるため三元系が利用されています。

一方で、住宅用のリチウムイオン蓄電池では、その重量や大きさはあまり問題になりません。むしろ、住宅の寿命は自動車に比べても長く、効率よりも長寿命の方が遥かに重要視されます。

リン酸鉄系リチウムイオン蓄電池は、重量あたりの出力は低いものの、長寿命であるというメリットがあります。

リチウムイオン蓄電池の寿命はサイクル数というもので表現しますが、自動車に搭載されている三元系リチウムイオン蓄電池のサイクル数は一般に6千回とされていますが、リン酸鉄系リチウムイオン蓄電池のサイクル数は1.2万回と約2倍の寿命となっています。

1万2千回の充放電を繰り返すことができますよ、ということを意味しており、1日1回の充放電を繰り返した場合、32年10ヶ月以上にわたって充放電が可能なことを意味しています。

ただし、寿命まで使用する前に基盤などが壊れると思うので、32年間動作保証を得られる分けではない点には注意が必要です。

さらに1万2千回の充放電が可能であるとは言え、容量は初期の状態の60%、さらに効率も同程度に劣化します。

1万2千サイクルを経た蓄電池は蓄電容量は4.0kWhの蓄電池となっており、さらに、充放電効率も初期は1kWhの電力を蓄電すると0.965kWhが取り出せていたのが、0.579kWhしか取り出せない状態となります。すなわち、6.9kWhの電力を消費し、使うときには4kWhしか取り出せない状態となってしまいます。そのため、30年間使い続けるというのは少し現実的ではないように思われます

ただ、それはあまり問題ではなく、20年程度使用した時点でその時点で最もコストパフォーマンスの良い蓄電池に交換するか、必要なければ外してしまう、追加投資はしたくない場合はあくまで非常用電源としてのみ蓄電池を使用するよう設定を変更すれば良いだけなので問題はありません。

お寄せいただいている情報では営業さんによっては「30年使用できる蓄電池」と紹介されている方もいらっしゃるようですが、一条工務店が作成した資料でも「期待寿命20年以上」とされており、30年間使用できるというのはオーバーと思います。ただ、20年程度は使用できそうかな?と思います。

安全性の高いリン酸鉄系リチウムイオン蓄電池、でも安全性は三元系とそれほど変わらない

寿命の長さ以外にもう一つリン酸鉄系リチウムイオン蓄電池にはメリットがあります。それは「安全性の高さ」です。

ここで間違ってはいけないのは現在市場に流通している三元系リチウムイオン蓄電池が「危険」ということではありません。例えば日産リーフに採用している三元系リチウムイオン蓄電池であっても、例えば交通事故を起こすような大きな力が加わっても爆発するようなことがないよう、極めて厳重な安全対策が取られています。家庭用蓄電池についても同様に例えば住宅火災が生じても爆発をすることがないよう対応されています。その意味では三元系であってもリン酸鉄系であっても、利用者視点では安全性に変わりはありません。

しかし、大きな違いは「安全対策に要するコスト」です。リチウムイオン蓄電池に使用されているリチウムは爆発性のある危険物です。そのためリチウムイオン蓄電池はそれがどのうようなタイプであっても基本的には全て危険性を有しています。しかし、その危険性は正極材料などによって違いがあり、三元系に比べるとリン酸鉄系リチウムイオン蓄電池は何ら安全対策をとっていない状態の安全性は高くなっています。

市場に流通させるためには、三元系であろうとリン酸鉄系であろうと同程度の安全基準をクリアする必要があるわけですが、原理的に安全性が高いリン酸鉄系リチウムイオン蓄電池の方が三元系に比べれば安全対策によする手間、すなわちコストは低く済みます。結果的に、低コスト化が図りやすいというのがメリットとなります

個人的には、リン酸鉄系だから安全、三元系だから危険という宣伝はこれまで蓄電池開発を行ってきた開発者の方達を馬鹿にするもので、あまり気分の良い表現ではないように感じます。

変換効率:個人的にはちょっと眉唾感が??本当かは請うご期待!?

所詮はカタログスペックでの議論なので、それを鵜呑みにすることはできないのは当然なのですが、現時点では一条工務店製蓄電池は世の中には存在しないためカタログスペックで議論せざるを得ないのが現実です。

蓄電池で採算等に大きな影響を与える要素として「充放電効率」があります。

充電池は1kWhの電力を充電したとき、充電池の変換ロスによって放電できる電力量(取り出す事のできる電力量)は1kWhを下回ります。1kWh入力したときに、取り出せる電力量が0.9kWhであれば充放電効率90%と表現されます。

田淵電機製蓄電池のカタログスペックは96.5%となっています。すなわち1kWhを充電すると965Wを取り出せるという効率になります。これは、私自身が蓄電池を住宅に設置している経験から言うと、めちゃくちゃ高く感じます。我が家の実測ベースの充放電効率は80%程度となります。

ただ、我が家のケースは実測ベースで、カタログスペックとしては96.5%はやや高いものの、他メーカー、例えばシャープ製の蓄電システムの場合で変換効率95.5%96.0%NEC製でも96%なので、まあそのようなものなのだと思っています。

