フロアコーティングをする?しない?Part4:EBコートは特別なコーティング?

こんにちは。さすけです\(^o^)/

フロアコーティングシリーズ第4弾です!

今回はEBコートについての最終回となります\(^o^)/4回も書いておいてまだフロアコーティングに入れていないです。。。^^;

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前回のあらすじ

前回は一条工務店i-smartのフローリングを例として、EBコートが施された床材の断面、表面を顕微鏡で確認してみました。

200倍に拡大すると・・・

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このように、人口的な凸凹を見て取ることができるようになり、一条工務店i-smartの床材が無垢材ではなく、シートフローリングである事が確認できるかと思います^^

シートフローリングというのは表面に木目がプリントされたシートが貼られているだけですから、表面にカッターナイフでキズを付けると・・・

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このように、キズが付いて中身が見えてしまいます。。。また、もう少し範囲を広げて表面シートを引っぺがしてみると??

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このようにシートの下に見える高密度繊維板と呼ばれる、内部部材が見えてしまいます。。。

これが前回までに見てきたことでした^^

露出してしまった高密度繊維板(HDF)とは?

いくつかの簡単な実験で、i-smartの床材の表面シートのすぐ下には高密度繊維板(HDF)という部材が使用されていることがわかりました。

そして、i-smartのフローリングのシートは薄く、キズが付いてしまうと簡単にHDFが露出してしまうこともわかってきました。

ここで、高密度繊維板(HDF)とは何かについて少し書いておきます。HDFというのは、ざっくり言ってしまえば、非常に丈夫な段ボールのようなものです。

一般には、高密度繊維板よりも密度の低い、中密度繊維板(MDF)の方が有名かと思います。MDFはカラーボックスのようなものによく使われています。MDFは水がしみこみやすく、内部でカビが発生しやすいという問題があります。

一般に、HDFとMDFの違いはその密度の高さになります。HDFはMDFに比べて密度が高いため、水濡れなどに対する耐性が強くなっているとされています。

高密度繊維板(HDF)は形状的にに材木としては使用できないような間伐材やリサイクル材、木材加工工程で出てくる端材のような木材を繊維状になるまでばらし、それを固めてボード上に加工したものになります。

高密度繊維板(HDF)の特徴はその頑丈さ、そして無垢の木材に比べて、乾燥による”そり”や”割れ”が起こりにくく、非常に扱いやすい部材となっています。また、MDF程ではないですが、価格が安いという特徴があります。そのため、大量に、安定した品質の板材を供給できるというメリットがあります。

先ほども書いたとおり、一般に高密度繊維板(HDF)は木材と比べると湿気や水濡れに弱くなります

また、何よりも先の写真の通り、MDFが露出してしまった状態は見た目が良くありませんので、オレフィンシートや透明エンボスシートと呼ばれるシートを表面に貼り付けることで、木目調のフローリングに仕上げてあります。実際にi-smartの床材もそのようになっていることが確認できました。

なぜ無垢材が好まれるのか?

しばしば、無垢材は傷が付いても味わいがでるけど、プリントシートの床材はキズが付くと汚らしくなってしますと言われることがあります。

無垢材が好まれる理由の一つは、まさにここにあると思います。

無垢材であれば、ものを落としたり、仮にカッターでキズを着けても、下から「異なる材質の部材」が見えてくるようなことはなくて、キズの下から見えてくるのは「同種の木材」です。しかし、i-smartの床材のように、プリントされたシートが貼ってあるだけであれば、キズが付くと、下からHDFが覗いてしまいます。。。

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で見てわかるとおり、このような状態になった床は綺麗とは言いがたいかと思います^^;;

これが無垢材であれば、多少の凹みなどであれば濡れ雑巾を当ててアイロンを掛けることで元通りになりますし、キズがひどければ表面にやすりを掛けるなどすることで綺麗な状態にすることができます。

シートフローリングでは、無垢材のような補修方法はなく、パテ等で埋めることしかできません。。。

そして、シートフローリングの欠点として、このオレフィンシートや透明エンボスシートというのは一般に非常にキズつきやすい部材であり、生活の中でものを落としたり、それこそ爪でひっかいてしまうことで破けてしまいます。

これでは、困ってしまいまうので、シートフローリングにはEBコートのようなコーティングが不可欠となるのです。

EBコートは特別に優れたコーティングなの?

これは、なかなか難しい問題です。おそらく営業さんなどによって、「EBコートはスゴイ技術で、特別なコーティングで、EBコートがされていれば十分」であるかのように、話している方もいるように思います。

個人的には、EBコートという技術を開発したことはすごいことと思いますし、これまでのワックスフリーのあり方を変える程度に素晴らしい技術と思います。

しかし、”完璧なコーティング”であったり、”EBコートがされていれば十分か”と言われるとちょっと疑問を持たざるを得ないのが正直なところです

個人的に、EBコートが革新的と思われるのは、その「生産効率の高さ」であると思います。

UVコートでは、コーティング剤を固化させるのにだいたい十秒程度の紫外線の照射が必要になります。

それに対してEBコートは、1秒未満の電子線の照射によってコーティング剤を固化させることができます。(参考:EB(電子線) 技術的なデータ

一般的な感覚では1秒でも10秒でもそんなに変わらないじゃないか?と思うかも知れません。

しかし、i-smartのフローリング材のように大量生産される場合を考えると、この照射時間は生産量そのものに大きな影響を与えます。単純に考えてEBコートはUVコートに比べて生産効率が10倍も高くなるのです。

これはすぐさまコストに跳ね返って来ます。

実際に例を見てみましょう。

EBコートの特徴は?

