東日本大震災から4年が経過しました。
震災では原子力発電所の事故や津波被害と同時に、多くの地域で地盤の液状化が発生し、これにより住宅が住めなくなるような被害が発生しました。
東日本大震災では福島第一原発の問題、そして津波の被害があまりにも甚大であったため、地盤液状化についての情報は、津波被害に比べると非常に情報が少ないものとなっていました。
しかしながら、ご存じの方も多いかとは思いますが、千葉県浦安市などでは大規模な液状化被害が発生して、住宅ローンが残った家が多く全半壊したといったことが発生しました。
現在では土地を購入して家を建てる際には地盤調査が行われるようになっており、大地震が起こって家が倒壊してからはじめて緩い地盤である事が分かった、ということは減少していると思います。
しかし、地盤調査の段階では既に土地は購入済になっており、そこで液状化しやすい土地であることが分かっても、手遅れ間は否めません。もちろん、知らずに家を建てるのではなく、地盤調査をした結果、一定の対応を取れるという意味では重要です。しかし、それには費用がかかります。。。
できることならば土地を購入する前にその土地が液状化しやすい土地なのかどうか、確実ではなくとも可能な範囲で自分で確認したいと考えるのではないかと思います。
現在は、自分自身で地盤を調べることが非常に容易になっています。本日は、土地を購入する前に、購入を検討している土地の地盤が液状化の被害に遭う可能性が高いのか、低いのか、そして地盤が脆弱である可能性がないか、そういったことを簡易に調べる方法をご紹介します。
ご紹介する方法は完璧な方法ではありません。しかし、何も確認せずに土地を購入するよりは遥かに良い結果を得られるのではないかと思います。
土地の状態を事前に自分で確認することの重要性:浦安市の事例
液状化被害に遭わないためには地盤調査をすることはもちろんですが、自分自身である程度身を守らざるを得ないように考えています。東京ディズニーランドも立地している千葉県浦安市では、大規模な埋め立て地に造成された分譲地で液状化被害が発生しまいた。
千葉県浦安市の液状化被害軒数は東京湾エリアとしては最大の8776棟で液状化の被害が報告されています(ミサワホーム総合研究所 戸建て住宅の液状化に関する課題より)。
液状化によって被害にあった浦安市の分譲地のうち、1981年に三井不動産が分譲した「パークシティ・タウンハウスⅢ」の住人36人が原告となって、三井不動産と三井不動産レジデンシャルを相手取って8.4億円の集団訴訟が起こされました。
2014年10月8日、東京地方裁判所は住民側の訴えを棄却する判決を出しました。すなわち、住民側の敗訴となりました。裁判では、「東日本大震災規模の地震が起き深刻な液状化被害が発生することは予測困難、液状化現象の発生予防を目的とした地盤改良工事を行う義務があったとはいえない」(住宅産業新聞)といった判断が成されました。これは複数起こされている東日本大震災液状化裁判の中で最初の判決と言うことで大きな注目を集めていました。
この結果だけ聞くと、三井不動産が完璧な対応をしたから住民が敗訴したのか?とも思わなくもないのですが、
「三井側が住民に応対したのは、訴状を読む限り2回だけ。これでは住民が納得できるはずがない。1mの深さからゴミがボロボロ出てくるというのも、三井側に相当不利です。1mという深さはどのような工法でも基礎工事の段階で気づくはずです。建物がいくら立派でも、基礎のゴミを処理せずに建物を建てるなど、建築の常識として有り得ません」(検証ルポ 液状化の街・浦安住民から訴えられた三井不動産の「責任」より)
などという話もあり、住民側によった記事である事は差し引いて見ても、必ずしも完璧な対応であったとは言えないように思います。
しかし、分譲側にかなり大きな問題があったとしても、結果としては、住民側が敗訴してしまったと言うことは事実です。
おそらくは裁判中と思いますので、ここでは詳細は省きますが一条工務店でも「一条工務店欠陥住宅報道について:地盤は自分で調べるしかないのかも・・・」に書いたような問題がありました。
一つ言える事は、震災による地盤の被害は一度あってしまったら、正直住民が勝つことは非常に難しいということだけは間違いなく言える事だと思います。仮に勝ててもその道のりは険しいものとなります。
液状化はどこで起こるのか?海辺だけではない被害ポイント
浦安市の事例は東京湾の埋め立て地に立地しており、そこが埋め立て地である事は明らかでした。
そして、おそらくは東日本大震災が発生する以前の「常識」に従った一定程度の液状化対策は行われていたし、分譲から震災直前までの約30年間に大きな問題が起こることはありませんでした。しかし、結果として30年後の東日本大震災では大規模な液状化被害を受けてしまった、という流れになっています。
こう聞くと、やっぱり埋め立て地は怖いよね~、東京湾沿岸部は危険だよね~、ということで終わってしまうことが多いように思うのです。
しかし、液状化は東京湾沿岸部、さらには海辺の埋め立て地以外でも発生する事が分かっています。