しかし、最も重要なのはカタログスペックではなく、実際の生活の中で利用している状態での充放電効率が重要になってきますが、残念ながら現時点ではこれを知る術はありません。充放電効率96%を目論んでそこでギリギリ収支が合う程度の収益であった場合、実際の充放電効率がカタログスペックを大きく下回った場合、損失に繋がるリスクもあるので注意は必要です。

後日ご紹介するシミュレーションでは仮ではありますが、充放電効率をカタログスペックよりも大きく下げた状態で収支がどの程度に変化するかを試算します。

リン酸鉄系を活かした全負荷対応と高速な充放電

今回の一条工務店の太陽光&蓄電池パッケージで採用されている蓄電池は、「全負荷対応」が謳われています。従来の一条工務店の太陽光発電システムでは、停電時は「非常用コンセント」として準備された1.5kW×2系統の独立したコンセントから電力が供給されました。

例えば停電が発生したあと、日中太陽光発電した電力で冷蔵庫を稼働させたいと思った場合、延長コードやリールコンセントなどを使って、非常用コンセントから冷蔵庫のコンセントに対して配線をし直さなければ冷蔵庫を稼働させることはできませんでした。

しかし、今回の全負荷型とは、停電時に「自立運転モードに切り替え操作」を行うことで、住宅全体の電力が蓄電池と太陽光発電によって賄われるようになっています。ようするに、停電時であっても全てのコンセントに対して電力が供給されることを意味しているのです

これを実現できた背景としては、リン酸鉄系リチウムイオン蓄電池の特性が大きく関係しています。通常リチウムイオン蓄電池では、大電力を充電しようとしたり、放電しようとすると内部リチウムの結晶構造が変化してしまい発火や爆発の危険が高くなってしまいます。そのため、一般にあまり大電流で蓄電をしたり、放電をしたりしないよう設計する必要がありました。しかし、リン酸鉄系リチウムイオン蓄電池は比較的高い電圧をかけても結晶構造の変化が起こりにくいという特性から、住宅全体の電力を賄うような電力を取り出すことができると言えます。

そのため、今回の一条工務店の太陽光&蓄電池パッケージでは、最大出力5.5kWhで電力を供給することができるようになっています。もちろん、5.5kWをフルで使用すれば1時間で5.5kWhを消費しますので、蓄電池はほぼ空っぽになってしまいます^^

ただ、日中の太陽光発電をしている時間であれば、13.75kWのパネルを搭載していれば、晴れていれば8kW程度は普通に発電するので、仮に5.5kWを全て使用したとしても、2.5kWの余りが生じ、これを蓄電池に蓄電するといったことができます。すなわちかなりの電力を消費しながらも蓄電も行えるようになります。

その他蓄電池設置上の注意点&面白いところ

蓄電池はもう一台を+60万円で追加可能

一条工務店の太陽光&蓄電池パッケージでは、通常7.04kWhの田淵電機製蓄電池が標準で含まれています。容量としては、実効容量で6.68kWhとなっており、通常の住宅の日中消費電力を最低限賄うことができるといった容量と思います。具体的には、IHを使った調理を行い、家族全員が一部屋で過ごして、空調は全館床暖房ではなく、一部屋で家族全員が集まって生活するようにして1部屋だけをエアコンによって冷暖房して1日を過ごす、冷蔵庫には蓄電池から電力を供給する、天気が良いようであれば昼間にエコキュートを稼働してお湯を沸かしておいて夜使うと行った使い方になろうかと思います。

しかし、2世帯住宅の場合や、そもそも家庭内の消費電力量が多いお宅であれば蓄電池をもう一台追加するという選択はあり得ると思います。一条工務店の太陽光&蓄電池パッケージでは蓄電池追加オプションも準備されており、全く同じ蓄電池を+60万円のオプション費用で追加可能になっています。

この蓄電池価格であっても、kWh単価9万円程度ですので十分に安くなっていますし、そもそも、太陽光の売電益が20年で200万円以上は見込めることを考えると採算は多少悪化しても安全を持ち出しなしで担保できると考えると十分に選択肢とはなり得るように思います。さらに、蓄電池をうまく使うことで、60万円をフルで回収することは難しくても、家によっては20万円程度であれば難なく回収できるケースもあります。十分なシミュレーションが必要となってきますが、採用の価値が全くないとは言えません。個人的には結構ありかな?とさえ思います。

なぜ感震ブレーカーが標準セットなのか?