建築資材生産大手の永大産業では、EBコーティングされたフローリング材とUVコーティングされたフローリング材の両方を販売しています。両者の違いはコーティング以外は全く同一の床材です。

* EBコーティングされた床材:永大産業 エコメッセージSアトムV

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価格は12290円です。
* UVコーティングされた床材:永大産業 エコメッセージSアトムボーダー
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価格は15400円です。

UVコーティングされた床材に比べると、EBコーティングされた床材は約2割、坪あたりで約3000円ほど安いことがわかります。

EBコートはコストパフォーマンス追求型コーティング

上記の例でもわかるとおり、EBコートというのは「高級なもの」という位置づけではなく、コストパフォーマンスを追求したコーティングなのだと思います。

また、後日ご紹介させていただく実験の結果からもEBコートも、さらにはUVコートでさえ「完璧」と言うものではなく、それ故にEBコートをしてあるからUVコートは不要、というのは言い過ぎと思います

もちろん、価格が高ければ良いもので、価格が安ければ悪いものなどと言うことは全くありません。しかし、だからといって、あたかも「EBコート」がなんだか特別にもの凄いコーティングであるかのように説明するのはやっぱり、ちょっとおかしいと思います。

EBコートはシートフローリングには不可欠

別に顧客的には問題は無いのですが、EBコートはワックスフリーのために開発されたコーティングではありません。

EBコートは必然的にワックスフリーになってしまうのです。もっと言うならば、EBコートをしてあるフローリングはワックスをしたくてもできなくなってしまうのです

「EBコートをしてあるからワックスをしなくて良い」のではなく、「EBコートをしてあるとワックスができなくなってしまう」というのが正しい言い方です。ただ、その点は使用者に取ってみればメリットにもなるので、良い部分でもあります^^

ただ、EBコートとシートフローリングの開発経緯を調べる限りは、シートフローリングは大量生産が可能で低価格というメリットがある一方で、キズなどに弱い欠点がありました。爪などで容易に剥がれてしまい、耐久性が悪かったのです。そこで、大量生産に向いたEBコートをすることによって、傷つきやすさを軽減し、ワックスフリーをアピールすることによって、顧客の満足度を上げてきたというのが事実と思います。

シートフローリングを使用する以上、EBコート等の何らかのコーティングやワックスをしなければ、非常に傷つきやすいフローリングとなってしまうのです。それこそ、コーティングをしていないシートフローリングではワックス掛けは必須になります。。。それでは面倒です。。。一条工務店の家は坪単価で70万円程度と、それなりの価格の住宅ですから、さすがに何もしていないフローリングを使ってしまえば将来のクレームになってしまうと思います。

シートフローリングの大量生産が可能というメリットを損なうことなく、シートフローリングの表面を保護するコーティングというものが求められてきた中で広く使われるようになったのがEBコートなのだろうと思います。ですから、EBコートが何に優れているかと聞かれれば、それはやはり「大量生産性が高い」ことなのだろうと思います。

この大量生産性、すなわち低コストという観点では、エコプロコートなどが行っているUVコートも、ガラスコートもEBコートには太刀打ちできないと思います。だって、エコプロなんて、現場に来て1~2日がかりで作業しなくちゃいけない分けですから必然的にEBコートよりも高くなります。

EBコートはすごいコーティングなんじゃないの?

こうして書いてくると「?」と思われる方もいらっしゃる課と思います。

営業さんの中にはEBコートは一条工務店のフローリングで使用されている”特別なコーティング”のように説明してる方がいらっしゃるようですが、その点は明らかな間違いです。EBコートは上記のように、価格が安く、生産効率も高いため広く普及した一般的なコーティングです。

ぶっちゃけもっと言ってしまえば、EBコーティングされたフローリングというのは一条工務店の専売特許でもなんでもなくて、どこのハウスメーカーでも地元の工務店でも使われている非常に一般的なフローリングです。。。

例えば、555万円の家のコマーシャルで有名なアイダ設計の家のフローリングも標準でEBコーティングがされています。また、住友林業などにおいてもEBコートされた床材を選択することができます。EBコーティングされた床材は、ローコストメーカーから、値段の高いハウスメーカー、そして地元の工務店まで、非常に広く普及したコーティングです。

記事中でも少し書きましたが、その生産性の高さから私自身はEBコートは非常に良いコーティングだと思います。しかし、それをあたかも特別なコーティングのように宣伝するのは、やっぱりちょっとおかしいと思うのです。

どうか誤解しないでいただきたいのは、私は安いことが悪いことだとは全く思っていません。むしろ、コストパフォーマンスを追求していく姿勢は素晴らしいことと思っています。しかし、顧客の側にきちんとした説明をせずに、あたかも特別なものであるかのように説明することは良くないと思っているだけです。

まとめ

フローリングシリーズPart2、Part3、Part4の3回を通じてEBコートとは何なのか?について見てきました。

EBコートというのは、電子線を使って、コーティング剤を固化させる方法で、電子線であるか、紫外線であるかの違いはありますが、EBコートも、UVコートも基本的には同種のコーティングである事がわかりました。そして、表面の拡大写真を調べていく中で、EBコートというのはUVコートに比べるとかなり薄いものであるということがわかってきました。

また、i-smartの床材は、実際の所は表面に0.15mm程度の木目プリントシートが貼られているだけで、この0.15mmのシートをはぎ取ると高密度繊維板(HDF)と呼ばれる部材が露出してしまうこともわかりました。

そして、EBコートというのはコストパフォーマンスを追求したコーティングである事もわかってきました。そうなってくるとやっぱりUVコートなどのいわゆる高いコーティングと比べてどの程度の効果が期待できるのかと言うことに俄然興味がわいてきます^^

次回以降は、具体的にEBコートとUVコートの違いを見ていきたいと思います\(^o^)/

このシリーズばかり書いていてもなんですから、他のことも書きつつ書いていければと思っています^^