そもそも、液状化が広く知られるようになった1964年の新潟地震で倒壊したアパート(私の小学生時代?の教科書に載っていたように記憶しています)は、沿岸部ではなく信濃川川岸の埋め立て地に立地していまいした。
旧河川跡地、水田跡、池跡などでも液状化の被害、さらには軟弱地盤による建物への被害増幅などの例が見られます。液状化ではありませんが、阪神淡路大震災でマンションに1m近い段差ができた場所に過去に河川がありその部分のみが地盤が沈下してマンションに大きな亀裂を生じさせたことも知られています。
液状化の被害、また液状化まではいかなくても軟弱地盤故の家屋の被害を防ぐためにはその土地の由来を知ることが重要です。
液状化被害、軟弱地盤の被害にあわないためには、過去に水分の多い土地であったかどうかを知ることが非常に重要です。
これから土地を買おうと思っている方で土地の購入を検討する際にまずは自分で確認することを強くお勧めします。
この土地、あなたなら購入しますか?
私が住む茨城県でも、東日本大震災で液状化による宅地被害が発生しました。
浦安に比べると規模が小さいため大々的な報道がされておらず、ご存じない方も多いかと思います。
先入観なく見ていただけると思うので、情報無しで自分ならばそこが危険な土地であると判断できたかを考えながらご覧いただきたいと思います。
潮来市日の出地区
茨城県潮来市(いたこし)日の出地区は霞ヶ浦南部に作られた住宅地になっています。
1968年に中規模ニュータウンとして位置づけられ分譲住宅が販売されています。
勤務先が東京だと通うのはキツイですが、成田空港や成田周辺であれば電車で30分程度の距離です。
さらには、ニュータウンとして整備されたため町の中心に小学校、中学校、幼稚園といった子どもを育てるための教育施設が配置されており、子育てをしやすい町という印象です。それでいて土地の値段は坪10万円もしない価格です。かなり広い土地を購入してゆとりある住宅を建てられるのではないでしょうか?
勤務地が近隣にあるとしたら、購入候補に挙がりそうな土地と思います。
おそらくは住まわれている方も多くは知っていたと思うこととして、潮来市日の出地区は明治期には比較的浅い湖があった場所で、戦前から干拓が計画され1950年に干拓が完成しており、そこにできた町になっています。
東日本大震災が起こるまで、大きな液状化被害などが報告されたことはありませんでした。
・・・しかし・・・
東日本大震災後の潮来市日の出地区の写真がこちらです。
http://www.gdm.iis.u-tokyo.ac.jp/kamisu_itako.pdf
東日本大震災では大規模な液状化による土地建物の破壊が発生しまいた。
この土地の過去の状況を見てみます。
上記の日の出地区の明治期の地図を見てみると
なんだか、湖があります。常陸国と書かれた部分は 周辺の湖とつながってしまっています。
これを現在の「日の出地区」の地図と比較してみます。
現在の日の出地区と形が全く同じなので、そこが干拓によって作られたことは明らかです。
上記の情報を知った上で、ここに土地を買うかはかなり悩むのではないかと思います。
追加的に書かせていただくと、現在この日の出地区は 液状化対策事業が実施されています。
とはいえ、やはり今後数十年住む土地として購入するのには躊躇せざるを得ないように思います。
つくば市森の里地区
先ほどの潮来市日の出地区は湖を埋め立てて作られたニュータウンでした。続いては私が住むつくば市内の地域でも類似した問題がありました。
つくば市南部に位置する森の里地区は、その周辺に小学校、中学校が隣接しています。1970年代から開発が進められ、多数の戸建て住宅が立地しています。
地図で見ると三角形の土地に
航空写真をあわせると、整然と住宅が配置されており、計画的に造成分譲された土地であることがよく分かります。
隣に谷田川という川が流れているので、少し気になるな~と思われる方もいらっしゃるかもしれません。。。。
この土地も東日本大震災では多数の液状化が発生しました。
潮来市に比べると液状化の度合いは低かったものの、半壊住宅やまた道路にマンホールが突き出ると言った被害が報告されています。
ちなみに、私が住んでいた地域では液状化は同じ程度の深度でしたが、瓦が落ちる棟の被害はあったものの上記写真のような亀裂等はほとんど見られませんでした。
で、この森の里地区がどのような由来の土地で会ったのかを見てみます。
先ほどと同じ明治の地図を見てみると。。。
え~っと、川です。
三角にくぼんだ場所が先の森の里になった場所です。
上記は1975年頃の写真になりますが。埋め立てが進められていたことが分かります。
もともと川があった場所にこれだけ大規模な住宅地が作られているのです。もちろん、この地域に住んでいる方はここがもともと川にあったことを知っている方が多いと思います。しかし、つくば市の調査報告書でも「過去に液状化の報告無し」とされており、むしろ近年の技術で埋め立てがされているのだから液状化はないだろうと思っていたのではないでしょうか?