一条工務店の太陽光&蓄電池パッケージではIoT通信機以外に「感震ブレーカー」もセットとなっています。感震ブレーカーを標準に組み込むことはこれは非常に良い設定と思いますし、一条工務店が単に「激安で蓄電池を提供しますよ~」というだけではなく、蓄電池の意味やリスクを網羅的に捉えてセットを考えたことの証拠とも思います。一条工務店は極めて真面目に蓄電池の位置づけを考えて今回のパッケージを考えたのだろうと思います。

感震ブレーカーというのは、強い地震を感知した際に多くの場合3分程度の通電を経て、その後住宅全体のブレーカーをオフにしてしまう装置です。

一般的な漏電ブレーカーが「漏電」を検知してブレーカーを落とすのに対して、感震ブレーカーは漏電がなくても大きな地震があった場合は強制的にブレーカーを落とします。

大きな地震が発生したことで様々な電気機器が散乱したり、場合によってはケーブルが断裂したりといった発火の危険を伴う危険な状態に晒されることがあります。そして、蓄電池を設置した一条工務店の住宅であれば、特に自動切り替えオプションが採用されている場合、安全確認が行われていない状態でも電源復帰が行われてしまい、最悪の場合出火を招くことも想定されます。

こうした事態を防止するために、感震ブレーカーを設置しておくことで、地震発生直後はどのようなオプションが採用されていても、さらに人間が強引にIoT通信機を通じて自立運転に切り替え操作をおこなってもそれを拒否して通電をできない状態にする仕様となっています

もし一条工務店が単に蓄電池を宣材ツールとするのであれば、感震ブレーカーをオプションにして、自動切り替え器を標準にすることもできたはずですが、安全上の観点からそうはしなかったという判断が見て取れます。そうしたことから蓄電池を真面目に考えたのだろうと思えます^^

ちなみに、この感震ブレーカーは、千葉市などのサイトでも「地震による電気火災対策には、感震ブレーカー等が効果的です」と記載があるように、有用性は確かなものです。しかし、お金がかかる&そもそも家を建てる際に知らないために、採用されることが少ない装置でもあります。そういったものが標準で採用されているというのは非常に意味のあることと思います。

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蓄電池の設置高さは全て地上から1.2m

今回の一条工務店の太陽光&蓄電池パッケージに付属する蓄電池は全てが「耐水害仕様」と同様に、地上からの高さ1.2mの位置に取り付けられます。

ただし、パワコンは通常は水切りからの高さ50cmの位置なので蓄電池よりもやや低い位置に取り付けられます。

一条工務店は全ての住宅を耐水害仕様にするつもりか?とも思ったのですが、そういうわけでもなく、これは確かに合理的と思われます。

もちろん、高さ1.2mに設置することで多少の浸水が発生した災害時においても電力を供給可能にするという意図はあるかと思いますが、それと同時に「設置の自由度」の観点から重要になっています。

というのも、今回の蓄電池は「パワコンから1マス以内に設置しなければならない」という設置要件があるためです。

設置のネックになるのでは?パワコンから1マス以内に設置

今回の一条工務店の太陽光&蓄電池パッケージに含まれる蓄電池は、パワコンから1マス以内(90cm以内)に設置しなければならないという制約があります。

わかりやすく言えば、パワコンを設置したらそのすぐ隣に蓄電池を設置しなければならないのです。

もしも、蓄電池が地上設置の場合、エアコンの室外機とエコキュートの室外機、さらには、床暖房の室外機といったかなりの機器が住宅の北側に設置されている状況で、パワコン+蓄電池最大2台で合計240cmほどの空間が必要になってしまいます。これは延べ床40坪以上であればなんとなかりますが、それ以下ではかなり厳しい条件となってしまいます。

一条工務店が考え出したのは、蓄電池を高さ120cmに設置してしまうと言う方法です。蓄電池を高さ120cmに設置するのは先に一条工務店が実験を公開した耐水害住宅の仕様と同一です。

120cmに設置することで水害があっても蓄電池が浸水しないというメリットがあると同時に「蓄電池の下に室外機がおける」という大きなメリットが得られます

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上の図が接地面を見た図ですが、上記のように蓄電池とパワコンの下に、室外機を設置できるため空間を有効活用することができます。

ただし、北側に窓を設けている場合、窓との干渉は気にしておく必要があります!

寒冷地での導入には注意が必要:動作温度-10℃以上

今回の一条工務店の蓄電池は動作温度が-10℃以上となっています。

現実的に日中でも-10℃を下回るというのは、北海道の旭川等よりもさらに寒冷な地域に限定されはしますが、札幌などでも冬期であれば夜間は蓄電池が使用できなくなる可能性はあります。

-10℃まで下回らないにしても、リチウムイオン蓄電池の特性上、寒冷地では使用で可能な電力はカタログスペックよりも大きく下回る可能性もあります。

寒冷地で蓄電池パッケージを採用される方は、是非蓄電池とパワコンの「外気温特性」の資料を入手して検討されることをお勧めします!

一条工務店の太陽光&蓄電池パッケージの「罠」:リモコンは多少お金を払ってでも必須?(要確認)

IoT通信機によって全ての処理をスマホで実現!

一条工務店の太陽光&蓄電池パッケージで付属するセット内容には、オプションで設置することはできますが、「家庭内リモコン(専用モニター)」は付属していません。

その代わり、発電量や蓄電池の利用状況、さらには蓄電池の設定変更などは全てスマートフォンで行うようになっています。そして、従来であれば、宅内のWifiに太陽光発電システムなどを接続するということを居住者が行わなければならなかったのですが、今回の新しい太陽光&蓄電池パッケージでは「IoT通信システム」がセットになっています。通信料金は当初20年分が込みとなっているようです。

このIoT通信システムは、おそらく3G4Gまたは各社のIoT向けの通信プランを一条工務店がまとめて契約をして宅内に設置する「専用のネットワーク回線」となっています。この専用回線が存在する事で、従来のように今日中者が自ら自宅のWifiと太陽光発電システムを接続するということが不要になりました。これは非常に大きなメリットと思います。

最近ではスマホの普及によって、住宅内にインターネット回線を契約しない方も増えてきましたし、仮に契約をしていてもWifi設定は結構面倒であるため一条工務店側が準備した専用線を使って常時モニタリングできるようにしたことは、居住者にとっても、またモニタリングを行う一条工務店にとってもメリットのあるものと思います。

そして、このIoT通信機が標準でセットされたことで、居住者は日常の発電状況や蓄電池の状態、さらには蓄電池の運転モードの変更などを全てこのIoT通信機を通じて行う、すなわち一条工務店のサーバ経由で行えるようになります。平常時はこれは色々とメリットがあります。

例えば、10年前のモニタリングシステムではどうしても画面は古くさい印象が出てきてしまいます。また、電気料金プランなども全て手動で設定する必要があったりと色々と手間がかかります。

しかし、IoT通信機器でデータを一条工務店のサーバに吸い上げ、サーバを経由して画面表示を行う仕組みであれば、画面は一条工務店側が常時最新のものを準備することで陳腐化を回避することが可能です。また、昨日の拡張も比較的容易に行え、故障の検知などにも活用が可能です。

こうした観点からIoT通信機器が標準セットになったのは非常に大きな進歩と思います。私自身は他の住宅メーカーでこのように顧客住宅全世帯に専用線を引いてネットワーク接続を実現するような取り組みを知りません。そういった意味でもかなり先進的な取り組みでもあると思います。

停電時であってもスマホがなければ切り替えできないのでは?(要確認)

このようにIoT通信機を標準セットに含めることで多くのメリットが得られることは間違いありません。そして、このようにIoT通信機をセットにしたことで、宅内のリモコンを排除し、これによって低コスト化にも寄与します。

ただ、、、、この点については、お寄せいただいた情報だけからは確信を持つに至っていませんが、現在の一条工務店の太陽光&蓄電池パッケージではモニタが付属しないため、「停電時に自立運転モードに切り替える処理もスマホで行う必要がある」と思われます。自立運転切り替えスイッチが準備されているという情報はどこにも記載がなく、田淵電機の資料にも記載がありませんので、自立運転への切り替えは、家庭内リモコンがない場合はスマホが必須になるように思われます。

従来の一条工務店太陽光発電システムには、家庭内リモコンが標準でセットされていました。先の北海道大停電の際にとりさんがアップされていた下記の記事をご覧頂ければおわかりのとおり、停電時には家庭内リモコンで「自立運転への切り替え操作」を行うことで、停電時であっても太陽光発電した電力を宅内で利用できる状態に切り替えることができました。

下記のとりさんの記事は、既に引き渡しを受けている方やこれから一条工務店の通常の太陽光発電システムを導入される方は、停電時にどう対処すれば良く分かると思いますので、是非一度ご覧になっておかれるとよいかと思います!

ここを長押し

(とりさん:一条工務店の太陽光発電。停電時の自立運転のやり方と、絶対に用意しておくべき物!

しかし、この家庭内のリモコンがなかったら自立運転の切り替えはどうなるでしょうか?

大規模な停電が発生した際には

  • 住宅内の蓄電システム&太陽光発電システム
  • IoT通信機とサーバのネットワーク
  • 居住者が所有するスマートフォンの電波(基地局)
  • 一条工務店のサーバ

4つが全て正常に稼働している状態でなければ、自立運転モードへの切り替えが行えないということを意味しているように思われます。

ここで一番の問題は、IoT通信機(おそらく携帯回線)と個人が所有するスマートフォンのインターネット接続が災害時に稼働しているかどうかということが、問題となります。

多くの大規模停電は、何らかの災害とセットで発生します。例えば、先の台風による豪雨被害であれば、自宅は浸水被害がなくても携帯基地局が低地にあり浸水してしまえばスマホのネットワークは切断されてしまいます。また、大規模な地震であればやはり電波塔が倒壊するなどによって切断してしまう可能性もあります。

携帯基地局自体に被害がなくとも大規模な停電が生じた場合、携帯基地局自体も電力を消費する以上停電の被害を受けます。

現在、ドコモ等では携帯基地局の24時間化(停電時でも24時間は稼働可能な状態)を実現するよう取り組みが行われています。そのため、多くの場合停電と同時にスマホが使用できなくなるという自体はそれほど多くはないと思われます。

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(出典:NTTドコモの災害対策より)