過去の地盤情報を知る方法
過去の土地の来歴を確認することができれば、その土地が液状化しやすい土地かどうかの簡易な判断が出来そうなケースが多数あることが分かってきました。
でもどうやって調べれば良いのか?と思われるかも知れません。実は非常に簡単に調べられます。
先ほどから、明治の地図だとか、1970年代の航空写真などをお見せしていますが、上記の地図や写真は誰もが簡単に調べることができるのです。
今から10年前ならば、自分が購入を検討している土地の由来を知るということは非常に大変な作業でした。郷土資料館や図書館で古地図を探して、購入を検討している土地がどのような由来の土地であるのかを調べる必要がありました。
慣れない素人の私達がそのようなことをしようと思えば、おそらくは1カ所の土地を調べるだけで1日仕事になってしまっただろうと思います。
しかし、今はそのような調査が10分程度で簡単に行えてしまいます!
これから土地の購入を考えている方には是非知っておいて欲しいツールをご紹介します。
地理院地図:明治前期の低湿地
個人的にお勧めなのは国土地理院地図、明治前期の低湿地情報です。
「地震による液状化発生に関与する、過去の土地利用を再現、明治前期の低湿地データ」として国土地理院が、関東関西圏の過去の河川や水田、湿地を網羅する形で明治期の土地の携帯を地図化して公表しています。
http://maps.gsi.go.jp/?ls=meijiswale,1#8/34.838604/140.103149
Chromeだと動作しないことがあるようなのでインターネットエクスプローラー推奨です。
この地図では、関東と関西しかデータがないため使える方が限られてしまう点が難点ですが、この地図を見るだけでも自分が土地を選ぶ際には過去の土地の情報を自分自身できちんと考えることがいかに重要であるかが分かります。
水色の地点が過去は川や湖、黄色が低湿地といった表示になっています。
茨城県潮来市の情報を見てみると・・・
しっかりと水の中にある事が分かります。
色が何を意味するかはこちらにあるとおりです。
同様につくば市森の里を見てみると・・・
こちらもやはり見事に水の中です。
で、水の中にあったことは過去の地図で素人でも分かるのですが、この国土地理院地図が素晴らしいのは、素人では判別が難しい過去に水田として利用されていた地域や、川跡のような情報までが網羅されている点にあります。
下の地図をご覧下さい。
埼玉県川口市にある住宅地の地図ですが、この住宅地では明治期の低湿地や、川が流れていた場所が複雑に入り組んでいることが分かります。この地域で大規模な地震が起これば道路一本わたった先の家は何も被害がないのに、自分の家は半壊、等と言うことが起こりえると思います。そして、調べてみたら、自分の家は昔の川の上に、そして道路の向こう側は昔からしっかりとした土地だったという違いに驚くことになるかも知れません。
そして、これは未確認ではありますが、上記の土地、過去の河川、水田地域、そして元々のしっかりとした土地の地域で値段はほとんど変わらないのではないかと思います。
値段が安ければ河川であったことを踏まえて購入するのも良いかも知れません。でも、値段が同じならばあえて過去に河川であった場所の土地を購入する必要はないように思うのです。もちろん、その場所でなければならない事情があれば別です。
そして、上記のような河川や過去の水田地域は現在の住宅地に多数存在しているのです。これから土地を購入する方は一度確認することを強く、強くお勧めします。
活断層情報も閲覧可能
今回の液状化という趣旨とは少し離れるため簡単な紹介に留めますが国土地理院情報では活断層の状態なども閲覧可能です。
こちらは名古屋市東部の活断層に関する地図です。この地図も拡大縮小し自分が購入する土地周辺の活断層情報を知ることができます。
上記地図を表示するには、地図左上の
から「情報」→「表示できる情報」→「地図・空中写真」→「都市圏活断層図」を選択することで閲覧が可能になります。
見方はこちらに記載されています。
いずれブログでも書きたいと思っています!