しかし、何らかの災害を経験された方であればおわかりのように、災害直後はスマホのネットワークや通話回線はほぼパンク状態になり、正常な通信を望むことはできません

また、一条工務店側のサーバがどこまでどのような対応を採っているかは不明ですが、平常時とは全く異なる大量のアクセスが発生し、各住宅の蓄電池の利用モード変更処理を全て正常にこなせるだけの準備が行われているのか?についても疑問が残ります。

平常時においてIoT通信機を通じた設定変更は極めて合理的ですし、有用ですが、非常時にまでIoT通信機経由でしか自立運転モードに切り替えられないのだとすると、場合によっては太陽光も発電していて、蓄電池も満タンなのにそれを一切使用することができない、というなんだかモヤモヤする事態を招きかねないように思います。

これから蓄電池を採用されるかは、非常時において、ネットワークを介さずに自立運転モードが準備されているか?という点をしっかりと確認することを強く推奨します。

万が一、非常時においてもスイッチ等ネットワークを介さない形で自立運転モードに切り替えることができない場合は

  • 自動切り替えオプション
  • 家庭内モニターオプション(現時点推奨)

のいずれかのオプションを採用することを強くお勧めします

さらには、うまく自立運転モードに切り替えができたとして、今度は復帰の問題もあります。例えば先の北海道の停電のように長期の停電が継続した後、住宅の系統電力が回復したけれど、携帯基地局がある地域の電力は回復していないためにスマホが使えないというケースも想定されます。そのようなケースでは、自立運転から通常の系統連携運転への切り替え操作が行えないといった可能性もあります。こうした災害発生時の様々な状況に対応するためにはIoT通信機を通じたネットワークからの制御だけというのはやや不安が残ります。

自動切り替えオプション(導入には要確認)

一条工務店の太陽光&蓄電池パッケージでは、オプションとして停電時の自動切り替えオプションが選択可能です(価格は不明?だれか教えてください^^)。

この自動切り替えとは、停電が発生した場合「自立運転モード」への自動切り替えを実現する装置となっています。停電が発生した場合、自動切り替えオプションを採用しているお宅では自動的に自立運転モードに切り替わり、住宅内の照明やその他全ての機器が蓄電池や太陽光が発電していれば太陽光発電によって賄われる状態に移行できます。

周囲が完全に停電していても、自動的に自分の家の中の照明等は正常な状態に移行できるため、わざわざ切り替え操作をおこなう必要がないのです。場合によっては停電に気づくことさえないかもしれません。

一見するとこれは非常に大きなメリットがあるように感じられるかと思います。

しかし、これは大きなデメリットにもなり得るものとなっています。

具体的には、冬期の夜間の停電時に問題が多く生じます。

例えば、真冬の深夜2時、全員が寝静まっている状態で停電が発生した場合を考えます。自動切り替えオプションがあれば、自動的に自立運転モードに切り替えが行われます。そして「エコキュートも自立運転してしまいます。」冬期のエコキュートは1時間あたり3kWh近くの電力を消費します。2時間もすると蓄電池は空っぽになってしまうのです。

朝、目が覚めて停電に気づいた時には既に蓄電池は空っぽになってしまっており、天気も悪ければせっかく蓄電池があるのに蓄電池が使用できないことになってしまいます。これはやはり大きなデメリットと思います。

夏であっても数kWhの電力は消費しますので、蓄電池が空にはならなくてもほぼ残量がないような状態になってしまいます。これではせっかくの蓄電池が意味を成しません。

そういった意味で、自動切り替えオプションを採用する場合は、「エコキュートもいっしょにコントロールができること」が必須要件になってくるのです。私のようにリーフなど電気自動車を使っている場合も自立運転モードに切り替わって全てが電気自動車の蓄電に使われてしまったのでは意味がありません。。。

自動切り替えオプションがどのようなものであるかは現時点では不明ですが、最低でも「自動切り替え時間」を設定できるものでなければ採用にはリスクがあると考える必要があります。

例えば、日中や朝夕など人が活動している時間のみ自動切り替えが可能となっているのであれば価値がありますが、そのような詳細な設定ができないのであれば蓄電池が勝手に空っぽになってしまう可能性があり、ややリスクの高いオプションのように思います。

一方で、自動切り替えオプションが必要なお宅としては、熱帯魚を飼育しているお宅、熱帯魚以外にも冷暖房を必要とする動物を飼育しているケースや、就寝中に電気で稼働する医療用器具(多くの場合蓄電池が付いていますが)などを利用しており、自分たちが気が付かないうちに停電してしまい、死滅してしまうようなことを避けたい設備がある場合には自動切り替えオプションは有効な選択肢となるかと思います。ただし、その場合は、蓄電池から電力が供給される際にはエコキュートが稼働しないよう設定するなどうまく対応をすることが必要です。

このようなことから、自動切り替えオプションは一見良さそうなのですが、導入にはややリスクがあるということは知っておくことが必要です。

家庭内専用モニターオプション(現時点推奨)

個人的には、現在まで得られている情報からはこちらの選択が正解のように思います。

今回の一条工務店の太陽光&蓄電池パッケージでは、家庭内に設置する専用モニターはオプションとなっています。この専用モニターでは手動で自立運転モードへの切り替えが行えるかと思います(要確認)。

専用モニターで自動切り替えを行うのは、先ほどのとりさんが紹介されていた自立運転モードへの切り替えと同様、人間が任意のタイミングで自立運転への切り替えを行うことになるため、夜間に停電が発生していて知らないうちに自立運転に切り替わり、気が付いたら蓄電池が空になっているという事態を避けることができます。

専用モニターで自立運転に切り替える場合は、IoT通信機を経由しないで自立運転への切り替えが可能になるはずです。よって、万が一大規模な停電によってスマホが使えないような状態であっても自立運転モードへの切り替え、停電回復後の系統連携運転への切り替えを専用モニターを通じて任意に行うことができるようになります。

金額等は不明ですが、直感的には数万円程度と思いますので、こちらを設置しておくことをお勧めします。

一条工務店の太陽光&蓄電池パッケージの採算性シミュレーション結果について

20年間の収益が260.4万円!?これって嘘じゃない??→あまり盛ってはいない。ただし、電力会社によって大きく異なる。

結論から言えば、ちょっと盛り気味かとは思いますが、それほどおかしな結果でもありません。

一条工務店の太陽光&蓄電池パッケージの宣材資料では、蓄電池と太陽光13.75kWのセットを導入することで20年間で260万円の収益が得られ、償却期間も7年5ヶ月で可能で、収益260.4万円というシミュレーション結果が示されています。

一方で、具体的な計算方法は後日ご紹介するとして、私の試算では中部電力管内で13.75kWのパネル+蓄電池7kWhを仮定して200万円以上の収益となっています。

計算の前提条件や使用しているパラメーターの違い、私自身ややや厳しめの計算をしていることなどを考えるとそれほど大きく外している金額ではないと思います。

ただ、先にも言ったように、これは中部電力管内においては正しい結果ですが、中部電力管内以外では結果は大きく異なってきます。そして、最もシミュレーションの結果が良くなるのが中部電力管内です。

そうは言っても、最も結果の悪くなる北海道でも150万円以上の収益があるので、損をすることはないかな?と思います。

蓄電池パッケージを導入される際は、必ず「自分が家を建てる地域の電力会社の場合のシミュレーション結果」を要求するようにして下さい。

太陽光発電もそうですが、余剰売電方式+蓄電池を利用する場合は電力会社の電気料金プランに大きく依存します。また、シミュレーション割れを招く可能性としては、将来の電気料金プランの変更や電気料金の「値下げ」があった場合、期待する収益を得られない可能性もあり得ます。ただし、現状、電気料金が半額になることは想定できませんので、採算割れはないかな?と思います。

何よりも、採算性は「電力会社によって大きく異なっている」という点だけは注意が必要です。

蓄電池の運転方式は「電力会社に依存」

一条工務店の宣材資料では、蓄電池の運転パターンとして、当初10年間は深夜蓄電、11年目以降は太陽光蓄電というモードでシミュレーションをしています。

これは、現在の中部電力管内に関して言えば妥当です。

シミュレーションというものである以上、将来の電気料金は分からない中で採算性を計算しなければならないわけですから一定程度は仕方ないわけですが、将来電気料金が上昇した場合、特に深夜電気料金が上昇した場合や、何よりも可能性が高いものとして今後も再エネ賦課金が上昇した場合は、運転モードを深夜蓄電モードではなく「太陽光蓄電モード」に切り替えた方がメリットが大きくなる可能性は十分にあります。

また、現時点においても東電管内や四国電力管内などの場合は、深夜蓄電よりも最初から太陽光蓄電の方がメリットが大きくなる可能性もあります。

現時点おいては概ね一条工務店の設定で問題があることはありませんが、近い将来の電気料金上昇によって運転モードの切り替えが必要になる可能性は十分にあり得ます。しかし、こういった制御を生活者が自ら行うことには限界があります。

ここで、是非とも「有償であっても良いと思うので」一条工務店の太陽光&蓄電池パッケージに含まれるIoT通信機器をフル活用して、一条工務店が自動的に運転モードの自動制御をして欲しいな~と思います\(^o^)/

有償なんて嫌だという方もいらっしゃるかもしれませんが、一条工務店が例えば月額千円で自動制御してくれるとするならば、結果的に年間の収益が3万円上昇するとしたら有償での契約をしたとしても十分に元が取れます。そして、そのような運転モードの最適制御は、現状の一条工務店の太陽光&蓄電池パッケージであれば十分に可能と思います。

一条工務店は今後も継続的に蓄電池に力を入れていくのか?