より簡単にGoogle mapで国土地理院地図を見る
国土地理院地図は使いこなすともの凄い情報量なのですが、いかんせん使い勝手が悪いです。
この使い勝手の悪さを解決してくれるのが
です。地域によって情報があったりなかったりしますが、Google mapと同じ感覚で国土地理医院の地図を閲覧することができます。
このうち、過去のと問い情報として古い順に
「明治迅速」→「明治2万」→「明治大正(5万)」→「昭和前期(5万)」→「地図1920」→「地図1930」→「写真1975」→「写真1980」→「写真1985」→「写真1990」→「航空写真」
という順になっています。それぞれの地図毎に地図がある地域とない地域がありますが、一条工務店で家を建てる方の多い愛知県や名古屋地域ということであれば「明治2万」地図が最も古い地図になるかと思います。
上記の地図どこか分かりますか?鷹場村や那古野村なんていうのがあって、中央に線路が走っているのが分かると思います。
同じ縮尺の現在の地図は
となります。
正解は、名古屋駅周辺でした。地図記号で草が生えているような記号は「荒地」の記号です。要するになにもない場所だったと言うことです^^
明治2万以降については基本的に現在の地図記号と同じ記号が書かれています。
土地を見る上で注意すべきは「水田」、「水路」、「川」といった水が関係する場所と思います。
あとは以外と見落としてしまうのが「湿地」です。
逆に畑や森林であれば土地として昔からしっかりとした地盤を持っている可能性が高くなります。
さらに古い明治迅速地図になると地図記号ではなく漢字で書かれているのでむしろわかりやすいかも知れません。
上記だと「水田」という文字が読み取れるかと思います。
この他にも「松」のように松林があった場所などが確認できます。
まとめ
震災から4年が経ち、震災による被害も徐々に忘れられつつあります。
しかし、東日本大震災で経験したようにたった数十年、もっと言えば50年や100年、さらには1000年大丈夫だったからと言って、今後50年、100年大丈夫だという保証など全くないという現実を知らされました。
明治期以降、日本の工業化はめざましく、旧来は河川や湖、海であった場所を埋め立て干拓地として活用することが進められてきました。また、水田も減少し、水田だった場所に家が建つようになってきました。
そして1970年代の急速な経済発展期に伴い、土地の値段の高騰と多数のニュータウンの造成が進められました。
そのようなニュータウンの中には過去には湖、河川の干拓地だった場所や、水田として利用されていた土地も多数含まれています。それらの土地が直ちに危険であるとは言えませんが、過去に水田でなく松林であった土地に比べれば軟弱な地盤、液状化しやすい土地である可能性はかなり高い、ということだけは間違いありません。
これらの土地を買ってはいけないなどとも思っていません。しかし、知らず知らずのうちに購入して、地震が起きてはじめてそこが軟弱地盤だったことを知るというような事態だけは避けるべきと思っています。
以前であれば、過去の土地の履歴を調べることはなかなか労力のかかる作業でした。しかし、現在は住宅のスケールで、そこに川が流れていたのかどうかを10分もあれば簡単に調べることができてしまいます。
一生掛けて住宅ローンを返済していかなくてはいけない土地の購入では、慎重に慎重を期すべきと思います。土地を購入するかどうかは、学校の近さやスーパーマーケットの近さも重要ですが、その土地の安全性はやはり最も重要だと思います。
今回の情報が土地購入の際のお役に立てれば幸いです\(^o^)/