間違いなく入れていく

今回の一条工務店の太陽光&蓄電池パッケージが、一発屋的なものであるのか、それとも今後継続的に蓄電池を販売していくのかは、これから家を建てる方にとって重要な問題と思います。

現状、得られている情報の範囲内ではまず間違いなく今後継続的に蓄電池を販売していくと予想されます。その最も顕著な理由が田淵電機のプレスリリース資料にあります。

田淵電機のプレスリリースによれば、今回一条工務店が採用した蓄電池の年間生産台数は15000台を予定しています。

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田淵電機は2018年に事業再生ADRを申請しており、自立再建が困難になり、わかりやすく言えば倒産一歩手前まで行っていました。田淵電機の有価証券報告書を確認する限り(現在は上場廃止)、それほど大手のハウスメーカーやソーラーパネルメーカーにパワコンを提供しておらず、この販売目標15000台の大半は一条工務店向けを目論んだものと考えて間違いないかと思います。

何しろプレスリリースにi-smartが写ってしまうくらいには強い関係の中で蓄電池が開発されたことは間違いありません。

下のプレスリリースの中にあった、蓄電池設置イメージの図が、もの凄くi-smartなので、田淵電機側が一条工務店向けにプレゼンするために外壁等を一条工務店の仕様に合わせてイメージ図を作っていたことが伺えます^^;

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年間生産台数15000台、一条工務店の年間施工等数は約12000軒、過去の夢発電システムの実績と今回の価格設定を考えれば、建築世帯のうち90%において蓄電システムが採用されると考えることは合理的と思われます。

すると、15000台の内1万台は一条工務店が購入することを想定していると思われます。

一条工務店が1万軒に設置するという目標を掲げているとするならば、それは一過性のキャンペーンで終わることはなく今後継続的に蓄電池を提供し続けることは間違いないと推定できます。

高出力パネルの位置づけ

蓄電池とはあまり関係ない:メリットはより小さな家でも大容量ソーラーが可能な事

今回の一条工務店の太陽光&蓄電池パッケージの説明資料等を拝見していると蓄電池と併せて「高出力ソーラーパネル」を強くアピールしているのが見受けられます。

基本的に高出力パネルと蓄電池は全く無関係に考えるべきものです。

高出力パネルのメリットは一言で言えば、従来よりも小さな家でも大容量のソーラーパネルが搭載できる、ということに尽きます。それ以上でも、それ以下でもありません。高出力、高性能パネルだからその他に何かメリットがあるか?というと特にありません。

一条工務店が「高出力パネル」と表現しているのは、パネル1枚の発電能力が従来の210Wであったのが、新しいパネルでは240Wになったというだけのものです。いや、それでも高効率ではあるのですが、本質的に効率は消費者にとっては意味がありませんので、別に高性能でも、高出力でも何かがすごいわけでも、高出力だからいままで使えなかった機器が使えるようになるわけでもありません。

一条工務店では、従来から横1324mm、縦1016mmのソーラーパネルを採用していました。そして、一条工務店ではこのソーラーパネルを屋根一面に55枚並べることができます。

従来の210Wタイプだと

0.21kW×55枚=11.55kW

のパネルがパワコン1台でサポート可能な限界でした。これに対して、新しいパネルだと

0.25kW×55枚=13.75kW

がパワコン1台に接続可能になりました。同じ屋根面積、すなわち住宅の面積でも従来よりも約1.2倍のソーラーパネルを搭載できるようになったことが高出力パネルの意義になります。

パネル過積載の位置づけ:パワコン10kW未満、パネル13.75kWに意味はあるのか?

パネルが10kW以上なのに、10kW未満の売電価格ってルール的に大丈夫?

はい。大丈夫です。

この点は多くの方からお問い合わせをいただきましたがルール上全く問題ありません。

売電単価や売電期間はソーラーパネルの搭載量によって決定されるものではなく、パワコンの「出力」、正しくは系統連携出力によって決定されます。

仮にパネルが49W乗っていても、系統と接続したパワコンが9.9kWしかなければ、売電単価は10W未満が適用となります。

現在の固定価格買取制度は全てが「出力」によって決定されており、パネルの搭載量は無関係なのです^^

パワコン9.9kW、パネルが13.75kWで損はしないの?

ほぼ損はありません。

具体的に見てみましょう。こちらのグラフはブログをご覧になっていただいてる方から提供をいただいた「結晶系シリコン」ソーラーパネルを採用されているお宅の発電開始初年度の発電実績データから、仮に13.75kWのソーラーパネルを搭載していると仮定して計算した発電電力量の1年分の実績データです。我が家は多結晶系ですので、発電の傾向が異なりますので、今回の一条工務店の太陽光発電システムと同様の結晶系シリコンのデータで検証を行います。

発電開始初年度のパネルの劣化等がない、もっとも条件の良い時点の結果で見るとしたの赤線よりも上の発電部分は全て捨てるということになります。

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3月~7月まで一定の頻度で9.9kWの発電を超えて、捨てるケースが多い様に見受けられます。

この状態だと、捨てる量が多く損をしているようにも見えます。そこで、もう少し定量的に検証をしていきます。

上のケースで年間の総発電電力量は17760kWhでした。これに対して、9.9kWを超えて発電した電力量は25.4kWhに過ぎませんでした。比率で言えば、年間の総発電量のうち、捨てることになった電力量は全体の0.1%に過ぎなかったことが分かります

ただ、上記は1時間の積算の発電電力量が9.9kWを超えないという条件で設定しており、正しくありません。実際には、例えば最初の30分間は12kWを超えて発電していたのに、その後やや雲がかかって8kWになってしまい1時間の総発電量が見かけ上9.9kWを下回って表示されているといったケースが存在し得るためです。そこで、ここでは、もう少し厳しく8.9kWh以上を発電した場合は発電電力を捨てるというケースを仮定して試算します。

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このケースでは、2月~10月頃までの年間を通じてかなりの量の発電電力量を捨てるように見えます。

上記のケースでも年間の総発電電力量は17760.5kWhは同じで、捨てる量は233.2kWhと先ほどの約10倍になります。しかし、それであっても年間の総発電電力量のうち捨てた比率は1.3%と全体の100分の1程度の影響しかありませんでした。

上記は発電開始初年度ですが、その後年率1%~2%発電性能が劣化していくため、翌年には捨てる電力量はほぼゼロになります。

よって、ソーラーパネルを過積載状態にしても、損失はほぼありません。

それでもパネルも10kW未満にしておいた方が良いのでは?

それでも捨てる分がある以上、ソーラーパネルの搭載量はパワコンと同様量未満にした方が良いのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

そこで、仮に上記のお宅でソーラーパネルをパワコンと同一用量の9.9kWにした場合の総発電電力量を見てみます。

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この場合、最大の発電電力量は8kWhを超えないことも分かりました。

この場合、年間の総発電電力量は12787kWhになってしまいました!13.75kWを搭載した場合の総発電量は17760kWhであったことを考えると総発電量が28%減となったことを意味し増す!

計算が少し大変なので、やや雑に計算しますが、13.75kWのソーラーパネルを搭載した住宅の10年間の総発電電力量はざっくり16万8千kWhとなります。これに対して9.9kWのソーラーパネルを設置したお宅の10年間の総発電電力量は12万1千kWhとなります。その差は4.7万kWhとなり、1kWhの売電単価を来年度の売電単価として21円/kWhを仮定すると、99万2千円の差が生じます。

一方で蓄電池の価格等を考慮しないで、今回の一条工務店の太陽光&蓄電池パッケージの価格として、13.75kWhを搭載した場合の合計価格231万円、対して9.9kWのパネルを搭載した場合で182万円となります。初期投資費用の差額は231万円ー182万円=49万円でしたが、得られた収益は99万円となるので、全く同じ家でも10Wしかパネルを載せない場合に比べて支払ローンを考えても手元に約50万円も残ることを意味します

住宅面積や立地の都合上、どうしてもパネル搭載量が多くの載せられない場合は別として、あえてパネル搭載量を減らすことに全く合理性はありません。

ソーラーパネルの安全性上のQ&A

そもそも9.9kWのパワコンに13.75kWのパネルを載せても問題ないの?

問題ありません。そもそも13.75kWのソーラーパネルを搭載しても9.9kW以上の発電することは極めて希(年間の総発電量の0.5%以下)に過ぎません。仮にパワコンの出力以上に発電しても、パワコン自体の安全装置によって、出力は9.9kWになり、残った電力は捨てられるだけですので特に問題はありません。

1月にあった消費者庁のソーラーパネル発火事象への対策は大丈夫?

私が出火元^^;ではありますが、一条工務店の施工方法は2019年1月末に消費者庁が指摘したソーラーパネルからの発火事象において火災の危険性があるとされた工法によっていました。

https://www.smarthouse2.com/?p=16628

具体的には、消費者庁が火災の危険性があると指摘した11万5千棟のうち、約6万棟が一条工務店の家であったという問題です。

これについては、一条工務店は自然鎮火を目論んでいるように思える中で、なんで出火元の渡した火消しをしなければならないのか?と思うのですが、現在建築中のお宅、そして今回の一条工務店の太陽光&蓄電池パッケージの対象となるお宅は無関係となっています。さらに言えば、別に一条工務店が手抜き工事をしたという話でもなく、予見できなかった問題が指摘されたという問題であって、今後一条工務店が引き渡しの家、特に私の家!!!(対象住宅ですよ!)にどのような対応をとってくれるのかな~と眺めてはいますが、今後建築されるお宅については既に施工方法が変更され、少なくとも消費者庁の指摘については対策済となっています。

対策としてはソーラーパネルの下に不燃材としてケイ酸カルシウム板という不燃材を施工することで、発火が生じても火災に至らないよう施工されるようになっていますので、大丈夫と思います。何度も言いますが、我が家は不燃材入ってませんよ~\(^o^)/

私は一条工務店の回し者ではないのですが、今回の一条工務店の蓄電パッケージに関しては、どう突っ込んでも顧客メリットが大きく、損がほとんどないという点で、素晴らし内容となっているように思います。ただ、細かいところでは、エコキュートの運転を自動的に制御できるかなどまだまだ課題もありますし、もっと言えば、より顧客メリットを大きくすることも可能と思います。是非とも、頑張って欲しいな~と思います\(^o^)/